“インスタ映え”だけじゃない!外国人観光客の行動から見える「ニッポンの価値」
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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「テレ東プラス」は、日本人が知らない世界のニュースを忖度なしの切り口で紹介する大人気シリーズ「世界のニュースを日本人は何も知らない6 -超混沌時代の最先端と裏側-」(ワニブックス【PLUS】新書)著者・谷本真由美氏を取材。
2024年のインバウンド(訪日外国人旅行者)数は、前年比47.1%増の約3687万人と過去最高を記録。円安などを背景に1人当たりの旅行支出も伸び、こちらも過去最高の約8兆1395億円となったが(※日本政府観光局調べ)、果たしてその実態は?
※インタビュー前編はコチラ
【動画】“日本人の当たり前”商品、世界の国へ持って行くとどう評価される?
――インタビュー前編で谷本さんは、「昨今のインバウンド事情について、国内のニュースはあまり本質をとらえていない」と話していました。
「そうですね。どちらかというと日本そのものに興味がある、好きというよりは、ただ単に“なんでもクオリティーが高くて安い”という理由で訪日している外国人が多いのではないでしょうか。
遊びに行く国を選ぶ際、ヨーロッパでまず参考にするのが、お酒の価格。それに伴うのが、宿の料金やタバコ、外食する際の料金。今は世界各国のそうした価格を比較する表がインターネットやソーシャルメディアで出回っていますし、旅行代理店でも“この国のビール一杯の価格はこれくらい”と書かれているほどです。
今、日本中の宿泊費はもちろん、外食も娯楽も、すべて自国と比べたら半額~1/3くらいという激安ぶり。しかも日本では、チェーン店でも海外の高級店並みのサービスが受けられます。感染症の心配がないどころか、お腹も壊さない。交通費も安く、遅延も車両の故障もなく、治安もいい。
アメリカやヨーロッパから日本に来るための航空券は安くはありませんが、いろいろなものが安くてお得、しかも安全なので、みんな日本にやって来るようになっただけのことなんだと思います」
――谷本さんはイギリス在住。日本が注目されるまで、ヨーロッパの人が“安い”と思っていた国はどこなのでしょう。
「イギリスをはじめとするヨーロッパの庶民は、ルーマニアやブルガリア、チェコ、ハンガリー辺りを旅行していました。近くて物価が安く、ロシアほど危なくない。私もよく、ハンガリーの温泉に行っていました。その次に高い国がギリシャでしたが、それでも1週間滞在して航空券と送迎バス、朝食付きの宿も込みで3万円くらいでしょうか。
旅先には、“安いから”という理由で来ているイギリスやオランダ、ドイツの旅行者が大量にいて、多くの人たちが街中で泥酔していました(笑)。今、こういう人たちが日本に来ているのかなと思います」

――「世界のニュースを日本人は何も知らない6」第1章「インバウンドでやってきている外国人を日本人にたとえると」という項目では、こんな人々のリストが掲載されています。
・銀座でランニングに短パン…
・ノーブランドの意味不明なスニーカー
・買い物はドンキか100円ショップ
・回転ずし、サイゼリヤ、𠮷野家で大興奮
・Instagramに何でもアップする
・小学生向けアニメのグッズを買い漁る…
(※一部抜粋)。
――確かに言われてみると、心当たりがあるような…。
「これは偏見でも誇張でもなく、私が日本の街で観察した結果です(笑)。バブル期にアメリカやヨーロッパに団体で押し寄せてはブランド品を買い漁り、観光地で大騒ぎしていた日本人と似ていますよね。現地の人たちのひんしゅくを買っていた頃を思い出します」
――前作「世界のニュースを日本人は何も知らない5-なんでもありの時代に暴れまわる人々-」で、谷本さんは「外国人は分かりやすいものにしか興味がない」と。
「いろいろなものが安くてお得な日本にやって来る外国人は、浅草や富士山のように誰でも知っていて分かりやすいものが好きなんですよね。彼らにとって重要なのはSNS。みんな“インスタ映え”するスポットで撮影したいわけです。ほとんどの人は“浅草も富士山も行った。じゃあ次に映えるのはどこ?”という感じで観光しているのかなと思います」
――急激に増えた外国人観光客の対応に追われる地域は多いと思いますが、受け入れる側の心構えは?
「外国語表記のメニューをたくさん準備するなど、そういう過剰なサービスはやらなくていいのかなと思います。一方、やってはいけないことなど、日本の常識を伝える注意書きは必要です。Japanに来るなら、まずは自分で調べるべき。今はスマートフォンがあれば、すぐに翻訳ができますからね。
日本は海外に比べるととにかく安全な国。普通に行動していれば、ぼったくりもほとんどないと言っていいでしょう。彼らは日本の環境が素晴らしいだけで十分ありがたいと思っているはずです」
――外国人旅行者1人当たりの支出は8兆円超と過去最高の伸びを記録しており、今後も上手に付き合っていかなければなりません。
「日本には素晴らしい自然や文化がたくさんありますが、奥ゆかしい性格のためか、商品やサービスを宣伝するのが下手で、値付けもあまりうまくないと思うんですよね。
ですから、決して安売りをしない。需要が高いものはそれなりの値段でどんどん売りまくればいいんです。日本に来たことを自慢したい人たちに安売りしないことは結果的に喜ばれますし、ひいては日本の国土を守ることにもなります」
――日本の良い部分を残しつつ“世界の基準”を知ることが大事だということは分かりましたが、今後、外国人観光客を受け入れる上で注意すべき点はありますか?
「私は今、IT業界で内部統制や品質管理をやっていますが、まさにそういうことが大事だと思います。つまりはインバウンドに対するフレームワーク…仕組みを整えること。誰が何をやってどう評価し、その際のルールをどうするか。すべて細かく文書化して、それを皆さんに実行していただく必要がある。
例えば、お客さんからクレームがきた場合にどう対応するか。このルールを作り、体系化することが大事です。“通信する場合、文書(メール)以外は認めません。フォーマットはこうです”と、細かく決めておかないといけない。もしも訴訟になった時、言った言わないの水掛け論になるので、すべて文書で残すことが重要です。
こうしたフレームワークの設計は、今すぐにでも取り掛かっていただきたい。早くしないと、何か大きな問題が起きた時、取り返しのつかない事態になりそうです」
――6月10日(火)には、第1弾~5弾の内容をセレクトした「世界のニュースを日本人は何も知らない BEST版」(ワニブックス【PLUS】新書)が発売されます。
最後に次回作で書きたいこと、伝えたいことがあれば教えてください。
「アメリカをはじめ、中国、ロシアの状況も不安定ですが、中でもアメリカを取り巻く状況が大きく変わりつつあります。第6弾の第6章で書いた“欧州における保守系と極右の台頭”も、それは間違いだったと、ヨーロッパがリベラル(自由主義)路線に戻る気配がある。
中国も日本で報道されている以上に厳しい経済状況にあります。就職できない新卒が約6割もいるし、若年層の失業率もひどいです。不動産バブルは崩壊しているし、海外企業もどんどん撤退している。こうした日本のニュースではあまり伝えられないことをフォローアップしながら、世界各国の普段の生活を知ることができるニュースも紹介していきたいです」
(取材・文/橋本達典)
▲「世界のニュースを日本人は何も知らない6 -超混沌時代の最前線と裏側-」(ワニブックス【PLUS】新書)
【谷本真由美 プロフィール】
著述家。元国連職員。1975年、神奈川県生まれ。
シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。
ITベンチャー、コンサルティングファーム、 国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。
X上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。
趣味はハードロック/ヘビーメタル鑑賞、漫画、料理。
著書に『キャリアポルノは人生の無駄だ』(朝日新聞出版)、『日本人の働き方の9割がヤバい件について』PHP研究所)、『不寛容社会』(ワニブックスPLUS新書)、『激安ニッポン』(マガジンハウス新書)など多数。
6月10日(火)には、『世界のニュースを日本人は何も知らない BEST版』(ワニブックス【PLUS】新書)が発売される。
2024年のインバウンド(訪日外国人旅行者)数は、前年比47.1%増の約3687万人と過去最高を記録。円安などを背景に1人当たりの旅行支出も伸び、こちらも過去最高の約8兆1395億円となったが(※日本政府観光局調べ)、果たしてその実態は?
※インタビュー前編はコチラ
【動画】“日本人の当たり前”商品、世界の国へ持って行くとどう評価される?
旅先を選ぶ際、ヨーロッパで参考にするのはお酒の価格
――インタビュー前編で谷本さんは、「昨今のインバウンド事情について、国内のニュースはあまり本質をとらえていない」と話していました。
「そうですね。どちらかというと日本そのものに興味がある、好きというよりは、ただ単に“なんでもクオリティーが高くて安い”という理由で訪日している外国人が多いのではないでしょうか。
遊びに行く国を選ぶ際、ヨーロッパでまず参考にするのが、お酒の価格。それに伴うのが、宿の料金やタバコ、外食する際の料金。今は世界各国のそうした価格を比較する表がインターネットやソーシャルメディアで出回っていますし、旅行代理店でも“この国のビール一杯の価格はこれくらい”と書かれているほどです。
今、日本中の宿泊費はもちろん、外食も娯楽も、すべて自国と比べたら半額~1/3くらいという激安ぶり。しかも日本では、チェーン店でも海外の高級店並みのサービスが受けられます。感染症の心配がないどころか、お腹も壊さない。交通費も安く、遅延も車両の故障もなく、治安もいい。
アメリカやヨーロッパから日本に来るための航空券は安くはありませんが、いろいろなものが安くてお得、しかも安全なので、みんな日本にやって来るようになっただけのことなんだと思います」
――谷本さんはイギリス在住。日本が注目されるまで、ヨーロッパの人が“安い”と思っていた国はどこなのでしょう。
「イギリスをはじめとするヨーロッパの庶民は、ルーマニアやブルガリア、チェコ、ハンガリー辺りを旅行していました。近くて物価が安く、ロシアほど危なくない。私もよく、ハンガリーの温泉に行っていました。その次に高い国がギリシャでしたが、それでも1週間滞在して航空券と送迎バス、朝食付きの宿も込みで3万円くらいでしょうか。
旅先には、“安いから”という理由で来ているイギリスやオランダ、ドイツの旅行者が大量にいて、多くの人たちが街中で泥酔していました(笑)。今、こういう人たちが日本に来ているのかなと思います」

――「世界のニュースを日本人は何も知らない6」第1章「インバウンドでやってきている外国人を日本人にたとえると」という項目では、こんな人々のリストが掲載されています。
・銀座でランニングに短パン…
・ノーブランドの意味不明なスニーカー
・買い物はドンキか100円ショップ
・回転ずし、サイゼリヤ、𠮷野家で大興奮
・Instagramに何でもアップする
・小学生向けアニメのグッズを買い漁る…
(※一部抜粋)。
――確かに言われてみると、心当たりがあるような…。
「これは偏見でも誇張でもなく、私が日本の街で観察した結果です(笑)。バブル期にアメリカやヨーロッパに団体で押し寄せてはブランド品を買い漁り、観光地で大騒ぎしていた日本人と似ていますよね。現地の人たちのひんしゅくを買っていた頃を思い出します」
――前作「世界のニュースを日本人は何も知らない5-なんでもありの時代に暴れまわる人々-」で、谷本さんは「外国人は分かりやすいものにしか興味がない」と。
「いろいろなものが安くてお得な日本にやって来る外国人は、浅草や富士山のように誰でも知っていて分かりやすいものが好きなんですよね。彼らにとって重要なのはSNS。みんな“インスタ映え”するスポットで撮影したいわけです。ほとんどの人は“浅草も富士山も行った。じゃあ次に映えるのはどこ?”という感じで観光しているのかなと思います」
日本の環境が素晴らしいだけで、十分「ありがたい」と思っている
――急激に増えた外国人観光客の対応に追われる地域は多いと思いますが、受け入れる側の心構えは?
「外国語表記のメニューをたくさん準備するなど、そういう過剰なサービスはやらなくていいのかなと思います。一方、やってはいけないことなど、日本の常識を伝える注意書きは必要です。Japanに来るなら、まずは自分で調べるべき。今はスマートフォンがあれば、すぐに翻訳ができますからね。
日本は海外に比べるととにかく安全な国。普通に行動していれば、ぼったくりもほとんどないと言っていいでしょう。彼らは日本の環境が素晴らしいだけで十分ありがたいと思っているはずです」
――外国人旅行者1人当たりの支出は8兆円超と過去最高の伸びを記録しており、今後も上手に付き合っていかなければなりません。
「日本には素晴らしい自然や文化がたくさんありますが、奥ゆかしい性格のためか、商品やサービスを宣伝するのが下手で、値付けもあまりうまくないと思うんですよね。
ですから、決して安売りをしない。需要が高いものはそれなりの値段でどんどん売りまくればいいんです。日本に来たことを自慢したい人たちに安売りしないことは結果的に喜ばれますし、ひいては日本の国土を守ることにもなります」
――日本の良い部分を残しつつ“世界の基準”を知ることが大事だということは分かりましたが、今後、外国人観光客を受け入れる上で注意すべき点はありますか?
「私は今、IT業界で内部統制や品質管理をやっていますが、まさにそういうことが大事だと思います。つまりはインバウンドに対するフレームワーク…仕組みを整えること。誰が何をやってどう評価し、その際のルールをどうするか。すべて細かく文書化して、それを皆さんに実行していただく必要がある。
例えば、お客さんからクレームがきた場合にどう対応するか。このルールを作り、体系化することが大事です。“通信する場合、文書(メール)以外は認めません。フォーマットはこうです”と、細かく決めておかないといけない。もしも訴訟になった時、言った言わないの水掛け論になるので、すべて文書で残すことが重要です。
こうしたフレームワークの設計は、今すぐにでも取り掛かっていただきたい。早くしないと、何か大きな問題が起きた時、取り返しのつかない事態になりそうです」
――6月10日(火)には、第1弾~5弾の内容をセレクトした「世界のニュースを日本人は何も知らない BEST版」(ワニブックス【PLUS】新書)が発売されます。
最後に次回作で書きたいこと、伝えたいことがあれば教えてください。
「アメリカをはじめ、中国、ロシアの状況も不安定ですが、中でもアメリカを取り巻く状況が大きく変わりつつあります。第6弾の第6章で書いた“欧州における保守系と極右の台頭”も、それは間違いだったと、ヨーロッパがリベラル(自由主義)路線に戻る気配がある。
中国も日本で報道されている以上に厳しい経済状況にあります。就職できない新卒が約6割もいるし、若年層の失業率もひどいです。不動産バブルは崩壊しているし、海外企業もどんどん撤退している。こうした日本のニュースではあまり伝えられないことをフォローアップしながら、世界各国の普段の生活を知ることができるニュースも紹介していきたいです」
(取材・文/橋本達典)

【谷本真由美 プロフィール】
著述家。元国連職員。1975年、神奈川県生まれ。
シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。
ITベンチャー、コンサルティングファーム、 国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。
X上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。
趣味はハードロック/ヘビーメタル鑑賞、漫画、料理。
著書に『キャリアポルノは人生の無駄だ』(朝日新聞出版)、『日本人の働き方の9割がヤバい件について』PHP研究所)、『不寛容社会』(ワニブックスPLUS新書)、『激安ニッポン』(マガジンハウス新書)など多数。
6月10日(火)には、『世界のニュースを日本人は何も知らない BEST版』(ワニブックス【PLUS】新書)が発売される。
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