新鋭・宇和川輝監督が国境を越えて紡ぐ現代の叙事詩「ユリシーズ」
先鋭的な育成プログラムで世界から注目されるサン・セバスチャン(スペイン)のエリアス・ケレヘタ映画学校で学んだ新鋭・宇和川輝監督が、長編デビュー作として、自身の個人史とホメロス『オデュッセイア』の大胆な翻案を掛け合わせて創作した「ユリシーズ」が、7月19日(土)よりポレポレ東中野、8月よりシネ・ヌーヴォで公開される。ポスタービジュアルと識者のコメントが到着した。
映画は3つの土地で撮影した3部で構成。第1部では、マドリードに暮らすロシア人のアレフティーナと息子のディミトリが大切な人の帰りを待つ。第2部では、サン・セバスチャン在住のエナイツが日本人のイズミと出会う。第3部では、岡山県真庭市でお盆にカズコが孫のヒカルと共に夫の霊を迎える。さまざまな場所の親密な時間を繋ぎ止めた、追憶と放浪の物語となる。
ポスタービジュアルは、スペインのアニメーション作家ラウラ・イバニェスが描き下ろしたイラストを素材に、装丁家の二宮大輔がデザインしたもの。
マルセイユ国際映画祭、サン・セバスチャン国際映画祭、東京フィルメックス、全州国際映画祭などで称賛された、型破りの映画世界に注目したい。
〈コメント〉
ひとは人生の岐路にたつとき、どんな選択をするのだろう。
わたしたちの生は、刻一刻、死に近づいている。
生きている瞬間を想う。死者を想う。
だから「今を楽しめ」。
とめどなくあふれでてくる生の瞬間、瞬間が、わたしたちの手から零れおちそうになる。そのかけがえのない生を、大切な誰かが生きた証を、失われつつある風景とともに丁寧に保存したい。
──『ユリシーズ』はそんな衝動に突き動かされている。静謐さのなかに生活音が響くとき、それらは普遍とむすびつく。
五感を研ぎ澄ませて見てほしい。
──小川公代(英文学者)
異国での生活によって生まれた「移動」と「ズレ」こそが、宇和川輝の映画の原動力だ。
多言語的で文学的な遊び心(…)最小限の物語を洗練された構図で描き出している。
──ルイーズ・マルタン・パパジアン(マルセイユ国際映画祭プログラマー)
幽霊たちが代わるがわる我々の視界をすり抜けていく『ユリシーズ』は、「現在」について、若者たちについて、彼らに課された「旅の義務」について、そして旅の喜びについて物語る。強いられた現代のオデュッセウスたち。彼らこそが、神話の最後の具現者なのだ。
──Caimán cuadernos de cine(スペインの映画誌)
「ユリシーズ」
出演:アレフティーナ・ティクホノーヴァ、ディミトリ・ティクホノーヴ、エナイツ・スライカ、石井泉、原和子、宇和川輝
監督・編集:宇和川輝
制作:宇和川輝、関野佳介
撮影:宇和川輝、エイヴリー・ドゥンカン、関野佳介
整音:黄永昌
配給:新谷和輝、入江渚月
製作・配給:ikoi films
宣伝協力:プンクテ
宣伝ビジュアル:ラウラ・イバニェス
宣伝デザイン:二宮大輔
製作協力:Elías Querejeta Zine Eskola
企画助成:Ikusmira Berriak
日本、スペイン/2024/日本語、スペイン語、バスク語、ロシア語、英語/73分
©ikoi films 2024
記事提供元:キネマ旬報WEB
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