日本の定番アイスを訪日外国人が口をそろえて大絶賛! 「チョコモナカジャンボ」が最強のインバウンドフードになったワケ
東京・浅草の浅草寺とチョコモナカジャンボ
桜の4月。日本各地が訪日外国人客でにぎわいを見せる中、彼らの間で"コンビニで買える激ウマアイス"として人気沸騰中の商品がある。日本人も大好き「チョコモナカジャンボ」だ! いったいなぜ外国人の間でウケている? その理由を探った!
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■海外の有名選手がSNSに次々投稿「人類史上最高の発明だ」
今年2月、アラブ首長国連邦出身で、格闘ゲーム『ストリートファイター6』の強豪選手であるBig Bird氏が、自身のXで、チョコモナカジャンボをこう絶賛。翌月に両国国技館で開催された同ゲームの世界大会「CAPCOM CUP 11」に出場した際にも、このアイスを堪能する姿を披露した。
彼に触発され、大会期間中はほかの海外選手もチョコモナカジャンボを手にする様子をSNSに次々と投稿。海外プロゲーマーの間で、〝チョコモナカジャンボブーム〟が巻き起こったのだ。
『ストリートファイター6』で世界屈指の実力を持つプロゲーマー、Big Bird氏(右)がXに投稿したチョコモナカジャンボを食べる写真
また、この3月にはMLBの東京シリーズのため来日したロサンゼルス・ドジャースの選手もチョコモナカジャンボの写真をSNSに投稿。捕手のハンター・フェドシア氏が自身のインスタグラムで、「いっぱい食べたよ」と紹介した。
なぜ、彼らはチョコモナカジャンボに惹かれたのか。Big Bird氏に聞くと、所属チーム「REJECT」を通じて次のように回答してくれた。
「初めて食べたのは2019年に来日したとき。友人に勧められて食べてみたら、すぐ気に入ったよ。ウエハース(モナカの皮)と、中に入っているチョコレートやバニラクリーム、そのすべてがすごくおいしくて! 日本以外の国に、こんなアイスはないよ。だから、来日するたび、コンビニで真っ先に買っているんだ」
訪日外国人からの反響を受け、近年、製造元の森永製菓はインバウンド需要向けのPRを強化。3月29、30日には東京・浅草の浅草寺で計2万5000個の無料サンプルの配布を実施した。観光で訪れた外国人を中心に多くの人が詰めかけ、両日とも2時間ほどで終了する大盛況となった。
浅草寺での無料サンプリング配布の様子。この日は曇りで気温は低かったが、外国人客たちは、気にせずチョコモナカジャンボを楽しんでいた
そもそも、いつ頃からチョコモナカジャンボは訪日外国人の人気を集めているのか。森永製菓マーケティング部の中村 望氏がこう語る。
「海外の方からの人気を初めて認識したのは、東京オリンピック(21年)のために来日された海外の記者の方が絶賛してくださったときでした。そのSNS投稿が話題となり、海外でも日本の人気商品として紹介されるようになったんです。
それまでインバウンド需要には目を向けてこなかったのですが、大きな話題になったことで、私たちとしても、『もしかしたら海外の方にも受け入れてもらえるのかも』と考えるようになりました」
チョコモナカジャンボには50年を超える歴史がある。1972年に「チョコモナカ」として発売を開始すると、幾度もの改良を繰り返して、96年から現在の名称になった。
「今までで最も大きかった改良は、00年代の初頭に〝鮮度〟に対する取り組みを始めたことです。当時のチョコモナカジャンボは時間の経過によってアイスの水分がモナカに移行してしまい、工場出荷時と店頭で品質に違いが出てしまうことが課題でした。
基本的にアイスは賞味期限がないため、大量生産して倉庫に保管します。しかし、それではモナカが湿気てしまい、最大の個性である〝パリパリとした食感〟が失われてしまう。
そこで生産計画の柔軟な対応など、鮮度優先で各工程を見直し、〝工場での製造から出荷まで5日以内が目標〟というアイス業界でも異例のルールを設定しました。
同時に天気予報を参考に販売計画を立案する取り組みも開始しました。17年からは日本気象協会さんと連携し、精密な天候予測に合わせた出荷量調節を行なっています」
23年にもチョコモナカジャンボには変革があった。
「モナカの鮮度を保つため、新たに『チョコの壁』を導入しました。アイスの両側面をチョコでコーティングして、上下のモナカが合わさるわずかな隙間部分からの吸湿を防ぐ新技術です。こうすることでモナカのパリパリ食感を、より長持ちさせることができるようになりました」
約5年に及ぶ大規模な技術開発と設備投資により実現した「チョコの壁」は評判となった。「この機会にあらためてチョコモナカジャンボを食べてみたという方も非常に多かった」と中村氏は話す。
こうした定期的なバージョンアップにより、チョコモナカジャンボの売り上げは約20年間で5倍に増加。今では年間で約2億個を出荷する大ヒット商品となっている。ただ、この徹底した鮮度へのこだわりのため、チョコモナカジャンボは海外生産や海外輸送が困難な商品となった。
「単に同じ設備で生産すれば再現できるわけではなく、工場では毎日モナカの水分量を計測しながら微妙な調整を施しています。それは輸送に関しても同様で、出荷量の調整から店頭の品質確認に至るまで厳しいチェック体制を敷いています。同じ環境を海外にも用意することは非常に困難だと言えるでしょう。
つまり、チョコモナカジャンボは大量生産品ではありますが、実態としては完全受注生産に近い商品であり、日本の職人技に支えられている、和菓子のような〝ジャパンクオリティ〟の結晶なのです」
だからこそ、森永製菓では「日本でしか食べられないアイス」である点を強調することで、チョコモナカジャンボがすしやラーメンのような「日本に来たら食べたくなるインバウンドフード」になることを目指している。
「訪日外国人向けのPRとしては無料サンプリングのほかにも、24年3月から国際線旅客機の機内モニターや成田空港の到着ロビーなどで商品を紹介する動画を放映しています。まずはひとりでも多くの訪日外国人の方に手に取っていただくことが目標ですね」
日本の技術力の粋を集め、訪日外国人からも大人気となったチョコモナカジャンボ。すしやラーメンと並ぶ日本食の代表になる日も近い!?
取材・文・撮影/小山田裕哉
記事提供元:週プレNEWS
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