レジェンドよ、さらば 67歳のベルンハルト・ランガーがマスターズ卒業「特別な2日間だった」
<マスターズ 2日目◇11日◇オーガスタ・ナショナルGC(米ジョージア州)◇7555ヤード・パー72>
3メートルのパーパットが外れると、パトロン(ギャラリー)から大きなため息がもれた。それと同時に、惜しみない拍手も送られた。今年を最後に「マスターズ」からの引退を発表していたベルンハルト・ランガー(ドイツ)。大会2勝を挙げたレジェンドは、トータル3オーバーの54位タイでフィニッシュし、50位タイまでのカットラインには1打届かなかった。ラストマスターズは、悲しくも2日間で幕を閉じた。
パトロンは終始、声援を送り続けた。ランガーは初日のティオフからスタンディングオベーションで迎えられ、その拍手は36ホールにわたって続いた。「この2日間はとても特別。フェアウェイを歩いていると、いろんな感情が頭の中を駆け巡った」。キャディを快諾した息子をはじめ、妻、3人の子ども、そして2人の孫も応援に駆けつけた。「世界中の友人たちが一緒に数ホールを歩いてくれて、本当に意味のある時間だった」と振り返った。
初日は1バーディ・3ボギーの「74」で回り51位発進。予選通過を目指した2日目は、14番を終えて3バーディ・1ボギーと伸ばしていた。
しかし、15番パー5の3打目がスピンで戻り、池につかまる不運に見舞われる。ボールが消えるのを見ると、首を横に振り、そしてうつむいた。このホールを5オン2パットのダブルボギーとして、カットライン上に後退した。
パーで終えれば予選通過の最終18番。3番ユーティリティでの2打目はグリーン左に外れ、9番アイアンでのランニングアプローチは、狙いより1メートルショートした。「複雑な気持ちだったよ」と語り、最後はボギーでフィニッシュ。それでも、ランガーの表情は清々しかった。
「15番はグリーンの真ん中にウェッジを打ったけれど、池の中に入ってしまった。完璧なショットだった。ゴルフはそういうもの。最高のゲームになることもあれば、残酷なこともある。とても微妙なラインなんだ。(もしあの時に戻っても)まったく同じことをする。思い通りの場所に着地したし、ボールがあんなにスピンするなんて信じられなかった」
昨年フレッド・カプルス(米国)が記録した63歳186日という、最年長予選通過記録の更新が目前であった67歳。「わたしは戦う人。リーダーボードの上に立ちたいし、勝つチャンスが欲しい。このコースではもう勝てる気がしない」。決断が正しかったのか、あるいはもう数年待つべきだったのか…。この数日間考えていたというが、「やはり正しい決断だったと思う。私にはコースが長すぎる」。ランガーが求めるものは、ただ予選を通過することではなく、上位で戦うことなのだ。
この週末は、フェアウェイを歩くことはできないが、オーガスタで過ごす予定だ。「ここには家族がいる。退屈はしないよ。いずれにしてもいい週末になりそうだ」。マスターズの余韻に浸りながら、主戦場にする米シニアツアー(PGAチャンピオンズ)に戻る。
一方、カプルスもこの日「77」とスコアを崩し、自身が持つ最年長予選通過記録の更新はならなかった。15番ではドライバーショットがライナー気味に左の林へ突っ込み、「この20年間で最悪のショット」と振り返る。それでも、「来年もプレーするよ。(関係者が)戻ってきてほしいって、はっきり言ってくれたんだ。マスターズは史上最高のトーナメントだから」と1992年の覇者はリベンジを誓う。挑戦は、まだまだ続いていく。(文・笠井あかり)
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