山崎貴×樋口真嗣 「スター・ウォーズ」ファンなら絶対持っておいて欲しい1冊!スペシャル対談リポート
「ゴジラ-1.0」で第96回アカデミー賞視覚効果賞を受賞し、現在「ゴジラ」最新作を製作準備中の山崎貴監督。そして、4月23日よりNetflixで配信される『新幹線大爆破』の樋口真嗣監督。今、最も注目を集めるふたりの監督が、10代のときに映画館で見て衝撃を受けた作品が「スター・ウォーズ」だった。
その誕生秘話を描いたコミック(バンド・デシネ)『ルーカス・ウォーズ』について熱く語った番組「俺たちのスター・ウォーズ」がキネマ旬報WEBチャンネルにてYouTube配信中。おふたりが本番組で何を語ったのか。番組収録の模様をリポートする。
実は反「スター・ウォーズ」派だった!?
山崎監督は1964年生まれ、樋口監督は1965年生まれ。ほぼ同年代のふたりにとって1978年に日本公開された「スター・ウォーズ」は、リアルタイムに観て大いに盛り上がった世代でもある。特に山崎監督は「スター・ウォーズ」が映画界を目指すきっかけとなった作品として知られるが、樋口監督は中学生だった当時から、同時期に公開された日本映画「惑星大戦争」「宇宙からのメッセージ」の方が素晴らしかったと声高に主張。先日、ある番組でもその良さを猛アピールしてきたと言う。
冒頭から反「スター・ウォーズ」派の急先鋒と宣言するかのような樋口監督のカミングアウト。今回の対談相手に樋口監督を推薦した山崎監督が「人選間違えた?」と問うと、「いや、そうは言いながらも実は『スター・ウォーズ』派(笑)」と素直にファンであることを認め、本番組でそれを証明したいとまずは抱負を語った。実際、そのオタクぶり、愛情の深さはふたりとも半端なく、序盤からそれぞれが知る「スター・ウォーズ」伝説や、ルーカス同様に自身も体験してきた制作現場の“あるある”話に花が咲いた。
革新を起こした「スター・ウォーズ」伝説の職人たち特撮の道を志し、映画界に進んだふたりにとっての一番の関心ごとはやはりVFXシーン。ジョージ・ルーカスの壮大な構想が徐々に形となっていく過程が詳細に描かれた『ルーカス・ウォーズ』にはともに興奮したと口を揃える。
そんなふたりを驚かせたのは、ルーカスがイラストレーターのライフ・マクォーリーにデザイン・コンセプトを説明するシーン。宇宙船とデススターのラフは完成形に近く、その天才ぶりを称賛する。さらに、コンピューターによるモーション・コントロールカメラ・システムで有名なジョン・ダイクストラ、ストリートボード作成から模型制作までと何でもこなしたジョー・ジョンストン、ライトセーバーの音などを発明したベン・バートンらが同じ時代・世界に存在していたこと自体が凄いと、彼らの仕事ぶりをこれでもかと詳細に紹介、その後の彼らが携わった作品の話にも熱が入った。
一方で、ルーカスがロンドンでの撮影に悪戦苦闘していた3カ月間、たった2カットしか作っていなかった当時のILMの仲間たちのダメっぷりもご愛敬と紹介(山崎監督も似た経験ありと告白)。だがこの2カットは初めてできた「スター・ウォーズ」のVFXシーンとして語り草に。その後、ILMは撮影前に仮のCG映像を作成してイメージを共有するプリビズ(Pre-visualization)という手法を生み出すなど、VFX先駆者として多大な貢献してきたことも併せて紹介する。
名曲を生んだジョン・ウィリアムズ体験
全く理解を示さないスタジオ上層部、スタッフやキャストとの軋轢など、苦難の連続だった「スター・ウォーズ」完成までの道のり。最後の最後に残されていた制作のパートが音楽だった。
『ルーカス・ウォーズ』の中でも、作曲家ジョン・ウィリアムズと出会い、曲が出来上がった時のエピソードはふたりの監督にとっても印象深いと言う。本書に“「スター・ウォーズ」の制作中にはめったになかった幸せな時間”とあったのが何とも切ない。ちなみに山崎監督にとっての音楽パート収録は、“収穫祭”のような幸せな時間。対して樋口監督は「まだ何かできるんじゃないか」とさらなる期待をして口を挟みたくなるのであまり立ち会いたくはない、と語る。監督の志向の違いが明確に分かれているのが興味深い。
そんなふたりが敬愛するジョン・ウィリアムズが2023年に来日。山崎監督はジョンが指揮するコンサートに行った時の鳥肌体験を語り、樋口監督を大いに羨ましがらせた。
最後の逆転劇 胸のすく瞬間
「困難のすべてが大逆転のスパイス」と山崎監督は帯にも書かれていたが、『ルーカス・ウォーズ』最大の醍醐味は、あらゆる困難からの大逆転劇。完成してもなおスタジオ上層部に見せた試写会では酷評されるが、公開されるや否や歴史的大ヒットに。60年代から「ミクロの決死圏」「猿の惑星」などSF大作を輩出してきた20世紀フォックスでさえ、「スター・ウォーズ」には最初から最後まで懐疑的だったことが意外だったと、ふたりの監督は語る。
そんな知られざる事実の発見もあり、わずか1時間余りの尺では語りつくせなかった「スター・ウォーズ」の舞台裏とその魅力。特撮出身のふたりらしく、今なお発売中の模型にも話が及んだ。
また、「ゴッドファーザー」の舞台裏を描いた映画「ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録」、ディズニープラスで配信中のILMのドキュメンタリー『ライト&マジック』なども紹介しながら、この本をぜひとも映画にして欲しいと熱望する。さらに“「スター・ウォーズ」ファンなら絶対に持っておきたい本”と激押しの『ルーカス・ウォーズ』にサインをいただき販売。番組内に寄せられたコメントも多く、5冊のサイン本は瞬殺で完売した。
『ルーカス・ウォーズ』は現在、Amazon、KINEJUN ONLINE SHOPにて販売中(電子書籍もあり)。また、いよいよ開催が迫る究極のファンイベント『スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン』(4月18日~20日)の会場内でHMVによって販売される。ここでは購入特典として本書のイラストを使ったアクリルスタンドキーホルダーが限定で付いてくるという。本を読んだ後、本番組のアーカイブを見ると、改めて「スター・ウォーズ」の魅力と制作過程の“すさまじさ”を楽しめること請け合いだ。
文=岡﨑優子 制作=キネマ旬報社
『ルーカス・ウォーズ』
ロラン・オプマン 作、ルノー・ロッシュ 画
原正人 翻訳、河原一久 監修
A4判/ 208頁/書籍
キネマ旬報社刊 4620円(税込)
電子版:2500円(税込)
© Éditions Deman 2023
記事提供元:キネマ旬報WEB
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