ソニー『メモリースティック』はもう不要? SDカードのように普及しなかった理由とは
一時はソニー製デジタルカメラやゲーム機向け記録媒体として市場で存在感があったソニー『メモリースティック』。しかし近年では、ソニー製品を愛用している方でも『メモリースティック』の利用機会が極めて減っているのもまた事実ではないでしょうか。

2025年現在ではデジタルカメラなどの記録媒体はSDカードが主流となり、メモリースティックは事実上の「過去の規格」と見なされています。
今回はメモリースティックがSDカードのように普及しなかった理由と、2025年現在メモリースティックは「不要なのか」を見ていきましょう。結論から言えば、レトロなデジタルカメラのブームやレトロゲーム機の人気再燃に伴ってメモリースティックにも、2025年現在一定の活躍の場があると言えます。
【1】企業戦略の違い
まずは「メモリースティックがSDカードのように普及しなかった理由」から見ていきましょう。その最大の要因には、オープン性を重視したSDカード陣営との企業戦略の違いが挙げられます。

改めて、メモリースティックがSDカードに敗れた主な理由の一つは、企業戦略の違いにあります。SDカードは東芝、SanDisk、松下電器産業(現Panasonic)の3社によって共同開発されたもので、開発当初から複数の企業が関わっていました。さらに『SDアソシエーション』という組織を通じて、仕様などの情報公開が行われ、メモリーカード規格の統一化が行われました。これにより、多くの企業がSDカード規格を採用しやすい環境が整っていました。
一方、メモリースティックは汎用的なメモリーカード製品ながら、実質的に「ソニー単独の規格」に近しい存在でした。メモリースティック対応製品は他社からも登場したものの、対応製品はSDカード対応製品に比べると遥かに少なかったと言えます。
そのため「ソニー製品向けのメモリーカード」=『メモリースティック』という印象をお持ちの方は、この記事をお読みの方の中にも多いでしょう。同製品はSDアソシエーションによる規格統一を推進するSDカードに比べると閉鎖的な戦略を採っていたとも言え、市場シェアの拡大を妨げる要因となりました。
ソニーは自社製品にメモリースティックを採用することで『独自規格を中心としたエコシステム』を構築しようとしたものの、その広がりは限定的で、最終的にはソニーもSDカードを採用するにいたっています。
【2】互換性及び容量と転送速度の問題
SDカードは『メモリースティック』と比べると、登場初期から長期に渡って強い後方互換性を保っている記録媒体でもあります。具体的に言うと、近年登場している大容量規格を除けば、古い機器でも利用できる場面が十分に多いです。

もっともSDカードは最大2TBの大容量規格「SDXC」の登場によって、古い機器では非対応となる場面もしばしば見られるようになりました。とはいえ以前から使われているSDカードやマイクロSDカード(最大2ギガ)は古い機器でもそのまま使用でき、同様に古いSDカードを現行機器で使用できる場面は非常に多いです。同様に対応製品数も多く、メーカーを問わずに使える場面が多いです。
ユーザーにとっては非常に使いやすいメディアであることは確かでしょう。

そんな中、メモリースティックは登場当初、規格上の制限で128MBまでしか製品化できず、最大速度も20Mbpsと、速度の遅さが目立つ製品になってしまいました。
この問題点に対処するために、2003年に最大記録容量32GB、最大転送速度160Mbpsの「メモリースティック PRO」が登場しました。しかしそれでも最大インターフェース速度の遅さなどの欠点は完全には解消できず、SDカードに対してメモリースティックは総じて「記録媒体としての短所が悪目立ちしやすいメディアだった」と言えるでしょう。
【3】価格と入手性
SDカードは多くのメーカーが製造しているため競争が活発で、価格が比較的安く抑えられています。また、さまざまな容量のものが広く流通しており、入手しやすい状況です。これに対して、メモリースティックは製造業者が限られており、価格が高くなりがちでした。

そのため、一部のユーザーはPSPを改造してSDカードが使用できるようにすることもありました。これは、メモリースティックよりもSDカードの方が安価で入手しやすかったためです。
『メモリースティック』はもう不要?
一般ユーザーにとっては、SDカードの方が互換性が高く、価格も手頃で入手しやすいため、特別な理由がない限りメモリースティックを選ぶ理由はほとんどないと言えるでしょう。
かつてソニー製品ではメモリースティックが必須でしたが、現在ではソニー自身もSDカードを採用する流れになっているのも事実です。
とはいえ古いソニー製品を使用している場合には、まだメモリースティックが必要となる場合もあります。
たとえばメモリースティックはソニー製デジタルカメラやPSPなどの記録媒体として普及したため、昨今注目が集まる「古いデジタルカメラでの撮影」や「レトロゲーム」を楽しみたい場合には記録媒体として必要になる場面があるでしょう。
またPS3『torne』を2025年現在も愛用している方は、メモリースティックが必要になる場面があります。

2025年現在でも、筆者が確認する限り、メモリースティックを新品として購入できる家電量販店はまだ存在します。古い記録媒体は必要になった時には「もう手に入らない」場合があります。ソニー製品を長く愛していらっしゃる方は、いまのうちにメモリースティックの予備を購入しておくのも良いかもしれません。
※サムネイル画像は(Image:「ソニーストア」より引用)
記事提供元:スマホライフPLUS
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