苦しい1年を乗り越えてプロデビュー レジェンドの助言やギータからの刺激で成長した中村心「初優勝したい」
<Vポイント×SMBCレディス 事前情報◇19日◇紫カントリークラブ すみれコース(千葉県)◇6668ヤード・パー72>
シーズン序盤はルーキーのデビュー戦になる試合も多い。19歳の中村心は今週、プロとしての第一歩を踏み出す。「昨年はすごく苦しい思いをしたので、念願のプロゴルファーとしてツアーに出られるのがすごい楽しみです」。緊張感はなくワクワク感をもって初戦に挑んでいく。
“予定外”の1年を過ごしていた。ECC学園高3年時の2023年に「日本ジュニア」と「日本女子オープンローアマ」(14位タイ)という“アマチュア2冠”を達成。将来を嘱望される逸材だが、「プロテストに向けてだんだん(調子が)落ちてしまって」と、合格率3パーセントの狭き門、プロテストの壁に阻まれた。
24年はナショナルチームにも選出されたが前年からの不調は続き、「毎日ほんとに苦しくて、でもゴルフをやらないといけないみたいな感じで笑顔もなくて…」と葛藤とも戦ってきた。その不調の一番の原因は逆球だ。持ち球のドローボールをイメージするが、ボールがつかまらない症状に悩まされた。“曲がる”、“振れない”と悪循環になり思うようなゴルフができなくなっていた。
その悩みを解決してくれたのは師事する男子ツアー通算48勝の中嶋常幸である。「いろいろ考えすぎていたので、『自分が気持ちいいスイングをして、そこからスイング作りを意識したらいい』といわれて、自分の振りたいようにベースを作り直したら振れるようになりました」。レジェンドの助言でよみがえり、躊躇(ちゅうちょ)なく振り切る自分のスイングを取り戻し、2度目のプロテストで合格をつかんだ。
このオフに取り組んだのは基礎体力のアップだ。1月にプロ野球・ソフトバンクホークスのギータこと、柳田悠岐選手らの自主トレに参加。「トレーニングも練習もずっと自分を追い込み続けているのを間近で見ていて、すごく刺激をもらいました。食事もすごい量を食べていました。私もトレーニングと食トレをがんばりました」と一流アスリートの姿を見て意識改革をした。
そのかいあって体重は昨夏より10キロ近く、年明けからでも5キロの増量に成功。1年間戦い抜く下地を作った。持ち味というドライバーの飛距離も10ヤードし伸び、平均250ヤードに。「2打目の番手が短くなった分、少し楽になったと思います」と効果も感じられる。
今季前半戦の出場権をかけたファイナルQTは74位に終わったが、今週は主催者推薦での出場となる。「QTがダメだったので、推薦をいただいた試合は大事にして、そこでチャンスをつかめたら一番いい。ルーキーイヤーで初優勝を挙げることが目標です。今週できたらいいなと思います」。“デビュー戦V”を意識し、オフの成果を発揮したい。
今週の紫CCすみれCは、中村にとって縁があるコース。ECC学園2年時の22年にプロの試合に初めて出場した「日本女子オープン」と同じ舞台だ。当時は「78」、「82」と2日間トータル16オーバー・110位タイで予選落ち。「その時はラフが長くてグリーンがコンクリートみたいに硬くて…コテンパンにされたので、デビュー戦でリベンジしたい」。ナショナルオープンのセッティングにまったく歯が立たなかった記憶を塗り替えたい。
今週はメジャー仕様とまではいかないが、「グリーンは速いですし、奥にこぼしたら難しいところばかり。ラフは長くないけどやっぱり難しいです。耐えながら伸ばしたい」と戦略性に富んだコースを警戒する。「プロになって紫CCに戻ってこられたのはすごくうれしいし、成長できたと思える結果を出したいです」。プロゴルファー・中村心の船出。コース上でも昨年忘れていた満面の笑みを見せたい。(文・小高拓)
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