二度三度見直したくなる“先読み不可能”なジャンルレスのエンタメ作品「あの人が消えた」
次々と人が消えると噂されるマンションを舞台に、怪しげな住人の秘密を知ってしまった配達員が思いもよらぬ事件に巻き込まれていくミステリー・エンタテインメント「あの人が消えた」。国内外の名だたる賞を総なめにした注目のクリエイター水野格が監督・脚本を務めた完全オリジナル作品で、その“先読み不可能”な驚愕の展開が話題を呼んだ本作のBlu-ray&DVDが、3月19日にリリース(レンタルDVD同時)。豪華版Blu-rayには、全編に散りばめられた伏線や遊び心を知ることができる映像&音声特典も収録される。
二転三転して心地良い裏切りを楽しめる
本作は先の読めない展開が大きな魅力の複数ジャンルを横断するようなエンタメ作品。どんなジャンルの作品なのかも含め、本来は何も情報を入れずまっさらな気持ちで見てほしい映画で、詳細を知らずに見ていると二転三転する物語に、ミステリーなのか、コメディなのか、サスペンスなのかと、心地良く惑わされる。実は最後まで見ると「〇〇でもあったのか!」と驚くことになるはずで、こう書いているだけでも、見る方の楽しみを奪ってしまわないかと心配になるほど、明かしたくないことが多いが、序盤のあらすじだけは紹介しておこう。
主人公の新人配達員・丸子(高橋文哉)は、ハードな仕事にようやく慣れてきた頃、あるマンションの担当となるが、そこは「次々と人が消える」と噂されるいわくつきの場所だった。日々マンションに出入りして荷物を届ける丸子は、その住人のひとり・小宮(北香那)が自身の愛読しているWeb小説の作者ではないかと察して、密かに憧れを抱いていく。
そんな中、挙動不審な住人の島崎(染谷将太)に小宮のストーカー疑惑が持ち上がり、丸子は運送会社の先輩で小説家志望の荒川(田中圭)の協力を仰ぎ、他の住人たちに聞き込みを開始。引っ越し先を探しているという沼田(袴田吉彦)や、詮索好きのおしゃべりな女性・長谷部(坂井真紀)らの住人から、「島崎の部屋に血だらけの女がいた」「血痕が付いた服を着た姿を見た」というとんでもない目撃情報を聞く。島崎を危険人物と断定した丸子は、小宮を守りたい一心で部屋に単身侵入を試みるが……。
丸子は不器用ながらも真面目で優しい性格。このあらすじだけを見ると、一つのマンションを舞台にしたよくあるサスペンスミステリーのようにも思えるだろうし、いち配達員がなぜそこまで深入りするのか、生真面目すぎて暴走しているのでは、逆にストーカーになっているのでは……などとも思うだろうが、物語はここから一変していくので、とにかく最後まで見てもらえると必ず、「なるほど」と膝を打ったり、心地良い裏切りを楽しめる。
全編に伏線や遊び心が満載
主人公・丸子を演じるのは、『仮面ライダーゼロワン』(19)やTBSドラマ『最愛』(21)の出演で注目を浴びて以降、大活躍中の高橋文哉。2024年は本作以外にも、「映画 からかい上手の高木さん」と「劇場版 君と世界が終わる日にFINAL」「ブルーピリオド」で準主役や重要な役を演じ、ドラマ『伝説の頭 翔』に主演。青春映画から近未来ファンタジー、ヤンキーからトランスジェンダーまで、ジャンルも役柄も幅広い作品で大活躍した。主役を担える華がありつつ、どんな役にも染まれる俳優としての資質は、普通の青年を演じた本作でも発揮されている。
そして、田中圭が、丸子の職場の先輩で小説家を夢見る男・荒川役を演じ、作品にユーモアを与えると共に大事な役を担う。さらに、謎めいたマンションの住人役に、北香那、坂井真紀、袴田吉彦、中村倫也、染谷将太、警視庁の捜査官役に菊地凛子など、多彩な俳優陣たちが集結。
監督・脚本は、バラエティ番組の演出も経て、ドラマではチーフディレクターを務めた作品が国内外のドラマ賞を受賞して脚光を浴びた水野格。本作のオリジナル脚本は、コロナ禍で宅配を頼む機会が増えて気付いたことから着想を得ると共に、配達員の方々への感謝とリスペクトの思いも込めたそうで、エンタメの中で配達業界の過酷さに目を向ける姿勢は、同じく昨年公開された「ラストマイル」とも通じるものがある。水野監督ならではの細部にまでこだわった遊び心の演出が堪能でき、二度三度と見直したくなる作品だ。
伏線やトリックの一部を明かした映像&音声特典
初見の方はもちろんまっさらな気持ちで見て、二度目の方は結末を知った上で見直していただき、それから3月19日にリリースされる豪華版Blu-rayに収録の映像特典や音声特典で、伏線やトリック、謎解きのための仕掛けや遊びを知った上でさらに見直していただくと、何度でも楽しむことができる。また、複数人で見ると、伏線や仕掛にどこまで気づいたかなどの話題で見終わった後に盛り上がることだろう。
豪華版Blu-rayに収録されているのは、映像特典として、メイキング、丸子カメラ(主演の高橋がカメラを持って劇中の登場人物にインタビュー)、舞台挨拶(完成披露上映会、初日舞台挨拶、どこまで話せる?!伏線回収トークイベント)、あの人に聞いた!『あの人が消えた』の秘密(高橋文哉×染谷将太/高橋文哉×田中圭)、特報・予告編など。音声特典として、主演の高橋&水野監督によるオーディオコメンタリー。封入特典として、ブックレットと特製トレーディングカードなどとなっている。
ネタバレになることが多いので、映像特典や音声特典の具体的な内容を明かしにくいが、料理が得意な高橋が現場で手作り牛丼を振る舞う様子や、あるキャストがかけられた手錠の鍵がなくなってちょっとした騒ぎになっていた模様などの撮影裏話から、全編に散りばめられた伏線や仕掛や遊びや裏設定などが解説されている。例えば登場人物の名前にも謎解きのヒントがあったり、本編冒頭から裏設定が活かされた演出があるが、初見の際はそんなことを気にせず見ていただきたい。本編を1~2度見たあとに見聞きすると、さらに本編を楽しめる映像&音声特典になっている。また、高橋が主演だと聞いて出演オファーを快諾したという田中など、高橋の人間的魅力を水野監督やキャスト陣が語る姿なども収められている。舞台挨拶などからも高橋の謙虚な姿が窺え、今後も主演映画「少年と犬」、出演映画「夏の砂の上」、出演ドラマのNHK連続テレビ小説『あんぱん』など、ひっぱりだこの高橋の活躍の理由の一端も垣間見られることだろう。
文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社
「あの人が消えた」
●3月19日(水)Blu-ray&DVDリリース(レンタルDVD同時)
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら
●豪華版Blu-ray 価格:7,480円(税込)
【ディスク】<2枚>※本編+映像特典
★映像特典★
・メイキング
・丸子カメラ
・舞台挨拶
1)「完成披露上映会」
2)「初日舞台挨拶」
3)「どこまで話せる?!伏線回収トークイベント」
・あの人に聞いた!『あの人が消えた』の秘密(高橋文哉×染谷将太)
・あの人に聞いた!『あの人が消えた』の秘密(高橋文哉×田中圭)
・特報・予告編
★封入特典★
ブックレット/特製トレーディングカード
★音声特典★
高橋文哉&水野格監督オーディオコメンタリー
●通常版DVD 価格:4,180円(税込)
【ディスク】<1枚>※本編+映像特典
★映像特典★
・特報
・予告篇
●2024年/日本/本編104分
●監督・脚本:水野格
●音楽:カワイヒデヒロ
●主題歌:NAQT VANE 「FALLOUT」(avex trax)
●出演:高橋文哉
北香那、坂井真紀、袴田吉彦
金澤美穂、菊地凛子、中村倫也
染谷将太、田中圭
●発売元:日活 販売元:VAP
©2024「あの人が消えた」製作委員会
記事提供元:キネマ旬報WEB
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