北海道新幹線の札幌延伸開業は予定より8年遅れの2038年度末ごろに 国の有識者会議が報告書を国交省に提出(北海道)

北海道新幹線の延伸区間の開業時期をめぐって大きな衝撃が走った。
北海道新幹線新函館北斗~札幌間(函・札間)の全体工程を検証していた、国の「北海道新幹線(函・札間)の整備に関する有識者会議」は2025年3月14日、「現時点での完成・開業時期は2038年度末ごろ」の見通しを公表した。
これまでの公式見解は2030年度末。有識者会議は「2030年度末完成・開業は困難で、おおむね2038年度末ごろになる。今後、大きなリスクが発生すれば、さらに数年単位で遅れる可能性もある」を趣旨とする報告書を、中野洋昌国土交通大臣に提出した。
函・札間の開業時期遅れをめぐっては、本サイトでも2023年1月、2024年5月の2回にわたって報じた。工事の遅れは、2023年1月は「目標の2030年度末開業に黄信号」、2024年5月には「数年単位の遅れ」とされたが、今回の報告書で「8年遅れ」という具体的な数字が明らかにされた。
2024年5月以降の経過をたどる。新幹線整備に当たる鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)から、「函・札間の2030年度末完成・開業は白紙。予定より数年単位で遅れる」の報告を受けた国交省は、有識者会議で「JRTTの見通しは合理的なものか」、「(工期短縮のために)講じられる方策はないか」の2点を検討した。
会議は、森地茂政策研究大学院大学名誉教授、野澤伸一郎JR東日本コンサルタンツ常務・技術統括本部長ら有識者がメンバー。10回を超す会議や現地視察で、今回の「JRTTの報告は合理的で、採用可能な工期短縮策を講じても完成・開業時期はおおむね2038年度末ごろ」の結論にいたった。
新幹線の行く手を阻むのが長大トンネル群。工事中区間には渡島トンネル(32.7キロ。新函館北斗~新八雲〈仮称〉間)、羊蹄トンネル(9.8キロ。長万部~倶知安間)、札樽トンネル(26.2キロ。新小樽〈仮称〉~札幌間)がある。それぞれに地質不良や岩塊の出現といった想定外の事象が発生するほか、建設業界全般で大きな課題になっている人手不足も工事を遅らせる要因になる。
有識者会議は、現時点では不確定要素も多いため、トンネル貫通に一定のめどが立った段階で、あらためて全体工程を精査するようJRTTに求めた。さらに、「沿線自治体は円滑な施工に協力が欠かせないプロジェクト・パートナー。工事進行やリスク発生について情報共有が望ましい」と地域連携を要請した。
今回明らかになった開業時期の大幅な遅れについて、鈴木直道北海道知事はコメントを発表。「にわかに受け入れられるものでなく、沿線自治体のまちづくりや、JR北海道の経営などに多大な影響を与える。道としては、影響の最小化に向けた対応策の検討・実施を求めたい」と訴えた。
記事:上里夏生
(H5系新幹線イメージ写真:tarousite / PIXTA)
記事提供元:鉄道チャンネル
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