今春のセンバツ高校野球のプロ注・初出場・優勝候補!
3月18日にセンバツ高校野球が甲子園球場で開幕する
3月18日に開幕するセンバツ高校野球。今から注目したいドラフト候補選手や話題の初出場校、優勝候補などなど気になる情報をお届けします!
■今大会注目のドラフト候補選手第97回選抜高校野球大会(センバツ)が3月18日に甲子園球場で開幕する。出場する32校のすべてが、3月に入ってから対外試合が解禁されたばかり。つまり、手探り状態で大会に突入するのだ。意外な伏兵が出現する可能性は十分にあり、春ならではの楽しみが広がりそうだ。
まず、今大会の注目選手から紹介していこう。新2年生ながら「大会屈指の逸材」として名前を挙げたいのが、織田翔希(おだ・しょうき/横浜・神奈川)だ。キャッチボールを1球見ただけで「別格」と実感できる、新たな怪物候補である。
織田翔希/横浜(神奈川) 中学では軟式野球部でプレー。硬式球を握って1年足らずで球速は150キロに達した
横浜といえば、1998年に甲子園春夏連覇を成し遂げた「平成の怪物」こと松坂大輔(元西武ほか)がいる。そんな伝説的なOBと比較しても、投手としての資質は織田のほうが上だろう。
福岡県北九州市で生まれ育ち、足立中では軟式野球部でプレー。硬式球を本格的に握るようになって1年足らずで球速は150キロに達し、名門の実質的なエース格に上り詰めた。ただ将来性があるだけでなく、実戦での強さも織田の魅力。
昨秋の明治神宮大会では、いやらしい打者がそろう明徳義塾(高知)を2安打完封に抑えるなど優勝に大きく貢献。調子が悪くても試合をまとめられるうまさは、大谷翔平、佐々木朗希(共にドジャース)の高校時代をはるかに凌駕する。大きな故障さえなければ、2026年ドラフト会議の主役になるはずだ。
新3年生では、150キロ台の球速をコンスタントに計測するスピードキング・石垣元気(いしがき・げんき/健大高崎・群馬)に注目したい。昨春センバツでは準決勝、決勝と先発で連投して優勝に貢献した。その資質の高さに注目したMLBスカウトが、早くも視察に訪れている。
石垣元気/健大高崎(群馬) スピードガンの精度不明ながらも、昨秋には最速158キロを計測した剛腕
昨秋には最速158キロを計測したが、スピードガンの精度が怪しまれる球場だったこともあり、「誤計測だと思います」と本人は至って冷静だ。今春はセンバツ史上最速となる155キロを狙う。
総合力にかけて高校球界最強と評価したいのは、阪下漣(東洋大姫路・兵庫)だ。最速147キロの球速もありながら、コースを突く丁寧な投球が持ち味。高性能のカットボールも操り、高校生の試合にひとりだけ大学生が交ざっているような完成度を見せる。昨秋は近畿大会優勝、明治神宮大会ベスト4の原動力になった。
今や複数の好投手をそろえるのが強豪の常識。控え格にも逸材が潜んでいる。右腕なら宮口龍斗(みやぐち・りゅうと/智弁和歌山)、左腕なら奥村頼人(おくむら・らいと/横浜)もプロを十分に狙える。
宮口は実戦派エース右腕・渡邉颯人(わたなべ・はやと/智弁和歌山)の陰に隠れているが、最速152キロのストレートを武器にする剛腕。奥村は横浜OB・伊藤将司(阪神)のように球質の良さで勝負する左投手。ピンチでの強さや高い打撃力も併せ持つ。
野手は例年に比べて小粒な印象は否めないものの、プロのスカウトが目を光らせる原石も眠っている。その筆頭格が赤埴幸輝(あかはに・こうき/天理・奈良)だ。運動能力の高い遊撃手だが、ただスピードがあるだけでなく、丁寧なゴロさばきの守備力が光る。
体の線は細いものの、意外なパンチ力も秘めている。今春の活躍次第では、ドラフト上位候補に浮上するだろう。
外野手なら阿部葉太(あべ・ようた/横浜)も見逃せない。走攻守にハイレベルな実力者で、特にセンターから伸びてくるレーザービームは高校トップクラス。高校2年5月から、3年生を差し置いてキャプテンに就任したというリーダーシップで、名門の大黒柱になっている。
プロ側の需要が高い「右投右打の内野手」では、蝦名翔人(えびな・しょうと/青森山田)と山田希翔(やまだ・まれと/智弁和歌山)も要注目だ。蝦名は打撃力、山田は守備力が武器で、まだまだ発展途上。ひと冬越えて成長ぶりをアピールできれば、ドラフト戦線に浮上してくるだろう。
続いて「ベールに包まれた快素材」を紹介したい。新2年生の超大型選手・菰田陽生(こもだ・はるき/山梨学院)だ。身長194㎝、体重97㎏の巨躯(きょく)で投打共に高いポテンシャルを秘めた二刀流。
特に打撃の破壊力はすさまじく、甲子園の大舞台でどんな打球を放つのか待ち遠しい。低反発バットが導入された昨年以降、「投高打低」が続く高校野球界で新たなスラッガーが誕生するかもしれない。
菰田陽生(山梨学院) 身長194㎝、体重97㎏の巨躯で投打共に高いポテンシャルを秘めた二刀流
今大会はエッジの利いた初出場校が多く、話題が豊富なのも特徴だ。その筆頭格は創部わずか3年で初出場を果たした、沖縄のエナジックスポーツだろう。2024年度の全校生徒68人のうち野球部員が54人で、残りはゴルフ部員。
新年度からは駅伝部、ボウリング部、卓球部も発足する予定だという。校名のとおりスポーツに力を入れた学校だ。
沖縄県内では「スポーツばかりで学業をおろそかにしているのでは」と批判の声もあるが、選手は資格試験の勉強にも熱心に取り組んでいる。
昨秋のドラフト会議では1期生の龍山暖が西武から6位指名を受けて、プロ入り。チームは「ノーサイン野球」を標榜しており、感性豊かな選手たちが暴れ回って昨秋の九州大会で準優勝している。
21世紀枠での出場校も個性が際立っている。横浜清陵は神奈川の県立高校としては71年ぶりの甲子園出場となる。横浜、東海大相模、慶応義塾など名だたる強豪私学がしのぎを削る超激戦区だけに、昨秋の神奈川大会ベスト8は価値が高い。
野原慎太郎監督は東海大相模出身で、2000年春に控え投手としてセンバツ優勝を経験。家庭科の教員という点も野球部の監督としては異色と言える。
長崎の壱岐(いき)は人口2万4000人の離島・壱岐島の高校だ。選手21人は皆、島の出身で中学時代に県大会で優勝した実力者がそろっている。島外の強豪校から誘いを受けた部員もいたが、「壱岐から甲子園を目指そう」と多くが島にとどまった。
昨秋は長崎大会で準優勝、九州大会ではベスト8に進出しているように全国クラスが相手でも十分に戦えるチーム力がある。
激戦の近畿大会でベスト8に食い込んだ滋賀短大付も、なかなか味わい深いチームだ。保木淳(ほうき・じゅん)監督が「ベンチで一生懸命に声を出している中学生を勧誘する」と明かすように、中学時代に控えだった選手を鍛え上げてきた。
エースの櫻本拓夢(さくらもと・ひろむ)は最速125キロの技巧派左腕だが、昨秋の近畿大会初戦で大阪の強豪・履正社を撃破するジャイアントキリングを演じた。「恋愛推奨、SNSもOK」という方針も異彩を放っている。
悲願の初出場を勝ち取ったのは、浦和実(埼玉)だ。埼玉県内では花咲徳栄、浦和学院といった全国屈指の強豪の前に涙をのんできたが、昨秋は関東大会ベスト4に進出。1988年の監督就任以来、甲子園出場に執念を燃やしてきた辻川正彦監督に定年退職直前にして初の甲子園切符が届いた。
エース左腕の石戸颯汰(いしど・そうた)は右ヒザで自身のアゴを蹴るような、超変則の「ニーキック投法」。常時120キロ台の球速でも独特のリズム感で打者のタイミングを外していく。
■気になる優勝候補は!?優勝争いの大本命に挙がるのは、昨秋の明治神宮大会で優勝を飾った横浜だ。織田、奥村の二枚看板に野手も阿部ら役者がそろっている。
対抗馬は横浜と明治神宮大会準決勝で延長11回(タイブレーク)の末に1-3で敗れた東洋大姫路。エース・阪下の存在感は絶大で、守備力も高く「勝てるチーム」と言っていい。
さらに関東大会準優勝の健大高崎、近畿大会準優勝の智弁和歌山も個々の能力が高い。健大高崎は石垣以上に安定感がある実戦派左腕の下重賢慎(しもしげ・けんしん)が連覇のカギを握りそう。智弁和歌山は3大会連続で甲子園初戦敗退が続いているものの投打が噛み合えば一気に波に乗るだろう。
ダークホースに挙げたいのは試合巧者の明徳義塾、新2年生の好投手を多数そろえる沖縄尚学、安定感のあるエース右腕・蜂谷逞生(はちや・たくま)を擁する日本航空石川。
昨秋の明治神宮大会で準優勝と躍進した広島商も不思議なしぶとさがあり、侮れない。春は投手力がモノをいうだけに、最速147キロを計測する右腕・行梅直哉(ゆきうめ・なおや)ら速球派投手を何人も抱える高松商(香川)も要チェックだ。
選ばれし32校はどんな戦いぶりを見せてくれるのか。今春も寒風をものともしない、熱い大会になりそうだ。
取材・文/菊地高弘 写真/時事通信社 アフロ
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