【空き家×シニア】超高齢社会を救う!目からウロコのビジネスとは?:ガイアの夜明け
更新日:
イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
注目の旬ニュースを編集部員が発信!「イチオシ」は株式会社オールアバウトが株式会社NTTドコモと共同で開設したレコメンドサイト。毎日トレンド情報をお届けしています。
3月14日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、SDGsウイーク「働く!じーちゃん ばーちゃん」。
超高齢社会を迎えた日本。社会保障費の増大や労働力不足など、ネガティブな側面が注目されがちだ。
そんな高齢化の課題を“シニアを活用して解決する”という逆転の発想で2022年に創業したのが「ジーバー」。おじいちゃん、おばあちゃんが「組合」を組織し、飲食店のサポートやオリジナル弁当を製造・販売している。
本部はシニアの後方支援に徹して、利益はシニアたちで分け合う。仕事とボランティアの中間というこれまでにない新しい働き方で、超高齢社会の日本を元気にする挑戦を追った。
【動画】《空き家×シニア》超高齢社会を救う!目からウロコのビジネスとは?
最高齢は80歳。じーちゃん、ばーちゃんのパワーで街を元気に!

宮城・仙台市に、平均年齢が極めて高い「ジーバーFOOD」の本店がある。
午前6時。店の厨房には、すでに多くのシニアが集まっていた。本店には35人がおり、飲食店のサポートやオリジナル弁当の製造、販売を行っている。唯一の労働条件は60歳以上であること。

女性の最高齢、小関明子さん(80)は、結婚後はずっと専業主婦。調理師の資格を持っており、料理の腕は天下一品だ。
揚げ物を担当する須藤よね子さん(74)は、「旦那が亡くなって4年目。家に帰ると話す相手がいない。テレビ相手にボーッとしていたら、娘に『ここで働けばみんなに会えるよ』と紹介されて、すごく楽しい」と笑顔で話す。

弁当はすべてシニアたちの手作りで、だし巻き卵も熟練の技で年季が違う。この日、みんなで作ったランチ弁当は130個。毎回メニューが変わるため選ぶ楽しさもあり、この日の弁当は「タラのムニエル」「鶏肉の甘酢あんかけ」「ミートボール」と3種類(全て800円)で、野菜もたっぷり入っている。
今回の届け先は「シニアを支援したい」と月に3回大量注文してくれる東北楽天イーグルスの球団事務所で、弁当もシニアたちが運ぶ。
「ジーバーFOOD」は一風変わった運営が特徴。米澤加代子さん(72)は「週1回の人もいれば、毎日来たい人もいれば、それはその人たちの自由。自分たちの好きなように運営できるので楽しく働ける」と話す。

仕事を終えたら、楽しい賄いの時間。シニアたちの報酬は週に2~4回働いて月2~3万円と高くはないが、ここにはお金にはかえられないものがある。

3年前、「ジーバー」を立ち上げた社長の永野健太さん(35)には、強い思いがあった。「シニアパワーで地域を元気にしよう、そんな取り組みとしてスタートした事業。シニアを対象にすると、どうしても『サポートしなくては』という目線になってしまう。地域のシニアたちも支えるポジションにいて、いろいろな人が支え合って生きていける。そういう日本社会をつくっていきたい」。

「ジーバーFOOD」の仕組みは、シニアが組合をつくって自主的に運営するというもの。
本部はサポート費や施設の利用料として売り上げの10パーセントから25パーセントを受け取り、残った利益を組合員で分け合う。
日本の65歳以上の人口は約3600万人(出典 総務省 人口推計)で、70歳を迎えるシニアの8割以上が「70歳以降も働きたい」と回答(リクルート調べ)。
それなら超高齢社会の問題を、当事者であるシニアの力で解決できないか…永野さんはそう考えた。

2年前から「ジーバーFOOD」で働く丸山健治さん(80)は、「家内が体調を崩して一人で生活することになり、何かしたいなと思った」と話す。料理を一切してこなかった丸山さん、今は米を炊く担当だ。
丸山さんの妻・晶子さんはがんを患い、特別養護老人ホームで闘病中。3年前から一人暮らしを始めた。
システムエンジアだった丸山さんは、社内恋愛で晶子さんと結婚。退職後は社会保険労務士の資格を取って77歳まで働き、仕事一筋の人生だった。
晶子さんがいないことが身に染みる毎日だったが、「ジーバー」で働くようになってから少しずつ料理が作れるようになり、「ジーバー」が、丸山さんにとって新たな居場所になっていた。

「ジーバー」の永野さんは去年10月、観光施設「とみやど」(宮城・富谷市)の一角にある古民家で、飲食店「しんまちキッチンbyジーバーFOOD」の運営を始めた。この店では、15人のシニアが、1日3時間ほど2交代制で働いている。

店の自慢は地元の食材にこだわった「おむすび」で、注文が入ってからその場でにぎる。
新鮮な野菜をたっぷり使った豚汁も人気で、おむすび2つと豚汁のセットは、漬物も付いて880円。「ふわふわでおいしい」と若い客にも好評だ。

この店では、相澤てるみさん(75)が新商品を開発している。永野さんは、「健康的な味でおいしい。増え続けていく空き家とシニア世代の人たちを掛け合わせると街の中でパワーが生まれる、街が活気づくという1つのモデルとして全国に広めたい」と話す。

永野さんは大学卒業後、大手住宅メーカー「積水ハウス」に入社して仙台に赴任。その後は先輩と共同で不動産会社を設立し、会社は右肩上がりで業績を伸ばしていった。
「日本は少子高齢社会で人口も減っていく、もう終わりだという話をよくしていた。日本で早く稼いで、それを海外に持っていってチャレンジするぞというのが先輩の口癖だった。」(永野さん)。
しかし、そんな人生を変えたのが、新型コロナのまん延だった。「初めて“自分の会社がつぶれるかも”という恐怖を抱いた。ただ次の瞬間に思ったのは、うちの会社がつぶれて何か世の中の人に関係あるのかな? ということ。虚しくなって、このままじゃいけないと思った」。

同じ頃、待望の子どもを授かった永野さんは、次の世代のために自分は何ができるのかと考え、自問自答を繰り返す中、「ジーバー」創業のきっかけをくれた恩人と出会う。それが、2年前に亡くなった大友克人さんだ。
「長年商店街の会長をやっていた方で、『これから高齢者がすごく増えるから、目をそらしてはいけない』とずっと話していた」(永野さん)。
「ジーバー」の本部として使っている建物は、かつて大友さんが経営していたバイク店。永野さんから「ジーバー」のアイデアを聞いた大友さんは、空きテナントになっていたこの場所を破格の家賃で貸してくれた。さらに、厨房への改装費3000万円も出してくれたという。
永野さんは、「身銭を切ってまで“地域を良くしたい”と実行に移す人を見たことがない。それを当たり前のようにやってしまう格好いい人。その覚悟に触れた時、僕も覚悟が決まった」と当時を振り返る。
しかし去年12月、永野さんは、すでに営業している仙台と富谷の売上高の推移を見て厳しい表情に。「ジーバーFOOD」の日々の運営に自治体からの補助金はなく、毎月150万円ほどの赤字が続いていた。2022年11月から事業をスタートし、ずっと赤字が続いている。
弁当の注文の数に左右され、食材ロスの問題も。「高齢社会のイメージを変えてみせる」と奮闘してきた永野さんは、厳しい現実を突きつけられていた。
仙台駅の名物弁当を作る! 世界がうらやむ高齢社会へ

去年12月下旬。永野さんは仙台にいるメンバーを事務所に集め、「ジーバー」を存続させるための新たなプロジェクトを提案した。人気の洋食店「HACHI」と組んで、駅弁を作ろうというのだ。駅弁は、1日の乗客数が約9万人のJR仙台駅構内で販売する。

「HACHI」の看板メニューは「ハンバーグナポリタン」(2200円)。「日本一のナポリタン」を決める大会でグランプリを獲得した逸品だ。
しかし、「HACHI」こだわりの太麺をゆでるのに1日4時間かかり、従業員の長時間労働につながってしまうため、ゆでる作業を「ジーバーFOOD」に依頼。この縁から、「HACHI」は今回の弁当の製造を「ジーバーFOOD」のシニアたちに任せることにした。仙台駅での弁当販売が軌道に乗れば、「ジーバー」の黒字化も見込める。
2月上旬。この日は駅弁の試作会。闘病中の妻を抱える丸山さんもメンバーに選ばれ、だし巻き卵の担当に抜てきされた。前日からだし巻き卵の練習を始め、同僚の指導を受ける。駅弁発売まであと3週間…丸山さんは、戦力になれるのか。
そして永野さんは、「ジーバー」赤字解消のため、さらなる秘策を考えていた――。
この放送が見たい方は「テレ東BIZ」へ!
記事提供元:テレ東プラス
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。