ウーバーイーツの極端な「配達遅延」はなぜ起きる?【チャリンコ爆走配達日誌】
自宅から遠い店の商品でも配達可能なのは良いサービスのように思えますが、問題点もあって......
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第91回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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今回は最近話題となっている配達員不足によるウーバーイーツの遅延問題の話です。
自転車配達員の私の視点だけでは現状の把握が難しいので、都内でバイクを使って配達をしている組合のメンバーに話を聞きつつ、この問題について考えてみました。
2025年のお正月、ウーバーイーツで注文した商品が何時間経っても届かない配達遅延が発生しました。私が主に配達しているエリアでも、飲食店に料理を受け取りに行くと「ウーバーの配達員さんがいつまで経っても料理を受け取りにこないけど、何かあったの?」と聞かれることがしばしばありました。
私が配達するエリアは箱根駅伝のコースがあるので、以前「年末年始にウーバーイーツ配達依頼が多かった意外な店とは?」で書いた通り、当初は駅伝の影響ではと考察しました。ですが、都内では駅伝コース以外の場所でも配達員不足と配達の遅延が深刻化。原因は2024年の年末ごろに行なわれた配達報酬算出のアルゴリズム変更による実質的な報酬の値下げで配達員が減ったから、という考察が一般的となりました。
このような考察が配達員の間で広まったお正月休み明けから、お昼や夜の時間帯に臨時のクエスト(ボーナス)を出すようになったので、報酬の値下げが配達員離れにつながり、遅延が起きたのは間違いないでしょう。
ウーバーイーツ配達員が一定の期間で規定の回数を運ぶとボーナスがもらえる「臨時クエスト」の画面
ですが、配達員不足はこれだけが原因ではないようです。バイク配達員と自転車配達員の私が話して出てきたのが「最近の配達は昔の配達より距離が長くてダブル(2件同時配達)が多くなったよね」という話。
遠くの店の商品でも配達可能というのは利用される方にはいい話です。配達時間や配達手数料が少々かかるマイナス面はあるものの、それ以上に注文できる店の数が増えることは大きなプラスでしょう。
実際、バイクの配達員がデリバリーピザチェーン店の商品をウーバーで頼んだ人に話を聞いたところ「うちは(注文した)ピザ屋のデリバリーの配達圏外だけど、ウーバーなら配達圏内なのでいつもウーバーで頼んでいる」とのこと。
配達員にとっても距離が長くなると報酬が上がる傾向があるので、注文者、配達員、運営側とも収益が上がる、すべての人にとっていいサービスのように見えます。
ただ、長距離の配達が増えると、配達員の数が変わらなくても配達員不足が起こります。距離が短い頃は1時間に4回運んでいた配達員が、距離が伸びたことで1時間に2回しか配達できなくなったら、配達員の数を2倍に増やさなければこれまでと同じ数の注文をさばくことができません。
2件同時配達や3件同時配達のような複数配達は、多数の注文をさばくために運営側が活用していると思うのですが、1件目の店でaの料理を受け取る→2件目の店でbの料理を受け取る→aの料理をAさんに受け渡す→bの料理をBさんに受け渡すといった配達を行なうと、Aさんにとっても、Bさんにとっても自分の注文とは関係のない店や受け渡し先に「寄り道」されるので、配達時間がどうやっても余計にかかってしまいます。
さらにバイク配達員と話していて出てきたのは、ウーバーイーツの配達が複雑になり、新規で働こうという人にとってハードルが高くなっていること。
最近のウーバーイーツの配達は、買い物代行のピック・パック・ペイ、マックデリバリーなど他社の配達を代行する3PRなど、やることが増えています。さらに暗証番号を求められる案件や、商品受け取りの際に封をされた袋の上に貼られたレシートのQRコードをスマホに読み込ませて、商品内容を確認する機能もあります(なぜこの作業で袋の中に入っている商品と注文した商品に間違いがないかを確認できるのか、私にはさっぱりわかりません)。
このような感じで年々作業が複雑になっているにもかかわらず、配達員はアプリで配達マニュアルの動画を見る程度。サポートに相談してもAIが判断して送ってくる定型文であることが多いため、初めて働こうという人には厳しい環境となっています。
また、タイミーをはじめとするスキマバイトアプリのお金の支払いの早さも、配達員が少なくなっている要因と思われます。
ウーバーイーツからのお金は、月曜日の朝4時から翌週月曜日の3時59分までに働いた分が火曜日のお昼頃に口座に振り込まれます。週払い、しかも日曜日に働いた場合、2日後の火曜日の昼に振り込まれるのは、私が配達員を始めた当初はとんでもなく早いスピードでしたが、スキマバイトアプリでは深夜や土休日に関わらず、仕事が終わった瞬間に口座にお金が振り込まれます。クレジットカードの引き落としなど、お金が急に必要になった方は深夜でも口座に振り込まれるスキマバイトを選ばれるでしょう。
さらに最近は、タイミーの人には誰でもすぐに出来るような作業を依頼する仕事先が多いので、複雑で自分で判断しなければならないウーバーよりタイミーの方が気楽に働けると考える人も増えているでしょう。
報酬減額以外にもさまざまな要因が考えられる配達員不足と、それに付随して起こる配達遅延。これらの問題を解消するには、作業を簡素化して初めて配達をする人にもやりやすい環境を作るか、配達員への報酬を大幅に上げるのがいいと思うのですが......作業の簡素化は行なわれず、報酬もほんのり上がった程度なので、混雑期の配達員不足による遅延はしばらく続きそうです。
文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明
記事提供元:週プレNEWS
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