【ピエール瀧の「萌え萌やしソバ探訪録」】14杯目「朝6時オープンの店へ! 市場で働く人のためのもやしソバ」
イチオシスト

今回は50年以上続く築地の老舗、「幸軒」へ
「もやしソバ」をこよなく愛するピエール瀧が、名店をめぐりながら、もやしソバとは何なのかを考えたり考えなかったりするこの連載。
今回は、築地場外にある朝6時からオープンしている店。70年以上の歴史があるそうです。その店の店主のおかあさんは、とっても魅力的な人でした。こういう出会いがたまりません。
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――今回は外国人旅行者でにぎわう東京・築地場外市場に来ています。今、小雨が降っていますけど、それでもいろんな国の人で通りはにぎわっています。そんな築地場外の通りからちょっとだけ奥に入った所にあるのが「幸軒」です。早速、入ってみましょう。
ピエール瀧(以下、瀧) 知る人ぞ知る感じの店構え。おじゃましまーす。
店主の佐藤あや子さん(以下、あや子さん) いらっしゃい。
瀧 このお店は朝の6時からやられているって聞いたんですが?
あや子さん そうよ。だから、私がここに来るのは深夜の2時半くらい。スープを作ったりするのに時間がかかるからね。
瀧 市場時間すね。おかあさんは、それを何年くらいやられてるんですか?
あや子さん もう、50年以上だね。
瀧 壁に「昭和25年創業」って書いてありますね。ということは、お店は70年以上やっているということになるのか。歴史があるなあ。
あや子さん うちのおじいさん(初代店主)が地方から出てきて始めたの。で、後を継いで私と一緒にやっていた旦那(2代目店主)が3年くらい前に亡くなって、今は私だけ。
瀧 失礼ですが、おかあさん今おいくつなんですか?
あや子さん 昭和22年生まれ。
瀧 ということは、78歳ですか? お若いですし、お元気ですね。
あや子さん 足が痛い、腰が痛いって言いながらやってんのよ。
瀧 それでも、市場で働いている人のためにということですよね。
あや子さん まあね。

この店で50年以上も働いている店主の佐藤あや子さん
瀧 この「ラーメン」(900円)、「チャーシュー麺」(1350円)、「みそラーメン」(1000円)、「もやしラーメン」(1000円)、「タンメン」(1000円)、「チャーハン」(1000円)というのは、昔から続いているメニューですか?
あや子さん 昔はラーメンだけ。それからいろいろ始めたのよ。
瀧 もやしラーメンを追加したきっかけはなんなんですか?
あや子さん だって、もやしラーメンは簡単でしょ。特に手間がかかるわけじゃないし。
瀧 「茶碗カレー(単品不可)」(500円)もあるんですね。おなかすいてるなら、ラーメンに合わせて茶碗カレーも食べていきなよっていうことですよね。
あや子さん そうだ、せっかくだから、「しゅうまい」(1個250円)を食べてってよ。
――「幸軒」さんは、しゅうまいがおいしいって有名なんですよね。
あや子さん しゅうまいは私が始めたメニューなのよ。
瀧 それは食べなきゃ。じゃあ、もやしラーメンとしゅうまいをお願いします。
あや子さん はいよ。あなたはもやしラーメンが好きなの?
瀧 そうなんです。町中華とかに行くと、なぜかもやしソバを頼んじゃうんです。それでいろんなお店のもやしそソバを食べたら、なぜ好きなのかがわかるんじゃないかと思って、この連載をやってるんです。
あや子さん はい。しゅうまいどうぞ。しゅうまいはウスターソースをかけて食べてね。
瀧 ウスターソースなんですか!? なるほど。ん~、うま! しゅうまいうまい! ゴロンとした肉感があるし、なんか、おかあさんの味っていう感じです。そしてかなりでかいですね。
あや子さん はい、もやしラーメン。

「もやしラーメン」(1000円)
瀧 おいしそう! こっちもかなりボリュームがありますね。
あや子さん 麺はけっこう目方があるのよ。
瀧 そこもやはり市場仕様ですか。
あや子さん 多めのほうが、みんなおなかいっぱいになるでしょ。
瀧 具はひき肉、もやし、キクラゲ、ネギかな......いただきます。
あや子さん お口に合うかしら。
瀧 うまい! 醤油味スープなのに、なんだろ? 奥行きがある味。
あや子さん うちは、チャーシューを煮た醤油を使ってるの。それを大きな牛骨と一緒に煮るわけ。
瀧 それか! うまみがすごいですね。もやしラーメンはとろみがついているから、冬とか体が温まるでしょうね。市場だと年中冷蔵庫の中で作業している人もいたでしょうし。

市場仕様なのか、けっこうボリュームがある
――お店の営業は12時30分くらいまでなんですよね。
あや子さん うちは朝が忙しいからね。それで10時30分くらいになると朝のお客さんが途切れて、その後はお昼を食べに来る人がチョロチョロという感じだから。
瀧 朝のお客さんに照準を合わせているわけですね。それにしても、この店は居心地がいいすね。
あや子さん うちは知ってる人しか来ないから。こんな奥まった所だからさ。それで表の通りのスペースが空かないかずっと待ってて、たまたま空いたから、しゅうまいを売る店を出したのよ。

場外の通りに面した店では、しゅうまいを売ってます
瀧 しゅうまいを表で売るのって、大正解だと思いますよ。観光客のおやつにもちょうどいいし。外国人旅行者の人も食べるんじゃないですか?
あや子さん どうだろう。表のしゅうまいの店はほかの人に任せてあるから。両方はできないからね。
瀧 また、このカウンター幅も広くていいんですよね。なんか落ち着く。
あや子さん そう? じゃあ、ずっと座っててよ。
瀧 僕がずっと座ってたら、お仕事のじゃまをするだけですよ(笑)。あ、ここにおとうさんの表彰状がある。「築地場外市場において、五十年以上の永きに亘り営業に努力され築地ブランドの確立に大いに貢献されました」って書いてある。おとうさんすごい! 感謝されてますよ。平成21年の表彰状で50年以上ってことだから、やっぱり70年くらいやってるわけか。尊敬できるなあ。
あや子さん ただ長いだけよ。
瀧 いやいや、長くやるのが一番大変ですよ。70年飽きられない味ってことですもん。そして、こういうおかあさんの雰囲気も含めて、みんな味わいに来てるんですよ。いやー、おいしかったです。ありがとうございました。
あや子さん ありがとうね。
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■築地 幸軒
東京都中央区築地4ー10ー5
03ー3545ー5602
※営業日時、メニュー、価格などは変更になる場合があります
※この連載は隔号で掲載予定です
※おいしいもやしソバなどの情報は【moemoyashisoba@gmail.com】まで
■ピエール瀧(ぴえーる・たき)
1967年生まれ、静岡県出身。ミュージシャン、俳優、声優、タレント。
「無駄こそ宝なり」が信条。好物はもやしソバ。
公式Instagram【@pierre_taki】
構成/TAKA-HO
記事提供元:週プレNEWS
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