"賃上げムード"も 気づけば3年目。そろそろ実質賃金も上がる......のか? 「みんなの給与明細」2025年 春闘ど真ん中Ver.(エッセンシャルワーカー編)
医療、インフラ、葬儀......社会になくてはならないお仕事の給料は?
「大企業に賃上げが広がれば、自然と中小企業や自営業者にもその波が広がる」と信じられているが、それってホント? ここ数年の春闘では歴代最高水準の回答を得ているのに、実質賃金はいまだマイナス。そんな不思議なニッポンのリアルな賃金事情を全力調査!!【みんなの給与明細 2025年 春闘ど真ん中Ver. Part5】
※本特集に出てくる年収やボーナスは、額面の金額です。また、すべて個人に対する取材によるもので、職種や業界の平均値ではありません。
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■みんなの生活、支えてます! エッセンシャルワーカー●有限会社佐藤葬祭 代表取締役(男/40代後半)
<年収>60万円
<冬のボーナス額>なし【前年比】→
<ベアは?>なし
東京都で葬儀葬式を手がけて八十余年になる。故人が病院で亡くなった場合、たいてい遺族には病院側から遺体の搬送を葬儀屋にお願いするよう指示があり、そこから仕事がスタートする。
流れとしては、遺体の冷蔵保管→遺族との打ち合わせ→斎場の仮押さえ→お坊さんの手配→お通夜→葬儀といった手順で、4~5日以内に行なうのが一般的だ。
代表取締役として、役員報酬は年60万円に設定。他方、葬儀に関する情報発信のためにYouTubeチャンネルを開設。今では8.8万人の登録者数を抱え、役員報酬とは別に年48万円の副収入がある。
●精神科病院 ソーシャルワーカー(女/40代半ば)
<年収>350万円
<冬のボーナス額>なし【前年比】→
<ベアは?>なし
入院前の患者自身や家族からの相談を受けるのがメインの業務。どうすれば施設に入れるかという相談が最も多く、また、患者の社会復帰を支援するためのケアプラン作成も仕事のひとつ。
昨年4月の法改正により、医療保護入院において入院期間の延長をする場合、膨大な資料の提出が必要となり、医師がどんどん辞めているので病院の経営は不安定。
さらに厚生労働省が住み慣れた地域でのケアを推奨し始めたため、精神科病院の入院患者はどんどん退院する方向に進んでいる。おかげでベッド数を満たせず、赤字経営を強いられる病院も多い。
●発達障害支援施設 言語聴覚士(女/30代前半)
<年収>380万円
<冬のボーナス額>30万円【前年比】↑
<ベアは?>なし
発達障害の子供をマンツーマンでケアする仕事。カリキュラムは子供によってカスタマイズしていて、パズルや会話など内容はさまざま。大変だが飽きないし、やりがいを感じている。
親御さんとは同志に近い関係で、子供の成長について感謝の言葉をいただくことも多い。たまに親も発達障害の場合があり、対応に苦慮することはあるが、不満というほどではない。
もともと自分の家族にケアが必要だったため知った職業で、資格があれば全国どこでも働けるし、求人も多いため、将来短時間しか働けなくなっても収入を確保できそうな点は魅力。
●眼科クリニック 医師(副院長)(男/30代前半)
<年収>1200万円
<冬のボーナス額>なし【前年比】転職1年目のため不明
<ベアは?>なし
つい最近、医局を離れて街のクリニックの副院長に就いたら、年収が3倍に増えた。自ら開業し、保険外の治療などに積極的に手を出せばさらに何倍も稼げる可能性があるが、プライベートを充実させたい気持ちもあり、ひとまず現状の職に落ち着く予定。
副院長だが週に3日も休みがあるし、オペ日以外は残業もなし。とても働きやすくて満足している。
レーシック系の最新治療をやるところはやはり儲けているが、普通の開業医はぼちぼち。しかしどこの地域も医師が足りず、特に超高齢化で白内障患者が増えているので、食いっぱぐれることはなさそう。
●訪問看護事業所 ケアマネジャー(男/40代半ば)
<年収>510万円
<冬のボーナス額>30万円【前年比】↓
<ベアは?>なし
都内でケアマネジャーとして勤務。まずは利用者と家族のニーズを把握してケアプランを作成し、生活の質向上を目指した計画を立てる。また、状況に応じて要介護認定を受けるための支援を行ない、介護保険サービスを中心に計画を立案することも。
利用者の状態が変われば、ケアプランも柔軟に調整する必要がある。例えば転倒や病状の悪化があれば迅速に新たなプランを立て、ニーズに応じた看護サービスを提供する。多方面の調整が必要で苦労は多い。慢性的な人手不足だが、小池都政で介護人材に月1万円の住宅手当が支給されるようになったのは幸いだ。
●水道管メーカー 生産管理(男/20代半ば)
<年収>380万円
<冬のボーナス額>40万円【前年比】→
<ベアは?>なし
水道管の製造工場で、ラインの管理を担当。営業から上がってきた発注を、生産状況を把握して現場に割り振る。ただ、現場の作業員はベテランが多く、溶かした鉄を鋳造する作業を長年の勘で見極めたりしていて、入社当初はどれくらいの注文をさばけるかの見当がつかず現場からこっぴどく怒られた。
地中のインフラなので、自分が作った製品がどこでどう使われているのか実感に乏しいが、一方では新規で他社が参入してくるような業界ではないので、当面は安泰だと思っている。最近は水道管の事故が多く、社会に対する責任感が増している。
取材/井澤 梓 伊藤将史 佐藤 喬 田口ゆう 友清 哲 西田哲郎 東田俊介 室越龍之介 茂木響平
文/友清 哲 イラスト/服部元信
記事提供元:週プレNEWS
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