Apple Watch登場前のスマートウォッチ「Pebble」が復活? そもそも衰退した理由とは?
かつて多くのファンに愛されたスマートウォッチ「Pebble」。2012年にクラウドファンディングプラットフォーム「Kickstarter」で登場し、Apple Watch登場前のスマートウォッチ市場で一世を風靡しました。
(画像は「Kickstarter」より引用)
特に初代Pebbleには「長時間バッテリー」「電子ペーパーディスプレイ」「物理ボタン」というシンプルな特徴が備わっており、フィットネス機能などが複雑化している今日のスマートウォッチとは異なる魅力があります。
しかし2016年にその歴史に幕を下ろし、資産の一部はFitbitに買収されました。その後、FitbitもGoogleに買収されたため、PebbleのコードなどはGoogleが所有していました。
そして、米Googleは2025年1月27日(現地時間)、スマートウォッチ「Pebble」のソースコードをGitHubで公開。初代Pebbleの登場から長い年月をかけ、歴史的なスマートウォッチがオープンソース化されたことを意味します。
さらに、Pebbleの創業者はオープンソースとなった同製品をベースに、新たなPebbleの開発に乗り出すことを発表しました。つまり、伝説のスマートウォッチの復活が近づいています。
そこで今回は、スマートウォッチ「Pebble」はApple Watch登場前のスマートウォッチ市場でどのような存在だったのか、改めて振り返っていきましょう。
スマートウォッチ「Pebble」の画期的だった特徴とは
まずはスマートウォッチ「Pebble」の特徴を改めて見ていきましょう。
結論から言えば、最大の特徴は電子ペーパーを搭載していることです。電子ペーパーの採用によってスマートウォッチ登場時に懸念された「バッテリー持ちの悪さ」を完全にふっしょくしたうえで、多くのユーザーが求めていた「安定した通知機能」をiPhone/Android両対応の形で実現したことが画期的でした。
こうした特徴を持つスマートウォッチは2025年現在でも類例がなく、いまでも画期的かつ一定のニーズが見込める製品ではないでしょうか。
電子ペーパー搭載による長時間バッテリー寿命
(画像は「Kickstarter」より引用)
Pebbleは、電子ペーパー(E-Paper)ディスプレイを採用しており、これにより1回の充電で最大7日間のバッテリー寿命を実現しました。これは、当時の他のスマートウォッチが1~2日程度のバッテリー寿命しか持たなかったことを考えると、非常に革新的でした。加えて電子ペーパー搭載により太陽光の下でも視認性が高い点も特徴でした。
たとえば建築現場の作業員や警備員、トラック運転手など「通知はチェックしたいけれど、スマホを操作することはできず、なおかつ外にいる時間が長い」業種の方にとって、実用性が極めて高いスマートウォッチでした。
通知の確認
Pebbleはスマートウォッチのため、LINEやメールの通知確認ももちろん可能です。スマートフォンの充電は意識しても、スマートウォッチの充電を忘れてしまうというのはよくあることです。すると充電が切れたスマートウォッチは「通知をチェックする端末」として役に立ちません。
その点、1回の充電で一週間程度継続利用ができるスマートウォッチで、通知がコンスタントに確認できるのは非常に便利です。
シンプルかつ軽量なデザインと汎用性
Pebbleは手頃な価格(※モデルにもよりますが179ドル~199ドル前後。セールのタイミングを狙うことで国内で1万円前後で購入できるケースもありました)で提供され、質素ながらも洗練されたデザインが多くの支持を集めました。加えて初代Pebbleには物理ボタンも搭載されており、操作性や直感性の高さも人気のポイントでした。
なお、PebbleはiPhone/Androidのどちらにも対応するスマートウォッチだったため、利用可能なOSを選ばなかった点も魅力です。
Apple Watch登場前に話題となった「Pebble」が衰退した理由とは?
Apple Watchの登場以前において、スマートウォッチは「概念そのものが生まれたばかり」という状態でした。
2012年、PebbleはKickstarterでクラウドファンディングを実施し、6万8000人以上から1000万ドルを超える資金調達に成功。これは当時としては画期的な出来事であり、Pebbleが市場に与えたインパクトの大きさを物語っています。つまりApple Watchに先駆けて登場したPebbleは、スマートウォッチの先駆けにして「初めて市場を作った製品だった」と言えるでしょう。
事実としてPebbleが定義したスマートウォッチの機能は、着信やメッセージの受信通知、スマホの音楽コントロール、運動・睡眠トラッキング、文字盤カスタマイズなど、今日のスマートウォッチでは当たり前となったものばかりです。
Pebbleは、その後の数年間で200万台のスマートウォッチを販売し、2億3000万ドル以上の売上を達成しました。2013年には900万ドルの純利益を上げていたPebbleでしたが、2014年頃には収支均衡が崩壊し、2016年にFitbitに買収され、Pebbleブランドは終了しました。
Pebbleは技術力と製品コンセプトには光るものがあり、スマートウォッチという製品をいち早く定義するような役割を果たしました。一方で「リーダー」としてスマートウォッチ市場を牽引し続ける企業体力や資金力には乏しく、一度収支のバランスが崩れると立て直すこともできずに完全に崩壊してしまった形です。
Fitbitによる買収と事業終了について
買収完了後、FitbitはPebbleの事業を一時的に停止しました。Pebbleで全体の40%を占めていたソフトウェア関連業務を担当する従業員だけを残し、その他は解雇することとなりました。
その後、FitbitもGoogleに買収され、Pebbleの技術や資産は散逸しました。つまりPebbleブランドそのものが最終的に終了した理由は「Fitbitのもとでブランドを継続できず、Fitbitそのものも買収されたことでPebbleの資産や技術も散逸する状態になったため」と言えます。
Fitbitを買収したGoogleは、スマートウォッチ向けOS『Wear OS』を展開してはいるものの、Pebbleの特徴であった電子ペーパー搭載やシンプルな通知機能、iPhone/Android両対応といった特徴は搭載されていません。
そのためFitbitのもとでも、GoogleのもとでもPebbleの資産は有効活用されなかったと言えるでしょう。
Pebbleのオープンソース化について
かつてスマートウォッチ市場を牽引したPebble。冒頭で述べた通り、Googleはそのソースコードを公開し、新たな道筋を歩み始めました。
今回公開されたのは、Pebbleオペレーティングシステムのほぼすべてのソースコードで、通知、メディアコントロール、フィットネストラッキング、カスタムアプリとウォッチフェイスのサポートなど、スマートウォッチの基本機能が含まれます。ただし、今回のリリースでは、一部の独自コードは除外されています。
Pebbleの創業者であるミジコフスキー氏は、自身のブログで新しいPebbleの開発を予告。新モデルでは、既存のPebbleアプリや文字盤との互換性を維持しつつ、オープンソースのPebble OSを採用する予定とのことです。
ミジコフスキー氏は、今回のプロジェクトは、過去の経験を踏まえ、資金調達は行わず、小規模なものとして開始するとのことです。そのため、新しいPebbleに興味を持つ人々に対し、rePebbleのウェブサイトへの登録を呼びかけています。オープンソースのPebble OSを基にどのようなスマートウォッチが登場するのか、今後の展開が注目されています。
※サムネイル画像(Image:「Kickstarter」より引用)
記事提供元:スマホライフPLUS
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