ラッセル・クロウが再び悪魔と対峙 依存症に苦しむ俳優が直面する恐怖 『ザ・エクソシズム』
飯塚克味のホラー道 第111回『ザ・エクソシズム』

一昨年の夏、スマッシュヒットとなった『ヴァチカンのエクソシスト』(2023)から早2年、再びラッセル・クロウが悪魔と対峙する映画がやって来た。このタイトルで、このポスタービジュアルなら誰もが、ラッセルが再び神父となって、悪魔払いをする映画だと思うだろう。だがちょっと違うのだ。映画の魅力は、自分が思い描いていた作品と違うという“驚き”もあるので、そうしたケースを期待される方は、どうかここで読むのを中断して、即、映画館に向かってほしい。
本作の物語は、意外なものだ。ある映画のセットで神父役の男が自殺をする。代役を依頼されたのは、長年依存症に苦しんできて、この映画への出演を機に復活を目指すアンソニー・ミラー(ラッセル・クロウ)だ。突然、戻ってきた娘との関係を修復することにもストレスを感じつつ、役になりきるため台本を読み込む日々。だが依存症の後遺症か、セリフをよく忘れたり、思い通りの演技ができず、監督や共演者にも不安がよぎり始める。だがそれでも撮影が続く中、アンソニーによからぬ兆候が見え始める。彼は本当に悪魔に憑かれてしまったのか?
と、ここまで書くと、本作がエクソシストを演じる俳優の苦難を描いた人間ドラマのように見えるだろうが、後半になるに従って、徐々にホラー映画の顔を見せてくる。だが、困ったことにホラー描写が盛り上がったところで、そのシーンが終わってしまい、数日後の別の流れに移ってしまう。最後の最後までどういうことなのか、よく分からないまま引っ張られるという、不思議な展開を見せる。

本作の監督は、長年俳優として活躍し、2015年の『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』で製作総指揮、脚本を担当したジョシュア・ジョン・ミラー。今回が初監督となる。因みに『エクソシスト』(1973)と『エクソシスト3』(1990)でカラス神父を演じたジェイソン・ミラーの息子である。製作にはリブート版『ハロウィン』シリーズ(2018~2022)のビル・ブロックや、『スクリーム』シリーズ(1996~2023)の脚本家で知られるケヴィン・ウィリアムソンが名を連ね、顔ぶれ的には申し分ない。しかも共演には『アバター』シリーズ(2009~)のサム・ワーシントンまで出演している。
ラッセル・クロウのホラー演技は『ヴァチカンのエクソシスト』でもいかんなく発揮された通り、不気味そのもの。暗い部屋に娘が帰宅して明かりをつけたら、椅子に座っていた、なんて何気ないシーンでも、ドキッとさせられる。『アオラレ』(2020)の頃から、太った体型を利用して、怖いキャラを作り出すのが上手くなってきているようにも感じられるはずだ。
恐らくは、いろんな方向から横やりが入ったかもしれない本作。だが、おのれのやりたい道を貫き通したミラー監督の姿勢には、頭が下がる思いだ。嫌いな人は嫌いだろうが、繰り返し見直すと、不思議な味わいが出てくる珍作でもある。もしかしたら何年か経ったらカルト作になっている可能性も感じられるはずだ。スクリーンで観ておくことを薦めたい。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【作品情報】
ザ・エクソシズム
2025年2月21日(金)より新宿武蔵野館他でロードショー公開
配給:インターフィルム
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記事提供元:映画スクエア
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