日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『ANORA アノーラ』をレビュー!
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ニューヨークのストリップバーで働く女の子が、客として訪れた大富豪のロシア人のバカ息子に見初められ、勢いで結婚してしまう。
が、「そんな結婚は無効だ」とバカ息子の両親は激怒、叱られるのを恐れたバカ息子は逃走、ストリッパーの女の子は大富豪の手下のゴロツキに連れられてバカ息子の行方を追う羽目になる。
要約するとこのような話なのだが、これまでも「しょうもない人々」をグラデーション豊かに描いてきたショーン・ベイカー監督が、今回もその手腕を遺憾なく発揮して抱腹絶倒のスクリューボール・コメディに仕立て上げた。
というか実際本作はきわめて伝統的なスクリューボール・コメディで、同ジャンルの代表作『或る夜の出来事』(1934年)を裏返しにしたようなところがある。
これまでの作品と同様、キャラクターに必要以上の「深み」が無理に与えられていないのも良い。だが、しょうもなく底の浅い人間にだってそれなりの感情はあるし、他人に対して「悪いことしたな......」と思うことだってあるのである。
そういう部分をありのまますくい上げることが出来ている映画は少ない。感情が迸るラストは賛否が分かれると思うが、筆者は少し余計に感じられた。
STORY:ニューヨークで暮らすストリップダンサーのアノーラ。職場のクラブでロシア人御曹司イヴァンと出会い、衝動的に結婚。幸せ絶頂のふたりだが、ロシアにいるイヴァンの両親は結婚を阻止すべく、屈強な男たちを送り込んでくる
監督・脚本・製作・編集:ショーン・ベイカー
出演:マイキー・マディソン、マーク・エイデルシュテイン、ユーリー・ボリソフほか
上映時間:139分
全国公開中
記事提供元:週プレNEWS
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