注目の4人の俳優が競演した、 “友情”を描く青春ファンタジー「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」
2019年の初演以来、何度も再演されてきた鈴木おさむ原作の朗読劇を、FANTASTICSの八木勇征、井上祐貴、櫻井海音、IMP.の椿泰我主演で実写映画化した作品が、2月21日に公開された。18歳を迎えて、人生で一回だけ魔法を使えることになった4人の青年が、人生の岐路に立ちながら、何に魔法を使うのかの選択をしていく青春ファンタジーだ。その作品の魅力を深堀りしてみよう。
村に伝わる、18歳になった男子が知る秘密とは?
舞台は美しい自然に囲まれた小さな田舎の村。ここで育ったアキト(八木勇征)、ハルヒ(井上祐貴)、ナツキ(櫻井海音)、ユキオ(椿泰我)の4人は18歳を迎えて、村の重鎮・テツ爺(笹野高史)から呼び出され、村の秘密を聞かされる。それは「18歳になった村の男たちは、20歳になるまでの間に人生で一度だけ魔法が使える」というもので、ただ一つ「命にかかわることに魔法を使ってはいけない」というルールがあった。最初は信じられない4人だったが、それぞれが人生の岐路に立ち、次第に魔法と真剣に向き合う時が訪れる。
それぞれが事情を抱えながら、魔法の使い方を見つけていく
最初は自分の欲望を満たすことや、苦手な食べ物や昆虫をなくすことに魔法を使おうと言い出す4人だったが、かつて同じ道を通り抜けてきた父親たちから「魔法で誰かを幸せにできるといいね」、「何に使ってもいいが後悔するなよ」といったアドバイスを受けて、1回のチャンスをどう使うか真剣に考え始める。物語は小学校の時から親友である4人の友情が中心で、魔法も彼らの関係性と密接に絡んだものになっていく。
一方で4人は魔法でも使って、何とかしたい状況を抱えている。アキトは音楽大学への受験を希望して、その難関を突破するのに不安を覚えている。ハルヒは生まれつき心臓の病気を患っていて、いつ病状が悪化するかわからない。ナツキはクラブチームに入っても通用するほどサッカーの才能があったが、造園業をしている父親が病に倒れ、サッカー選手の道をあきらめた。そしてユキオは建設会社を営む父が、かつて村の自然を破壊するダム工事に加担した過去があり、そのことで周囲から批判にさらされている。誰もが自分の今の状況を変えたいと願っているが、そのために魔法を使っていいのか苦悩する。アキトは自力で音大に合格して見せるといい、「魔法でずるをするのはよくない」とみんなに言う。またハルヒは小学1年生の時、それまで友達がいなかった病弱な自分にアキトが声をかけてくれ、その後4人そろって桜の花びら舞い散る公園で鬼ごっこをしたときに、僕はみんなに魔法をかけてもらったんだという。ハルヒにとっては、自分だけでは叶えられない幸福を、誰かが味合わせてくれることこそが魔法なのだ。そんなハルヒの魔法に対するイメージが、4人の中に自然と芽生えていく展開が心地よい。
主演の4人が、キャラが持つ心情を見事に表現して好演!
挫折を覚えながらもピアニストの道を目指すアキト役の八木をはじめ、病気を抱えているからこそ、常に友人のためを思うハルヒの優しさを絶妙のバランスで表現した井上、友情ばかりを優先するみんなに、もっと自分の欲望に正直でもいいんじゃないかと問いかけるナツキ役の櫻井、そして彼らを結び付けるペースメーカー的な役割を果たすユキオの椿と、4人の演技のアンサンブルが見事。物語は彼らが魔法を使えるタイムリミットである、20歳までの2年間を描いているが、4人の人生のうねりを、これが劇場映画初監督の木村真人が感情豊かに描き出している。
また作品で目を引くのが、主人公4人と父親との関係性だ。彼らは病気のハルヒを除いて、母親がいない。ここではかつて魔法を使ったことがある父親たちが、彼らの人生を見守るキーパーソンになる。自分もプロのピアニストを目指しながら、夢に破れたアキトの父に田辺誠一、悔いのない人生の日々を送ってほしいと願うハルヒの父に高橋洋、ダム建設に絡んだ自分の行動が息子を苦しめていることに悩むユキオの父にカンニング竹山、そして病で自分の体が利かなくなったことで、息子の夢を奪ったことがやりきれないナツキの父に阿部亮平。それぞれ人生で苦みを味わってきた父親たちの、ちょっとした言葉が息子たちを前へ進ませる助けになるのだ。その父と息子に特化した親子関係が、観る者の胸を打つホームドラマにもなっている。
原作者・鈴木おさむが込めた、日常の幸せへのメッセージ!
原作者の鈴木おさむは、2024年3月末日をもって放送作家業と脚本家業からの引退を宣言したが、彼が辞める前にどうしても映像として作っておきたかったのがこの映画。そのため彼は引退直前に、自ら脚本を書き上げたとか。最近のCMで彼は、新型コロナウイルスに2度感染し、その間子供たちと触れ合えなかった経験を経て、当たり前の日常に感謝するようになったと語っている。この映画では、友と過ごせる小さな幸せのありがたさを、4人の強い友情の結びつきによって映し出している。人が人の心がつながることによって生まれる感動。その素晴らしさを、多くの方に感じていただきたい。
文=金澤誠 制作=キネマ旬報社

「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」
2月21日(金)より TOHOシネマズ日比谷ほか 全国公開
2025年/日本/110分
監督:木村真人
原作・脚本:鈴木おさむ
主題歌:「春舞う空に願うのは」 FANTASTICS from EXILE TRIBE
エンディングテーマ:「魔法みたいな日々」 FANTASTICS from EXILE TRIBE
出演:八木勇征、井上祐貴、櫻井海音、椿泰我( IMP.)、カンニング竹山、阿部亮平、髙橋洋、馬渕英里何、平野宏周、工藤美桜、笹野高史、田辺誠一
配給:ポニーキャニオン
©2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会
公式HP:https://waraumushi.jp/
記事提供元:キネマ旬報WEB
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