“クラファン”も利用しプロテスト合格へ 22歳・伊藤花の決断「できることは全力で」
2025年は心機一転で、飛躍の一年に―。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のプロテスト合格を目指す伊藤花は、「ゴルフ面でも、やりたいことがたくさんあって。去年から種を撒いて、いろいろ考えながらやっています」と、明るい声でこのオフの進捗状況を明かす。
大学ゴルフの名門・東北福祉大を、昨年の春に卒業。そして初めて挑んだプロテストは、8月に受けた第1次予選こそ通過したが、9月、岐阜での2次で敗退した。
「去年は調子の浮き沈みが激しく、1次でピークを迎え、そこを通ったら気持ちが緩んで調子が下がってしまいました。あとは、『プロテスト、プロテスト』って、それだけで頭がいっぱいになってしまって…。敏感になり、精神を削っているような。余裕を持てるメンタルが欲しいですね」
3年ほど前に痛めた古傷の右股関節もゴルフに悪影響を及ぼし、合格は持ち越しに。ショットの精度を上げることに注力しているこの冬は、それと同時にトレーナーとともに故障を克服するためのトレーニングにも汗を流している。もちろん、すべてツアープロとして戦う未来を切り開くためだ。
学生ゴルフを終え、昨年はプロテスト合格を目指す25歳以下の選手が競う『マイナビ ネクストヒロインゴルフツアー』(以下、マイネク)でも戦った。「上位にいる選手はプロテストにも合格している人が多い。年々、レベルも上がってますし」と“現在地”を測るにはうってつけの場。それに加え、「(中継用などの)カメラも意識してゴルフする環境自体に慣れるチャンス。そこで実力をどう発揮するか、そこもメンタル面が左右する」という部分にも魅力を感じている。
そんな大きな変化があった昨年以上の改革を、今の伊藤は求めている。そのひとつが“自立”。「人との出会いも多いし、一緒に練習できる友達もたくさんいる。関東に引っ越したいと思っています」。大学卒業後、金銭的なことも考え三重県にある実家に一度は戻ったが、再び親元を離れることを決めた。自己管理や、横浜に拠点を置くコーチの井上透氏のもとに通うことも考慮して下した決断だ。
ただ、この環境でゴルフに集中するためには支援が不可欠。そこで乗り出した、もうひとつの新たな試みが『クラウドファンディング』の立ち上げだった。
「いろいろと迷ったけど、プロテスト合格へ、自分でできることは全力でやりたかったんです。インスタのDM(ダイレクトメッセージ)や、両親の友人、私の友達、クラウドファンディングのページのメッセージで『寄付したよ、頑張ってね』なんて言ってもらえたり。それを見るたび、応援してもらえてることを実感して頑張ろうって思えますね」
このクラウドファンディングも、マイネクの試合会場で聞いた話がきっかけ。新たな取り組みが、次のステップへとつながっていることも感じられる。支援金の使い道は、年間200万円ほどかかる遠征費や、プロテスト受験のための費用などに使う。返礼品として、ラウンドレッスン会などを用意しているが、その時には趣味の裁縫を生かした“手作りグッズ”を手渡すことにも意欲的。「量産します!(笑)」と、気持ちを込めた一品も添え、感謝を伝えていくつもりだ。
2002年3月11日生まれの伊藤の同学年には、山下美夢有、西郷真央、笹生優花と、すでに日本を飛び越え米国で活躍する選手もいる。その姿は、「めちゃくちゃ刺激になってました」と、気持ちを高めるに十分すぎるもの。
「大学4年生の時、(東北福祉大で)同級生の佐藤美優のキャディをミヤテレ(ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン)でやった時、山下美夢有ちゃんに練習場で『同級生が少ないから早く(ツアーに)来てね』って言われて。ツアー選手になりたい気持ちがさらに強まりました」
その意味では大学進学は、遠回りになったかもしれない。だが、佐藤にとって仙台での4年間は「行ってよかったと心の底から思います。高校時代は3年生まで女子部員が私ひとりだったので、同年代の女の子たちのレベルを体感しながら練習することがなかった。大学で友達に助けられて、みんなのおかげで成長できたし、いい環境でした」と、大きな力になっている。
「人見知りもしないし、新しい人に出会って、いろいろなお話を聞くのも楽しみ。本当にゴルフが好きで、頑張っている人を見るのが好きな人たちと出会えるのが楽しみですね」
クラウドファンディングでの支援の輪がさらに広がり、多くの人たちと出会えることにも胸を躍らせている。「去年はネクストヒロインに出ることが目標になってしまって、もったいない時間の使い方をしたな、と。今年はプロテストまでに1勝を挙げて、プロテストでも最終まで進んで合格することが目標です」。ゴルフが充実し、息抜きの裁縫も“発注”が止まらないという、うれしい悲鳴だって大歓迎だ。
「自分のなかでは、高校生のころから毎年レベルアップしてると思えるし、低下してると感じたこともありません。去年より絶対に成績が良くなると信じて、課題を持って取り組んでます」。こんな想いも、背中を押している。明るく、ハキハキと、気持ちを自分の言葉で伝える姿が印象に残る。
その名前には「お花のように美しく、人生が華やかになって欲しい」という両親の願いが込められている。2025年は、大輪のキレイな花を咲かせる一年にしたい。(文・間宮輝憲)
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