「ピークタイムは5割がキャンセル!?」 フーデリ配達員がこっそり教える"必食のコツ"
回転数が収益に直結する配達員にとって、受け取りに時間のかかる店舗は敬遠すべき存在だ
フードデリバリーにおける配達のキャンセルや1時間以上の遅配が蔓延化している。報酬の低迷で配達員が受注に気乗りしないことがベースとなり、店舗側の都合で注文品が出来上がるまでに待たされたり、商品によって運びづらいといった側面がその傾向を加速させている。待たずに確実にフーデリを活用できる必食法を、配達員視点から探る。
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■待ち時間5分ですらキャンセル!デリバリーの注文が殺到する日曜の昼下がり。Uber Eats(ウーバーイーツ)のオファーを受けて、配達員の吉永健司さん(43歳、仮名)は都内ターミナル駅近くの牛丼店にバイクを駆って到着した。
しかし、目当ての商品はまだ出来上がっておらず、店員に尋ねると5分程度待たされるとのこと。1時間あたりに3~4件をこなす吉永さんにとっては、たったの5分の待機ですら時間の無駄。おもむろにスマホを手に取り、問答無用でオファーをキャンセルした。
「休日のピークタイムだったら、出来上がってなければ運びませんね。ウーバーは店舗での受け取り前に配達員の都合でキャンセルできるので都合がいい。キャンセルした時点では、お客さん側からバッド評価を付けられませんし。ボケーっと待っているよりも、新しいオファーを拾う方が時間効率がいいんですよ。休日だと注文を受けても結局、5割はキャンセルしますね」(吉永さん)
■1時間放置の"熟成"が頻繁吉永さんがキャンセルした注文に、別の配達員が新たに応じたとしても、出前館やWOLTなどからより報酬が高くて近距離のオファーが飛び込んでくれば、再びキャンセルとなる。誰も受け取りにいかずにオファーが宙に浮く事態が頻発している。
「1時間近く放置されるのはザラですね。こういう商品を"熟成"なんて言います。長時間経過した商品の配達報酬は高くなるので、その段階でオファーを受け取って運べばいいんです。配達員としては出来立てを運びたいという気概はなく、あくまで報酬が高くて短時間で済む仕事をチョイスしていくだけですから。
配達員が誰も取りにいかないので、店側が注文をキャンセルするなんてケースもよくあります。あと以前は通用した配達の裏技があって、時間がかかりそうな店の場合は、先ず対象の店舗に行ってスマホのGPSを止めちゃって、別のフーデリ会社の仕事を済ませてから、再び向かうということもありました。
これだと、客側は配達員がずっと店舗で待機しているように見えるので、ダブルブッキングがバレずに手堅く仕事をこなせる。結果的に届けるまでに時間をかけさせちゃうんですが」(同前)
■ケンタ人気の一方で中華系とピザは敬遠吉永さんによれば、チェーン店によって待たされる時間の長短の傾向があるという。
「ケンタッキーは店に行けば大抵出来上がっているので、オファーを受け取りやすいですね。あと、スーパーマーケットの配達も増えているので、オオゼキあたりも受け取りがスムーズ。
中華料理はどこも待たされるイメージが強い。店の回転率を上げたいのでしょうが、店内の注文が優先されて待ちぼうけを食らいやすい。餃子の王将は特に敬遠されがちで、10袋ぐらい積み重なっていることもあります」(同前)
配達員にはオファーを受けた段階で商品名が告知される。だから、注文品によって運びにくさから、キャンセルに至るケースがあるという。
「運びにくい商品はモチベーションが上がらないので、別のオファーが入ればキャンセルしがち。例えば、ピザは商品が大きいのでバッグを拡張させなければならず、配達後に元に戻すという作業があって面倒。イタリアンならパスタの方が良いです。
あとは、ラーメンのような汁物も、店が丁寧にラッピングしていないとスープがこぼれてしまうことがある。麺が食べたいのであれば、つけ麺やまぜそばの方が受注しやすいですね。ドリンクでもスタバはフタがラッピングしてあるのでこぼれにくくて都合がいい」(同前)
■同一チェーンでも店舗間で運びやすさに差が同じチェーン店であっても運びやすさは変わってくる。マクドナルドのような大規模チェーンであれば、一つの駅周辺に複数の店舗があるが、店によって配達の手間は異なる。
商品受け取りのために店頭で自転車を止めていたところ「違法駐輪」で警察に注意される配達員
「路面店であれば受け取りが楽だけど、駅ビルなどの商業施設だと取りに行くのが面倒だし、駐禁でキップを切られるリスクもある。お客さんからすれば、注文の段階で店舗を見定めた方がいいですね。
他にも、アプリの仕様の問題なんだけど、自宅からすぐ近くに支店があるはずなのに、遠くの支店で注文してしまうケースが多い。都内で吉野家の牛丼を運ぶのに7~8キロかかったこともあります」(同前)
ピークタイムを避けるのも一つの手段だ。
「昼は11時半から13時。夜は18時から20時に集中する。寿司のように熱々で食べるわけではない商品や、コンビニ弁当のようにレンジでの温めが前提の商品は、ピークタイムの前に注文しておいた方が良いですね」(同前)
都内のオフィス街におけるランチの激戦は知られているが、社会に浸透してきたフードデリバリーにおいても配達員の選球眼が高まり、需給バランスが変容している。食事にありつけるためには、ユーザー側にも戦略が求められているのだ。
文/大木健一 写真/奥窪優木
記事提供元:週プレNEWS
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