佐々木朗希投手がドジャースを選んだ理由を考察【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第150回
佐々木朗希について語った山本キャスター
佐々木朗希投手がMLBのドジャースとマイナー契約を結ぶことが決まりました。
岩手県出身の佐々木投手が大船渡高校からドラフト1位でロッテに入団したのは2019年のこと。学生時代から160キロを超える速球で注目を集めていましたが、プロ入り後も着実に成長を遂げ、2022年4月10日にはZOZOマリンスタジアムでオリックスを相手に完全試合を達成。名実ともに球界を代表する投手となりました。そんな佐々木投手がついに、海の向こうで名門チームの一員となります。
ドジャース幹部は佐々木投手のローテーション入りを期待していると明言しています。ドジャースはリーグ屈指の強豪で、昨年もワールドシリーズで栄冠を手にしています。あらためてなぜ、佐々木投手の獲得に乗り出したのでしょうか。
他球団からしたら、ドジャースは羨(うらや)むべき戦力を持つチームです。中でも野手は、オールスター級の選手たちが勢揃い。しかし昨年の、特に投手陣を振り返ると、ポストシーズンの最後はボロボロで総力戦でした。
昨年はワールドシリーズを制したドジャースですが、実は「投手の戦力は野手と比べて見劣りする」などとまことしやかにささやかれていました。そんななか、このオフも生え抜きのウォーカー・ビューラー投手が退団し、ジャック・フラハティ投手もFAに。
昨年は、シーズン途中に復帰した山本由伸投手がチームにとって救世主となり、ワールドチャンピオンに欠かせない存在となっていました。しかし裏を返せば、メジャー1年目の選手の復帰を必要不可欠とするほど、投手陣の戦力は枯渇していたとも言えます。
昨年シーズンも強さを発揮したフィリーズは、ドジャースと同じくオールスター級の野手が並ぶラインナップはもちろんですが、リーグ屈指の投手陣で知られています。先発の柱が3人いて、ブルペン陣も充実。ここ数年は常にリーグ屈指の強豪チームとして評価が高く、昨年も大方の予想通りポストシーズンへと進みました。投手が充実するとチームは強くなることを、あらためて証明するようなシーズンが続いています。
そうなると、ドジャースが常勝軍団であり続けるためには先発投手の駒が足りていない、という意見は衆目の一致するところ。今年は投手としての大谷選手や、タイラー・グラスノー投手の復活も決まっていますが、ケガ明けの投手が活躍するかどうかは未知数です。
背番号11のお礼に、佐々木投手はロハス選手に何を贈るんでしょうか。
今オフも積極的に投手の補強に積極的に動きました。まず佐々木投手の獲得より前に、同地区のライバル球団であるジャイアンツからブレイク・スネル投手を獲得。これまで2度のサイヤング賞を受賞、昨今のMLBを代表する大投手の補強でひとつ大きな柱が建ったことにより、戦力アップは間違いありません。
さらにはつい先日、ブルペン陣では、同じく同地区のライバルであるパドレスからテイラー・スコット投手を獲得。ブレイク・トライネン投手の再契約にも成功し、層の厚さを増しています。
そんな投手陣に加わることになり、日米から期待が集まる佐々木投手ですが、懸念点もあります。それは、これまでにフルシーズン投げたことがないこと。過酷なMLBの環境にどう順応していくのかを考えると、ドジャースを選んだ理由が浮かび上がります。
ドジャースは人気球団ではありますが、お金はもちろん、練習環境がいいことで知られていて、若手の育成にも定評があります。チームスタッフなどの人材や、選手が能力を最大限に引き出すための設備などが充実していることを考えても、異国の地で挑戦するにあたっては最良の環境を選んだともいえます。さらに、厚さを増した投手陣が仲間にいるわけですから、安心して実力を発揮できるかもしれません。
個人的には、大谷選手がエンゼルスを選んだように、あまり上位にこない球団でチームの顔となる活躍をしてほしかったという思いもあります。ただ、ドジャースの充実した環境に身を置いて、実力をさらに上に押し上げていく佐々木投手の姿は、もっと楽しみですね。
それにしても、ドジャースというMLBを象徴するような球団に日本人が3人も在籍している光景を、生きているうちに見られるなんて思いませんでした。
佐々木投手は、日本では本当に特別な選手でした。余談ですが、佐々木投手が完全試合を達成した試合を、姉が現地で見ていました。私はニュース速報で完全試合ペースだと知り、家族とテレビ中継で見ていたのですが、姉によれば現地の雰囲気はこれまで感じたことがない異様な雰囲気だったそうです。観客が固唾を飲んで投球を見守り、1球の行方にスタジアムがどよめく。そんな投手はなかなかいません。佐々木選手は、そういう星のもとに生まれた特別な選手なのでしょう。
MLBの中でも特にスペシャルな選手たちが集まるドジャースで、どんな活躍を見せてくれるのか。佐々木投手の活躍はもちろん、チームの中での存在感にも注目したいと思います。
それではまた来週。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作
記事提供元:週プレNEWS
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