ウーバーイーツ配達で行った深夜の店で飛び交うキャスト同士の深い会話【チャリンコ爆走配達日誌】
最近は深夜の配達でサパークラブに行くことが増えました
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第84回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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以前から何度も触れていることですが、最近はランチタイムのウーバーイーツ配達の注文が減少しています。おそらく、注文から商品が届くまでの時間が読めないことが要因と思われます。私の配達するエリアはオフィスが多いので、お昼の注文減少の影響は大きく、10時30分から13時30分までの間の稼ぎは以前の3割減になりました。
ウーバーイーツの配達はバイトと違って、自分の好きな時間にできることや時間のかかりそうな配達依頼を断ることができるので、収入が3割減るだけなら配達をするメリットはあります。
ですが、お昼休みの終盤、12時45分以降にオフィスに届ける案件はBAD評価がつけられやすく、最近はBAD評価の多い配達員の画面をスクリーンショットに撮ってXなどで配達員のアカウント名を消さずに公開する方もいます。そんなわけで、バイクよりスピーディーに配達できない自転車配達員の私は最近、平日のランチタイムに配達をすることはほぼなくなりました。
なので、主に配達をしている時間帯は22時から朝5時が中心。今の季節は特に冷え込み、夜中に稼働する配達員の数がグッと減るため、いい感じに配達依頼が舞い込みます。さらに夜中に注文する方は「こんな時間に配達員がマッチングしてラッキー」「時間がかかっても届けばいい」と考えている方が多いのか、BAD評価をつけられることはほぼありません。
そんな深夜の配達で受け取りに行くのが「サパークラブ」と呼ばれるお店。ホストやホステスの方が勤務後にお客さんと出かける、いわゆる「アフター」で使いやすい店で、営業時間は深夜から早朝。ガッツリ系のメニューがある料理自慢の店も多く、都内で深夜の配達をしていると、雑居ビルの中にあるサパークラブの扉をよく開きます。
深夜にウーバーイーツのサービスを行なっているガッツリ系の店が少ないのか、依頼の多くは2、3件分の料理を受け取って配達に行くというもの。ただ、サパークラブは料理店のように調理スペースが広くないので、店に到着してもまだ1件分しか料理が完成していないことがほとんど。そこでお店の片隅で料理の完成を待つことになります。その間、各テーブルからさまざまな話が耳に入ってきます。
アフターで利用するために作られたお店なので、深夜2時ぐらいまでは、お金を出す人の話をじっくり聞く、話を盛り上げる、口説こうとする感じを上手にかわす......などなど、おそらくキャバクラなどの店でも展開されていると思われる会話が各テーブルから聞こえてきます。
それが3時ぐらいになると、テーブルにつくのがホスト同士、ホステス同士という組み合わせとなり、勤務する店に対する不満や付き合っている異性に対する相談といった話に変わります。
よく聞くのが「店長がクズ」「付き合っている人がクズ」といったクズトーク。店長に対しては「あからさまにひいきしているキャストがいる」「報連相が適当」、付き合っている方に対しては「別れた方がいいのか」「金を貸すべきか」「相手の性癖のオリジナリティがすごい」といった話をよく耳にします。
中でも印象に残っているのは「別のお店に移籍するべきか」という相談。どうやらコンセプトカフェと呼ばれる、中世のヨーロッパといった歴史上の時代の世界から、人気アニメの中のファンタジーの世界まで、さまざまな世界の空気を楽しむことができる店で働く人同士の会話のようで、お店が再現する世界観について熱く語っています。そこでこのような感じの会話が。
「私、〇〇(キャラクター名)は大好きで、コスプレもしてますが、〇〇が大好きな△△(食べ物の名前)が苦手で。お客さんに『大好きなんだろ、ひとつあげるよ』ともらうことが多いんですけど、食べた後にあのキャラのような笑顔ができないんです!」
「もともとメイドカフェ出身だし、メイドの衣装も好きなので、メイドカフェに戻るべきでしょうか」
また、店長に対する愚痴ではこんな話も。
「お店でやるイベントが『ラヴィット!』で紹介したゲームばっかり。店長、録画して見てるだろ」
「『店にビリビリイスを置こう』とか言い出したら、店やめる」
アフターに使われることが多い店なので、お客さんに対する愚痴を聞けることはありませんが、普段耳にすることがない言葉のキャッチボールが繰り広げられるので、料理の完成までに時間はかかりますが、私はサパークラブからの配達依頼は大歓迎です。
文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明
記事提供元:週プレNEWS
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