ゴルフが下手になったのは目の老化のせい⁉ 「ショートゲームで距離感が合わない」「3パットが増えた」人は危険信号
「目の老化によって、ゴルフがグンと下手になる」と話すのは、眼科専門医で医学博士の平松類先生。なぜ目の老化がゴルフに影響を及ぼすのだろうか。
「目をつむって片足立ちするとフラつくように、視覚からの情報量が減れば体を真っすぐ保てません。微妙な傾斜が分かりにくくなりますし、スイングも不安定になります」
目の老いといえば、代表的なのは老眼だ。手元が見えにくくなる現象と思いがちだが、予兆は別の症状として現れるという。
「ピンやボールなど見たいものに視線を合わせたとき、ピントが合うまで時間がかかるようになります。こうした目の老化は、個人差はありますが35歳ごろからスタート。それがだんだんひどくなり、手元にピントを合わせられなくなるのです」
目の機能が衰えれば、当然、距離の確認やグリーンでラインを読むのも苦手になる。
「見えないものを一所懸命見ようとすると、脳も疲労します。するとプレーが雑になりますし、帰りの運転もつらく感じるようになります。さらに視覚からの情報量が減ると、脳が処理する情報量も激減し、認知症になりやすくなります」
『見える』をキープすることは、スコアアップだけでなく、ゴルフ寿命の延長や認知症予防にも役立つというわけだ。
そして、今起こっているミスの傾向から、目にどんなトラブルが起きているのか予想できるという。自分に多いミスショットから、目の状態を探ってみよう。
■ショートゲームが苦手になってきた人は老眼が進行中⁉
老眼は、目のピントを合わせる働きをしている「毛様体筋(もうようたいきん)」が衰え、レンズ役の「水晶体」が硬くなることで、手元のピントを合わせにくくなる現象。手元だけでなく、「ピンを見て距離を測る」「アドレスしてボールを見る」など、遠近を切り替える際もピントを合わせるのに時間がかかる。その結果、特にショートゲームの距離感が合わなくなり、グリーンのラインを読み違えるなどのミスが起きやすい。
【チェック&対策】
指の腹を自分に向けて人差し指を立てる。指を前後に動かし、指紋がはっきり見える位置をチェックしよう。その距離が30cm以上なら、老眼が進行している。「老眼鏡に頼ると、老眼が進行する」と考えるのは間違い。速やかに老眼鏡や遠近両用眼鏡を作り、自力でピント合わせをしないですむようにするのが最適の対策だ。
■グリーンの起伏が分からない人は加齢黄斑変性を疑って!
「黄斑(おうはん)」というのは網膜の中心にある部分で、視力機能の中枢を担っている。加齢により黄斑にシミができ、視界が歪んだり、視界の中心が暗く見えたりするのが加齢黄斑変性だ。平らなグリーンなのにうねって見える、グリーンやフェアウェイの起伏が見えにくいと感じたら、危険信号。リスクが高いのは高齢者、男性、喫煙者。遺伝的要素もあるので、家族が加齢黄斑変性という人は気を付けたい。
【チェック&対策】
加齢黄斑変性が厄介なのは、片目ずつ発症するため気付きにくい点。進行すると失明の恐れもある。月に1回程度、カレンダーやタイルなど、格子状のマス目を、片目ずつ見てチェックしよう。マス目が歪んで見えたり中心が暗く見えたりしたら眼科を受診すること。目薬や注射など、進行を止めたり遅らせる治療を受けられる。
■ロストボールが増えてきたら白内障の治療を検討しよう
白内障は目の「水晶体」のたんぱく質が白く濁り、まぶしく感じたり、ものが二重に見えたりする病気。色の差が見えにくくなるのが特徴で、グリーンとカラー、フェアウェイとラフの境目などが判別しにくくなる。ちなみに、白内障の手術をしたゴルファーの大半は、「打った球がよく見える」と驚くそう。裏を返せば、球の行方を追えずロストボールすることが増えてきたら、白内障が進行している可能性が高い。
【チェック&対策】
夜、月を片目で見たときに、二重に見えるかどうかが簡単なチェック方法。治療は、濁った水晶体の代わりに人工のレンズを入れる手術を行う。多焦点レンズなど、手元も遠くも見えるレンズを選ぶことも可能だ。手術の目安は視力が0.7を切ったらといわれるが、「不便を感じるから早く手術する」など、タイミングは自分で決められる。
■ハザードを見落としやすくなったら緑内障の検査を!
緑内障は、日本における失明原因1位の病気。目の眼圧が高くなることで、視野が狭まっていく。片目ずつ、端から少しずつ視野が欠けていくため気付きにくいのが特徴だ。広いフェアウェイだと思って打ったら、実は右にバンカーがあったなど、あるはずのものが視界からスポッと抜け落ちることも珍しくない。また、欠けた視野で見るため疲れやすく、ラウンド後半の集中力が落ちやすい。
【チェック&対策】
緑内障は自分で気付きにくく、視野が大きく欠損してからようやく気付くというケースも多い。眼底検査である程度見つけることができるので、定期的に検査を受けよう。ちなみに緑内障を放置して治ることはない。進行を遅らせる目薬はあるが、根本的な治療法は確立していないという。早期発見を心がけよう。
解説/平松 類
ひらまつ・るい/二本松眼科病院副院長。眼科専門医・医学博士。昭和大学医学部卒業。日々忙しく診療にあたりながら、目の不調や病気の知識を分かりやすく伝えるため、テレビや雑誌への出演、講演を精力的に行っている。『1日3分まちがいさがしで目がよくなる! ガボール・アイ』(SBクリエイティブ)など著書多数。近頃は多忙でラウンドできていないが、大学時代はゴルフ部に所属。
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