クラシック音楽解説YouTuber、音源の使用許可を取っているのに著作権侵害の申し立てを受けてしまう
11月14日、「厳選クラシックちゃんねる」(登録者数25万人)がYouTubeチャンネルを更新。「【緊急】動画が公開できなくなりました」と題した動画を公開しました。
使用許可を取っているのに動画がブロック
厳選クラシックちゃんねるは、クラシック音楽をこよなく愛する会社員のnacoが、初心者にもわかりやすくクラシック音楽の名曲を紹介するチャンネルです。大手レーベルの日本コロムビアから楽曲の使用許諾を受け、毎週金曜日の夜8時に動画を投稿しています。
冒頭で「緊急で動画を撮っています」と話すnacoは、「YouTubeで動画を投稿することができなくなった」と伝えその経緯を説明しました。フランスの作曲家ラヴェルの『ボレロ』を解説した動画を、翌日公開予定でYouTubeにアップロードしたnaco。しかし、YouTubeから「この動画には著作権保護対象のコンテンツが含まれています。そのため世界中でブロックされています」というメッセージが送られてきたのだとか。
naco曰く、音源に関係する権利は、大きく著作権と著作隣接権に分けられ、YouTubeはこの2つをまとめて「著作権」と表現しているとのこと。著作権は曲を作った作曲家が持つ権利であり、原則として死後70年が経過すると保護対象から外れることになります。ラヴェルは1937年に亡くなっており、『ボレロ』の著作権は2015年に失効しています。
これに対して著作隣接権とは音源をレコーディングした会社や実演家などが持つもので、今回問題となっている権利です。厳選クラシックちゃんねるでは、日本コロムビアが著作隣接権を持つ音源を同社の許諾のもと使用しているのですが、そこへ他のレコード会社(以下A)から、自社の音源を使用しているとする旨の主張がなされたようです。
機械的な検知が問題
厳選クラシックちゃんねるは過去にも同様の主張を受け、収益化を剥奪されたりアーカイブの視聴をブロックされたりしたことがあるとのこと。naco曰く、こうしたトラブルが起こってしまうのには、YouTubeが著作隣接権違反を検知するプロセスと、クラシックという音楽の性質に原因があるのだとか。
YouTubeには「コンテンツID」と呼ばれるシステムがあります。これは著作権や著作隣接権の保持者が作品を事前に登録しておくと、その作品が使われている動画が検知された場合に、収益化の停止やブロックなどの措置を取ることができるという仕組みです。
こうした処理が機械的におこなわれていることが問題なのだそうで、同じ楽譜を用いて多くの人に演奏されるクラシック音楽の場合は、別々のレコード会社によって録音された音源であっても、同一のものと誤判定される確率が高いのだそうです。
nacoは今回の判定に異議申し立てを起こすことができ、A社が訴えを取り下げた場合はすぐに動画の公開を再開できるとのこと。しかし、A社が何もアクションを取らなかった場合は、ブロックが解除されて収益化が正常に戻るまでに30日ほどの期間を要するそうです。しかし、nacoの経験上、ほとんどの場合で30日間放置されるケースが多いのだそう。
nacoは、こうしたトラブルはこれから投稿する別の動画でも起こり得ることだとして、
金曜の夜8時楽しみに待ってくださってる方には申し訳ないんですけれども、こういうYouTubeの著作権の保護だったり、著作隣接権の保護のための検知のプロセスとか制度が変わらない限りは、こういう状況でチャンネルを運営していくということをご理解いただけたらと思います。
と視聴者に説明しました。
nacoはまた、「決して私は著作権や著作隣接権がどうでもいいっていう話をしているわけではないです」と断ります。クラシックを愛する人間として作曲家やレコード会社へのリスペクトを抱いているとしつつ、今回のような明らかな間違いで動画が投稿できなくなってしまうことを遺憾に思っているそうです。
この動画のコメント欄では、
アクシデントに対してネガティブな感情を挟まずに、迅速かつ論理的な処理をするnacoさんの対応は普段の動画以上に学ぶものが多いと感じました。このような建設的な提案はYoutubeのエンジニアにとっても有益になりますね!これからの動画も楽しみにしています!
言いがかりを付けられてとんだ災難だったのに、感情的になることもなくごく冷静な対応が見事
システム上の問題とは言え、腹立たしいですね。しかしナコさん、冷静にわかりやすく説明されていて、素晴らしいです。これからも動画(ボレロも)楽しみにしています
といった反応が寄せられていました。
ちなみにコンテンツIDをめぐっては、公式のフリー音源を使用したにもかかわらず著作権侵害の申し立てを受けたというトラブルもたびたび報告されています。
記事提供元:YouTubeニュース | ユーチュラ
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。