がーどまんや夜のひと笑いらに刑事罰の可能性 サプリを「楽して痩せれた」と紹介し薬機法違反の疑い【弁護士監修】
人気YouTuberの「チャンネルがーどまん」(登録者数297万人)や「夜のひと笑い」(同189万人)らがサプリメントを紹介した件で、法律違反の疑いがあることがわかりました。
がーどまんやふくれな、夜のひと笑いが紹介したサプリ「おやすみスリム」
昨年11月にYouTuberの「ふくれな」(同186万人)との結婚を発表したがーどまんは、今年9月に結婚式を挙行。そして10月9日、Xで「こお君に教えてもらった奴で 7キロ痩せて結婚式乗り越えたゾォぉお」と、同じくYouTuberである夜のひと笑いの「こうくん」に紹介されたサプリメント「おやすみスリム」でダイエットに成功したと報告しました。
すると妻のふくれなも、がーどまんのポストを引用し、「れなもこれで痩せれた」「PRでもステマでもないです」と投稿しました。(ふくれなはポストを削除済み)
2人は、夫妻で運営するチャンネル「エガワ家」(同38万人)でも同日に、おやすみスリムを紹介しています。
がーどまんは、激ヤセに成功していたこうくんに「結婚式前やから痩せたい」と伝えてこのサプリを教えてもらったと説明。がーどまんは実際に8キロの減量に成功したといい「マジおすすめ」と絶賛。このサプリを飲んでから6キロ痩せたというふくれなも「楽して痩せれた」などと語っていました。
ところががーどまんとふくれなのX投稿に対しては、「ステマ」を疑う声が続出することに。がーどまんの投稿は今でも閲覧できますが、ふくれなのほうは削除されました。
がーどまんにおやすみスリムを勧めたというこうくんは、8月に動画でこの商品を紹介していました。
こうくんの場合は、3カ月でなんと14キロの減量に成功したそう。このサプリについてこうくんは、「僕が独自に入手したやつ」と説明。副作用はない上に運動なども一切必要なく、飲んで寝るだけで痩せられたと話していました。また、こうくんは「案件ではありません」と何度も強調していました。
次ページ:おやすみスリムの広告に薬機法違反の可能性
おやすみスリムの広告に薬機法違反の可能性
ユーチュラで詳しくこのサプリについて調べたところ、なんと薬機法違反の疑いがあることがわかりました。
おやすみスリムのウェブサイトを見ると、「疲労回復」や「体脂肪の分解」といった効能がうたわれているほか、「嬉しい機能」として「血糖値が一定に保たれ、空腹感を抑える」「コレステロール値の減少をサポート」などと記載されており、いかにもダイエットに効果がありそうな印象を受けます。
出典:おやすみスリムウェブサイト
出典:おやすみスリムウェブサイト
しかし医薬品ではないサプリメントや健康食品がこうした効能・効果をうたうことは、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で禁止されています。東京都保健医療局のウェブサイトには「医薬品的な表現例」として「ガンに効く」「老化防止」などといった文言とともに、「疲労回復」も例示されています。(※特定保健用食品・栄養機能食品は効能をうたうことが可能ですが、おやすみサプリは単なる健康食品のためこれらには該当しません。)
では実際に違法の疑いがあると⾔えるのか、薬機法や景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)に詳しい近藤素子弁護⼠に取材したところ、
おやすみスリムのウェブサイトの広告表示は違法の可能性が⾼いです。
との回答がありました。
健康食品であっても、病気の治療・予防、あるいは身体の組織機能の一般的増強・増進に役立つことをほのめかす表現を用いて広告を行うと、薬機法が適用され、「承認前の医薬品等の広告の禁止」(68条)に違反するとして、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰⾦、またはその両⽅を科せられる場合があります。
健康食品の広告・宣伝において「⾎糖値が⼀定に保たれ」「コレステロール値の減少」などは薬機法上NG表現であり、また、痩身効果があるとうたうこともNGです。
2020年、脂肪肝の改善をうたった健康⾷品が摘発された事件では、広告主や制作に関わった広告代理店とその従業員らも罰⾦刑を科せられています。
PR案件であれば、懲役・罰金刑の可能性が
今回のがーどまんの投稿に対しては、「ステマ」を指摘する声が上がっていました。広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す「ステルスマーケティング」は、昨年10月施行の規制によって景品表示法違反となっています。
仮にステマであった場合、インフルエンサーにはどのような罰則があるのでしょうか。同弁護士によると、
景品表示法でステマ規制の対象となっているのは、商品を提供する事業者(広告主)のみです。広告主から依頼を受けたインフルエンサーは、今のところ規制の対象外です。
(参考:弁護士法人東町法律事務所「令和5年10月から施行されるステマ規制って?」)ただし、薬機法の適用はあります。同法68条が「何人(なんぴと)も」、すなわち、誰でも適用されることを前提としており、広告主はもちろん、広告を掲載したメディアや広告代理店だけでなく、アフィリエイターやインフルエンサーも罰則の対象になり得ます。
インフルエンサーが商品を“案件”として紹介した場合は、仮にステマであっても、あるいはきちんとPR表記したとしても、薬機法違反の表現を用いて宣伝すると、懲役/罰金となる可能性があります。
とのこと。つまりインフルエンサーにとって、商品を“案件”として紹介するときは、ステマになっていないかに加え、薬機法に抵触する表現となっていないか気を付けなければならないということになります。
しかしこれはあくまでもインフルエンサーがPR投稿する場合です。広告・宣伝にあたらない個人の感想やレビューまでは規制されません。
おやすみスリムについて、がーどまんは、こうくんから紹介を受けたと説明しており、そのこうくんは「僕が独⾃に⼊⼿したやつ」だとし、「案件ではない」と何度も強調していました。
次ページ:おやすみスリムの販売会社について
おやすみスリムの販売会社は今年社名変更
おやすみスリムの販売元は、東京都にある「株式会社ECP」という会社です。2021年12月に設立された同社は、今年5月に社名変更するまでは「株式会社たん君」という名称でした。株式会社たん君は、家庭用牛タン「おうちでたん君」を販売する会社で、2022年2月ごろに炎上したことで知られます。
2019年、ビジネスリアリティ番組「令和の虎」(登録者数129万人)に、宮城県内で複数の焼肉店を経営する條隼人氏が出演。自社商品の家庭向け牛タン「おウチでマジ牛タン」を通販展開するためのプロモーション費用500万円を獲得しました。その後、條氏は「朝倉未来」(同341万人)や「てんちむ」(同169万人)ら人気インフルエンサーを積極的にプロモーションに起用し、「おウチでマジ牛タン」は大ヒットします。
その後もフランチャイズ展開をしたり、條氏が令和の虎に“虎”として出演するなどしていましたが、2022年1月に條氏の株式会社SGGK Group Internationalは破産してしまいました。すると、同社の「おウチでマジ牛タン」と入れ替わるように登場したのが、株式会社たん君の「おうちでたん君」でした。
同社が設立されたのは、SGGK社の破産直前の2021年12月。「おうちでたん君」のサイトは「おウチでマジ牛タン」とデザインがよく似ていた上、SGGK社のサイトからリンクが張られていたことなどから計画倒産の疑いが浮上して炎上。令和の虎では、條氏を問い詰める様子も公開されていました。
牛タン販売会社の社長と親しい仲
この炎上の直前、2022年1月27日の動画で、がーどまんはおうちでたん君を紹介し、「今まで食べた中で一番美味しい牛タン」「案件じゃなくて、ここまで俺が言うのガチやで」と絶賛していました。
そして炎上後の2月19日には「炎上してる事について正直に話します。」と題する動画を公開しました。たん君を紹介した経緯について「たん君をやってる会社の人と僕めっちゃ仲良くて」「美味しかったら紹介してくれへん?」と言われたと説明。送られてきたものを食べたところ美味しかったため、自費で購入して動画で紹介したと話していました。
がーどまんによると、たん君は、倒産して困っていた條氏を助けるためにがーどまんの知人社長が設立した会社だったとのこと。令和の虎が條氏の「おウチでマジ牛タン」を攻撃したことで「おうちでたん君」は巻き添えを食らって売れ行きが悪くなっていると述べ、「たん君はほんまにうまい」「買ってあげてください」と購入を呼びかけていました。がーどまんはよほどたん君が気に入ったらしく、その後も何度か動画で紹介しています。
一方、夜のひと笑いも2022年2月5日におうちでたん君を紹介する動画を公開しており、がーどまんと同様、同社との接点はこの当時からあったことがわかります。
2021年にも壽永氏のサービスを紹介
株式会社ECP(旧おうちでたん君)の代表取締役である壽永隆之氏は、ハウスクリーニングサービス「おそうじ本舗」の創業者で、現在は投資会社の経営のほか、さまざまな事業を展開しているようです。
2021年に設立した株式会社PATECH(2023年に清算結了)では、YouTubeトレンド分析ツール「Channel Tracker」をリリース。「ラファエル」(登録者数173万人)が監修につき、がーどまんは2021年8月の動画などで同サービスを紹介。2021年11月には、ラファエルとともにこのサービスを紹介していました。がーどまんとラファエルは、同社が手掛けるYouTuber向けのオンラインスクール「Creators School Online」の特別講師にも名を連ねていました。
がーどまんは2021年に壽永氏のビジネスを紹介し、2022年には、おうちでたん君を紹介。そして今回はおやすみスリムを紹介したということになります。
出典:クリエイターズスクールオンライン(現在は存在せず)
次ページ:がーどまん・夜のひと笑いのアパレルを運営する会社がおやすみスリムも運営
提携先がおやすみスリムのブランドを運営
がーどまんと夜のひと笑いは、それぞれ「NastyDog」「S10」というアパレルブランドを展開しており、両者の通販サイトには、どちらも「株式会社マーキュリー」という会社が事業者として記載されています。
ウェブサイトによると、この会社はインフルエンサーのサポートや、SNSを活用したPR事業などを提供しており、「提携クリエイター」としてがーどまん、ふくれな、夜のひと笑い、「はんなりーず」(登録者数72万人)の4組が掲載されています。ちなみにこの4組は、昨年6月、がーどまんが納税のトラブルを告白した際に一斉に所属事務所のCarry Onから退所したメンバーです。
マーキュリー社の事業内容のページには、
商品やサービスの企画から製造販売までを担当する部門です。
NastyDog、MUSHROOM、DRIP、SlimMake HMB、おやすみスリムなどのブランドを運営し、店舗運営も行っています。
と、おやすみスリムのブランド運営を手掛けていることが明記されていました。
「取引先一覧」のページには「株式会社Qooo」という会社が記載されています。同社は、企業とインフルエンサーのマッチングビジネスを提供する会社で、代表取締役は壽永隆之氏です。
こうなると壽永氏がマーキュリー社にも関わっているように思えますが、同社のサイトには壽永氏の名前は出ていません。しかし登記簿を取得したところ、取締役になんと壽永氏の名前が記載されていました。
ややこしくなったので、関係を整理すると以下図のようになります。
がーどまんは少なくとも2021年に壽永氏の会社と接点があり、2022年には「めっちゃ仲良くて」と言って壽永氏の別会社の商品を紹介。2023年からは、壽永氏が取締役を務める会社に自身のブランド運営を任せているという間柄です。
夜のひと笑いも2022年に壽永氏の会社の商品を宣伝。がーどまんと同様、ブランド運営を任せています。がーどまんの妻のふくれなのアパレルは、壽永氏の会社の運営ではありませんが、夫と同様、提携クリエイターとして紹介されています。
そんな3人が、壽永氏が代表を務める別会社の商品、おやすみスリムを紹介したということです。こうくんは「独自に入手したやつ」と説明していましたが、さすがにこの説明は厳しいと言わざるを得ません。
おやすみスリムの紹介はステマになる?
景品表示法で導入された規制が昨年10月に施行され、ステマが違法となったのは先に述べたとおりです。
同法でいうステマとは、広告・宣伝の対価として⾦銭を受け取ったことを隠した場合だけでなく、広告主がインフルエンサーとの間で投稿内容について依頼・指示できるような何かしらの関係性がある場合も該当するとされています。がーどまんらは壽永⽒と密接な関係があることから、たとえ無償であったとしても、今回の件はステマに相当するのではないでしょうか。
先ほどの近藤弁護士に聞きました。
一般論として、商品のユーザー等の投稿内容について、自主的な意思に基づく表示内容であると客観的に認められる場合は、ステマにはあたりません。
しかし、商品を提供する事業者(広告主)が特定の内容の投稿をするようユーザーに対して明示的に依頼・指示まではしていない場合であっても、投稿内容が自主的な意思によるものとは認められない関係性が広告主との間にある場合には、ステマと判断される可能性があります。
たとえば、広告主が、当該ユーザーとの間でこれまでに取引関係があり、ユーザーが投稿すれば今後も自らとの取引の可能性があるとにおわせたり、ユーザーが投稿すれば何らかの経済上の利益をもたらすことを言外から感じさせたりした結果、当該ユーザーが投稿した場合など、個別具体的な事情によって客観的に判断されます。
本件では、仮にステマであった場合、痩身効果があるとうたうことは薬機法違反である可能性も高いことは、お話したとおりです。
今回の場合、取引関係があることがわかっているため、ステマと判断される可能性がありそうです。おやすみスリムの広告は、薬機法違反である可能性も高いため、ステマと判断された場合、がーどまんらに対して、懲役や罰金が科せられる恐れもあるということになります。
記事提供元:YouTubeニュース | ユーチュラ
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。