「お~いお茶」ヨーロッパに本格進出!「スタバ」のコーヒー豆かすが人気スイーツに! :ガイアの夜明け
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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11月8日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは「お茶と珈琲の新戦略」。
現代の消費者は、味や価格以外にも、機能性や安全性、環境への配慮などさまざまな基準で飲料を選ぶため、メーカーはその対応を迫られている。お茶飲料でトップシェアを誇る「伊藤園」は、北米やアジアに続き、4月に初めて欧州市場に本格進出。一方、コーヒーチェーン「スターバックス」は、コーヒーの豆かすを使ったある試みを始めていた。
SDGsを武器に仕掛けるビジネスの最前線を見つめる。
【動画】「お~いお茶」ヨーロッパに本格進出!「スタバ」のコーヒー豆かすが人気スイーツに!
「お茶」で世界を制する! 鍵はSDGs
1966年、茶処・静岡でお茶屋としてスタートした飲料メーカー「伊藤園」(東京・渋谷区)は、従業員約8000人、売上高約4500億円(連結)の大企業に成長した。
看板商品の「お~いお茶」は1989年の発売以来、累計430億本を突破。6年連続で年間売上世界一(無糖緑茶飲料ランキング)に輝き、ギネス世界記録を更新中だ。
「お~いお茶」は、北米やアジアを中心に40を超える国と地域で販売しており、次に目指すのが、世界戦略へ向け重要な足がかりとなるヨーロッパだ。
野球界のスーパースター・大谷翔平選手と「伊藤園」のグローバル契約を締結させた立役者のひとり、「伊藤園」国際本部 本部長の中嶋和彦さん(52)は、「ようやくヨーロッパに行ける準備が整ってきた。今回のドイツは入り口。最終的には中東・アフリカに。100カ国を当面の目標にしている」と話す。
プロジェクトを託されたのは、「伊藤園」国際事業推進部 部長の小城真さん(49)だ。
ヨーロッパで販売する「お~いお茶」はプラスチックに対する規制が厳しいため、ペットボトルではなく紙製に。またEU(欧州連合)では、7月から海洋プラスチック汚染に対応するため、落ちないキャップが義務付けられた。規制は容器だけではなく、中身にも及ぶ。
鹿児島は、桜島の火山灰によって作られた水はけのいい土壌と寒暖差のある気候がお茶の栽培に適しており、年間の荒茶生産量は約2万6000トン(2023年度)。首位・静岡に迫る勢いだ。
お茶問屋「堀口園」(鹿児島・志布志市)は、近隣の農家13軒から収穫した茶葉を加工し、「伊藤園」に卸している。茶畑の広さは、「東京ディズニーリゾート」の約7個分。
この日、小城さんは「堀口園」に出向き、社長の堀口将吾さんにある相談を持ちかけた。
「ヨーロッパは特に農薬の規制が厳しい。有機栽培や減農薬、そういった茶葉を増やしてもらえないか」とお願いすると、「今後日本の人口が減っていくことを考えると、産地としても海外に出せる茶を広げていく必要がある」と堀口さん。堀口さんのところでは、すでにヨーロッパ基準の栽培に取り組んでいた。
堀口さんは畑の中を行き来する機械を指差し、「鹿児島県は桜島が噴火して、茶畑に灰が降ることもある。これは灰を落とすことがメインの機械だが、副次的な効果として、新芽に付いたダニやアブラムシを(風と水で)吸い上げて畝間に落としてくれる」と説明する。
この機械が害虫駆除にも役立つため、あまり農薬を使わずに済むというのだ。
しかし、有機や減農薬での栽培は除草の作業が増え、農家にとって大きな負担となる。
「『有機の茶をもっと用意してください』と言うのは簡単。一生懸命作ってくれている農家さんのためにも、しっかりヨーロッパで販売していく」と、小城さん。
「伊藤園」の中嶋さんと小城さんは、4月にドイツ・デュッセルドルフに立ち上げた「伊藤園ヨーロッパ」のオフィスへ。出迎えたのは、代表の鈴木彰斗さん(40)だ。
ビルの一角を借りたオフィスで、広さは日本のワンルームマンションほど。ここがヨーロッパ進出の拠点となる。
デュッセルドルフの人口は、約66万人。古くから国際的な商業都市として栄えてきた街で、日本の企業も約400社進出。ヨーロッパでは、ロンドン、パリに次いで日本人が多く住んでいる。
翌朝、小城さんと鈴木さんは、デュッセルドルフから約3時間のところにある協力工場へ。リンゴ畑が広がる環境のいい場所で、この工場は、主にリンゴをはじめとするジュースを作っている。ここに日本から原料を送り、商品の製造を委託しているのだ。
工場にとっては初めてとなる緑茶の生産。気になるのは品質だが、小城さんは、約8カ月かけて緑茶の製造をイチから指導した。「日本と同じ味が再現されている」と小城さん。
生産体制も整い、あとは売るだけだが、デュセルドルフに戻った2人がいくつかのスーパーを視察すると、気になることが。ドイツの小売りチェーン大手「レーベ」(国内3700店以上)のドリンクコーナーをチェックすると、棚の大部分はエナジードリンクや炭酸飲料で埋め尽くされていた。
ティーコーナーもあるが、アジアのメーカーの飲料は見当たらず、「ボルビック」や「リプトン」の飲料が並ぶ。ヨーロッパの牙城を、日本の緑茶がどう切り崩していくのか。
2人は、ドイツ市場の卸売業者で流通や販売、マーケティングまで担うディストリビューター(中間業者・卸売業者)「クレヨンホップ&クルーゲ」社のダニエル・ガートナーさんと面会。ダニエルさんの「お~いお茶」の評価は悪くないが、「(値段が)少し高すぎる。ドイツ人は緑茶をもっと安いものだと思っている」とアドバイスした。
しかし「全く同意できない。『店頭価格=ブランド価値』になる。ブランド価値を我々からわざわざ下げる必要はない」と強気の小城さん。価格を維持したまま、いかに販路を広げるか…答えはなかなか見つからない。
日曜日、小城さんは「お~いお茶」を抱えて街へ。実際に街ゆく人に飲んでもらい、生の声を聞こうと考えたのだ。しかし返ってきた感想は、「僕には合わない。これは無糖だね。コーヒーは砂糖入りを飲むんだ。しかも少し魚のにおいがする」「味がしないわ。いつも甘いものばかり飲んでいるから。草のにおいがする」と、散々なものだった。
手詰まり感が漂う中、小城さんと鈴木さんは、イタリア経済の中心地・ミラノへ。卸売業者「ユーロフード」社を訪ね、マーケティング本部長のルッセラ・グイドボーノさんに「お~いお茶」を飲んでもらう。ルッセラさんは「とてもおいしい。ただ少し、口に残る味が強い。もう少しまろやかな味になれば…。抹茶を入れたらどうか。より日本的になるし、ヨーロッパでも流行している」とアドバイスした。ルッセラさんの意見に、何度もうなずく小城さん。
価格や味など、いくつもの課題が浮き彫りになったヨーロッパ出張。帰国後、小城さんは、味の改良に動き出す。さらに小城さん、年間5万トンにも上る「茶殻」をブランドストーリーの武器にできないか…ヨーロッパで注目を集めるための“ある秘策”考えていた。
スターバックスと野菜と牛の意外な関係
一方、1996年の上陸以来、今や日本一のカフェチェーンになった「スターバックス」も、課題を強みに替える作戦に出ていた。課題は、毎日コーヒーを作った後に出る、大量のコーヒー豆かす。これを生かす試みが、千葉・東金市で始まっていた。
東金市にある工場「三友プラントサービス」には、スタバのコーヒー豆かすが集まっていた。
スタバの食品廃棄物の8割を占めるのがコーヒー豆かすで、全店舗で年間約8000トンも排出される。
「廃棄物として燃やされてしまうと、温室効果ガスも出るし、良くないことがたくさんある」と話すのは、「スターバックス」サステナビリティチームの武藤昌宏さん。コーヒー豆かすの有効活用に取り組んでいる。
この工場では、スタバから出たコーヒー豆かすをふるいにかけ、そこに乳酸菌や粉末状のしょうゆかす、おからなどを混ぜていた。こうして出来上がったものを届ける先は、地元の牧場だ。ひと手間かけたコーヒー豆かすを牧草や配合飼料と混ぜて牛に与えると、意外な効果が……。
酪農家の湯浅尚江さんは、「季節の変わり目は乳房炎が増えやすいが、コーヒー豆かすの飼料を使うようになってからは、だいぶ減ったと感じる。コーヒー豆かすの影響は大きい」と話す。乳房炎は牛に細菌が感染して起きるが、コーヒー豆かすに含まれるポリフェノールが乳腺の免疫を向上させるという研究(麻布大学 獣医学部 河合一洋教授)もあり、牛乳の質も良くなるという。
武藤さんによると、牛からとれた牛乳の一部は、回り回ってスターバックスミルクに。理想的な循環だ。
「道の駅 みのりの郷東金」(千葉・東金市)で売れている「とろ~りプリン」も、スタバと深い関係があった。原材料に使われている牛乳の一部は、あのコーヒー豆かすを餌としている牛からとれたもの。その牛乳は焼き菓子などにも使われ、特にプリンは1日に100個以上売れるヒット商品になった。
国内に1900店舗以上を展開するスタバは、2030年までに豆かすのリサイクルを全店舗に広げようとしているが、飼料にするだけでは難しい状況。そこで武藤さんは、店ごとに地域とのつながりをつくり、コーヒー豆かすを使ってもらう作戦を考えていた――。
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記事提供元:テレ東プラス
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