“昭和の雰囲気が残る熱いヒーロー”が求められている!「ウイングマン」坂本浩一監督が語るこれからの特撮
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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ドラマチューズ!「ウイングマン」(毎週火曜深夜24時30分)のメガホンをとる特撮アクションの第一人者・坂本浩一監督インタビュー【後編】。
SNSなどで絶賛の声があふれる主人公・広野健太を演じる“ハマり役”藤岡真威人の魅力、ウイングマンの造形、そして得意とするアクション演出、これからの特撮ヒーローとは?
【前編】では、ウイングマンのヒーローとしての魅力、実写化へのこだわりなどを。
【動画】実写ドラマ「ウイングマン」藤岡真威人がチェイング!
主人公を演じる藤岡真威人の魅力
「ウイングマン」第1話より
――第1話放送後は、ヒーローに憧れる主人公・広野健太を演じる藤岡真威人さんがハマり役だと話題となりました。
「キャスティングで真威人くんの名前が上がった瞬間、ピッタリだと思いました。はっきりとした目鼻立ち、髪型、眉毛に至るまで桂正和先生が描かれた原作(漫画『ウイングマン』)の健太そのものだと思いました。
実際にお会いして撮影に入ると、真威人くんが持つピュアさが、健太が持っているオタクならではのピュアさと一致していて、その再現度に驚きましたね。さらには、真威人くん自身は特撮ヒーローオタクとまでいきませんが、お父さんの藤岡弘、さんがヒーロー界のレジェンドですし、特撮とは縁が深い。それに、素晴らしい環境のもとで育ったおかげでとても素直で真っ直ぐなんです。健太のオタクっぷりを嫌味なく表現してくれたと思います」
――腕っぷしは弱いのに、クラスメートの小川美紅(菊地姫奈)を助けるべく不良たちに立ち向かう。正義感あふれる健太のまっすぐさに拳を握りしめた視聴者も多いと思います。
「真威人くんが持つ真面目さ、素直さ、礼儀正しさが映像に表れていますよね。それでいて、今の若者のちょっと砕けた部分もあったりするので、健太はもう真威人くんしか考えられません。原作では中学生だった設定が高校生に変更されましたが、これも真威人くんのピュアさがあればこそ。普段からコスプレしたり、家でポージングの練習をしたりする、周りからちょっと浮いた存在である健太に説得力をもたせてくれました」
「ウイングマン」第1話より
――「チェイング!」の掛け声からの名乗り、変身ポーズなど、アクションのキレも抜群です。
「お父さんの指導もあって幼少のころから武道を習っているので体はできていますし、動きにキレがある。健太はディープな特撮ヒーローオタクなので、普段から特撮っぽく身振り手振りが多めです。桂先生の狙いでもあったので、真威人くんにも伝えて、“ついつい出ちゃう”感じを意識してもらいました。
ヒーローオタクで、コスプレや、ポージングの練習をする男の子が、本当に変身できるようになる――いわゆる“王道ヒーローを目指しましょう”とクリエーターチームで早い段階から話していたので、ウイングマンの名乗りやポージング、ギミックや扱う技の種類など、可能な限り原作を再現しています」
“ウイングマン”スーツ造形のこだわり
「ウイングマン」第2話より
――描いたことが現実になる不思議なドリムノートの力で変身した空想の戦士“ウイングマン”。スーツの造形も再現度、完成度ともに好評を。
「ウイングマンは、桂先生自ら今回の実写化用にアップデートしたデザインで、細部に至るまでディテールが足されています。先生は連載当時(1983~1985年)、ご自分でスーツを作られたことがありますから、その経験も踏まえて、今回のデザインを仕上げてくださいました。
自分も数々の特撮作品を監督してきたので、機動性やルックを踏まえてどのような素材が良いかなど提案もできましたし、先生も、何度も造形工房に足を運んでくださり、チェックと修正を繰り返しながら仕上げていきました。完成時にスタッフから『おお~っ!』とどよめきが起こったほどです」
「ウイングマン」第1話より
――スーツ造形でご苦労された点は?
「ウイングマンのスーツは、スーパー戦隊のスーツ素材だとディテールが表現出来ませんし、ウルトラマンで使用されるウェットスーツだと動きに制限があり、屋外で撮影される等身大アクションだと耐久性も心配になります。素材の厳選こだわりましたね。
スタイルをよく見せつつ、アクションシーンの撮影に耐えうる耐久性を持たせるという点をクリアするべく、造形部と入念な打ち合わせを繰り返しました。黒い部分のディテールをどのように表現するか?などいろいろと研究しましたね」
――マスクやスーツは、ライダーや戦隊と同じく、アップの芝居用、アクション用と作りわけているのですか?
「はい、作りわけています。お芝居用はより精巧に作り込んだもの、アクション用は視界がいいものを用意しました」
これからの特撮ヒーローとは?
「ウイングマン」第4話より
――実写では、空中戦より肉弾戦が多くなりそうですね。
「ウイングマンが飛ぶ描写はありますが、3DCGを使った演出はスケジュール的にも予算的にもなかなか難しいというのが現状です。
なので、3DCGに頼ることなく生身のアクションならではの迫力、実際にそこにいるかのようなリアリティを意識しつつ、アクションチームみんなで力を合わせました。爆破シーンも、実際のナパームを使用して撮影したシーンもあります」
――ウイングマンへの変身時間は原作の10分から5分になりました。
「この設定は桂先生から“変身に制限を加えることでヒーローとしてのカタルシスを出したい”と提案があり生まれたものです。それにともなって生身のアクションも髄所に散りばめられています。
目指したものは、斜に構えたオシャレさはないけれど、熱くてカッコいい王道の特撮ヒーローです。当時『ウイングマン』を見ていた世代から見れば懐かしく、今の若い世代には新しく映るのではないかと思います」
――王道のヒーローものでありながら青春群像劇という側面もあります。
「ヒーローオタクの少年がどうやって本物のヒーローになっていくかが、本作の一番のテーマです。オタクで、学校でもちょっと浮いた男の子が、ひょんなことから地球の未来を救うヒーローになって成長していく。他のヒーローのように“選ばれし者”ではない等身大の少年の成長物語、恋愛要素を含めた青春群像劇としても楽しんでいただきたいです」
――ここ数年ライトノベルで流行りの“転生もの”にも似た要素も。
「そうなんです! 普通の男の子が事件に巻き込まれて、ヒーローに転生して。あと女の子もたくさん出てきて、ラノベで言うハーレムものの要素もある。『ウイングマン』はまさにそのフォーマットなんですよね。桂先生の先見の明に改めて驚かされます」
「ウイングマン」第4話より
――「女の子がたくさん」といえば、ウイングガールズは登場するのでしょうか?
「美紅ちゃんをはじめ、桃子(上原あまね)や布沢(片田陽依)も出てきますが、ウイングガールズの衣装を着て…という展開は残念ながらありません。ほかにも30分×10話という中で健太を中心とした物語を広げていこうとすると話数的に消化しきれない部分があり、泣く泣くカットした設定やエピソードがいくつかありました。
だからといって、出し惜しみはしていないです。“やりきっちゃおう!”という思いで、スタッフ全員が一丸となって作りました。全話を見終わった時に『中途半端で終わっちゃったね…』ではなく、『最高におもしろかった!』、『続きが見てみたい!!』と思っていただけるように全力で挑んだつもりです」
――では、気が早いですが、残されたエピソードは続編で。
「企画当初からシーズン2を作りたいという気持ちで挑んでいましたので、ぜひ! 桂先生も 『もし、みなさんに気に入られて続きを作れることになったら、そこでまた考えよう!』と言ってくださったので、応援してください!」
――最後に「仮面ライダー」「スーパー戦隊」「ウルトラマン」など特撮シリーズのメイン監督を務め、アメリカ仕込みのアクション演出にも定評がある坂本監督が考える、これからの特撮ヒーローとは?
「今回の『ウイングマン』にも通じますが、やはり王道ヒーローは絶えないと思います。最近の特撮作品は変化球といいますか、王道の展開が少なかったりするので、逆に原作の『ウイングマン』が連載された昭和の雰囲気が残る熱いヒーローが求められているように思うんです。
“カッコいいものはカッコいいし、熱いものは熱いんだ!”というところは『ウイングマン』でも描いていますし、これからもそうした王道が増えてほしいですね」
――監督として、これからやっていきたいことはありますか?
「自分は本当にラッキーな存在で、健太じゃないけれど、子どものころ大好きだった特撮ヒーローを自分の手で演出するという夢を叶えられています。これからもより一層、特撮や映像業界に貢献していきたいと思っています。
あと、自分はジャッキー・チェンに憧れて、もともとはスタントマンからスタートしているので、後進の指導に力を入れていきたいと思います。やられ役があってこそヒーローが輝くということを伝えていきたいですね」
次回放送、ドラマチューズ!「ウイングマン」(毎週火曜深夜24時30分)第4話は?
第4話
新任教師・北倉(宮野真守)の助言により、健太(藤岡真威人)はアオイ(加藤小夏)や美紅(菊地姫奈)らと共に「アクション演劇部」を立ち上げることに。特撮大好きな新入部員・桃子(上原あまね)を迎え上機嫌な健太だったが、そんな中アオイがキータクラーに攫われてしまう。健太はウイングマンに変身し、あらゆる技を駆使して戦うが、「ウイングマンの力を肌で感じたい」と言うキータクラーは余裕の笑みを浮かべていて…。
「TVer」、「ネットもテレ東」で第1話~第3話の見逃し配信中!
【プロフィール】
坂本浩一(さかもと・こういち)
1970年9月29日生まれ。東京都出身(アメリカ国籍)。16歳の時に倉田アクションクラブに入門後、スタントマンを経て渡米し、スタントマン・俳優として活躍。その後、日本の特撮「スーパー戦隊」シリーズをベースにした「パワーレンジャー」シリーズの監督・プロデューサーとなる。日本では「仮面ライダー」「スーパー戦隊」「ウルトラマン」の三大特撮を監督するという偉業を達成した特撮アクションの第一人者。本作では監督・アクション監督を務める。
(取材・文/橋本達典)
記事提供元:テレ東プラス
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