家庭内で消えた一丁の銃 知らない家族の顔があぶり出される イランのモハマド・ラスロフ最新作 公開決定
第77回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した映画「The seed of the sacred fig(英題)」が、2025年2月14日より劇場公開されることが決まった。
「The seed of the sacred fig」は、2022年に実際に起き、社会問題となった、ある若い女性の不審死に対する市民による政府抗議運動が盛り上がるイランを背景に、家庭内で消えた一丁の銃を巡って、互いに知らない家族の顔があぶり出されていくという内容の作品。
監督は、本作を含め「ぶれない男」「悪は存在せず」などの長編映画を製作してきたイランのモハマド・ラスロフ。彼の映画は、「国家安全保障を危険にさらす」と目を付けられ、いずれも検閲のためイラン国内では上映されておらず、監督自身は何度も投獄された。「The seed of the sacred fig(英題)」は、2022年の投獄中に、ヒジャブの着用をめぐって警察に拘束された女性の死をきっかけにおきた「女性、命、自由」を掲げた抗議運動で、社会的な変化を目の当たりにしたことがきっかけで製作を決意したという。
本作が第77回カンヌ国際映画祭コンペティションに選出されると、イラン政府はラスロフ監督に有罪判決を言い渡し、出国を禁止。本作の上映見送りを求めて圧力をかけたが、ラスロフ監督は数名のスタッフとともにイランを脱出し、28日間をかけてカンヌの地へとたどり着いた。その後、声明文を発表。「イスラム共和国の諜報機関が私の映画製作について情報を得る前に、なんとかイランを脱出することができた俳優も多数います。けれども、今もイランには俳優や映画のエージェントがたくさん残っていて、諜報機関から圧力がかかっています」「それでもなお私は、イスラム共和国政府の検閲による介入を受けない、より現実に近いストーリーを目指しました。表現の自由の制限や抑圧は、たとえそれが創造性を刺激するものであったとしても正当化されるべきではありません」「道がなければ、作らなければなりません」とコメントした。
【作品情報】
The seed of the sacred fig
2025年2月14日(金)公開ほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ
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記事提供元:映画スクエア
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