その墓を掘り返してはいけない 今年一番韓国で大ヒットしたホラー大作が日本上陸 『破墓/パミョ』
飯塚克味のホラー道 第98回『破墓/パミョ』
改葬という言葉をご存じだろうか?先祖が祭られている墓を掘り起こし、別の場所に移動させることだが、近年、日本でも親族の減少や、実家と子孫の住んでいる場所が遠いなどの理由から、墓を移動する人が増えている。この映画では不幸が続いたある家族が、先祖を供養し直すため、改葬を行う。だがそれは禁断の扉を開けるに等しい行為だった。今年、韓国国内で『犯罪都市 PUNISHMENT』や『インサイド・ヘッド2』を抑えて、7週連続1位の大ヒットを記録したホラー映画が、いよいよ日本でも公開となる。
物語は、お祓いを行う巫堂ファリムがアメリカまで足を運び、あらゆる医療行為を行っても回復しない子どもの原因を突き止めるところから始まる。先祖の墓にその理由があると突き止めたファリムは、旧知の風水師で墓地の是非を判断できるサンドクと、改葬を取り仕切る葬儀師ヨングンに、一緒に下見に行くよう、依頼する。だがその地を見たサンドクは、ただならぬ空気を察知し改葬を断るが、子どもを治したい依頼主は一歩も引かず、改葬が始まってしまう。そこに眠っていた者は?
監督のチャン・ジェヒョンは、カン・ドンウォン主演の『プリースト 悪魔を葬る者』(2015)がヒットし、Netflixの『サバハ』(2019)が各賞で話題になったホラー一筋の信頼できる人物だ。主演のサンドク役には『シュリ』の悪役から、大ヒット作『オールド・ボーイ』の主役、近年では『不思議の国の数学者』などで多彩な活躍を続けるチェ・ミンシク。葬儀師ヨングンはコメディからシリアスまで何でもこなせるユ・ヘジンが扮している。巫堂ファリムは、ドラマ『トッケビ ~君がくれた愛しい日々~』(2017)のキム・ゴウン。個人的には2015年の『コインロッカーの女』が忘れ難い。ファリムと共に行動する巫堂ボンギル役はドラマに数多く出演してきたイ・ドヒョンが演じ、ベテランに負けない存在感を発揮している。
この映画、134分という長尺なのだが、映画自体のテンポはとても速い。実は前半と後半に分けられるような2部構成的になっていて、そのことが展開にスピード感をもたらしているのだ。特に冒頭の飛行機シーンでファリムが日本語を話せることが、後半になると「そう来たか!」と活かしてくれ、日本人としてはより満足度を実感できるはずだ。
またこの監督、ムード作りもとてもうまく、キツネの使い方や、昼と夜の映像表現などとても優れている。特に極めつけなのが、最初に破墓(パミョ)を行う時、土を掘り返した時に出てくる変な蛇。人面蛇とでも言うのだろうか?猛烈に気持ち悪く、それだけでも夢に出てきそうな気色悪さがあった。
破墓(パミョ)を行ったことで、封印されていたはずのソレが出てきてしまい、4人のプロフェッショナルが立ち向かうという構図は、映画的にも非常に面白く、最後まで目が離せない。観る前は「ちょっと長いかな?」と思う人もいるだろうが、あっという間の時間になることをお約束したい。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【作品情報】
破墓/パミョ
2024年10月18日(金)より新宿ピカデリー他にて全国ロードショー
配給:KADOKAWA、KADOKAWA K プラス
© 2024 SHOWBOX AND PINETOWN PRODUCTION ALL RIGHTS RESERVED.
記事提供元:映画スクエア
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