桜井政博、任天堂の故・岩田聡社長との思い出を語る 「私に対する最大の理解者でありました」
10月11日、「桜井政博のゲーム作るには」(登録者数61万人)が「岩田さんのこと 【雑談】」を公開しました。
任天堂元社長との思い出を語る
「桜井政博のゲーム作るには」は、ゲームクリエイター・桜井政博氏の公式YouTubeチャンネル。桜井氏はゲーム制作会社「有限会社ソラ」の代表者で、これまでに『星のカービィシリーズ』『大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ』など、数々の大人気ゲームの開発に携わったことで知られます。桜井氏の経験に基づくゲーム開発のテクニックやノウハウがふんだんに紹介されており人気のチャンネルでしたが、年内でのチャンネル終了が予定されています。
桜井氏のチャンネルでは、「ゲーム設計」、「エフェクト」、「企画コンセプト」といった様々なカテゴリに分類して動画が投稿されていますが、その中の1つの「雑談」カテゴリの最後の動画として、故・岩田聡さんとの思い出を語ります。
岩田さんとの出会い
岩田さんは、桜井氏もかつて在籍していたハル研究所の所長を経て、2000年に任天堂の取締役経営企画室長に就任。2002年には同社の代表取締役社長に就任しましたが、在任中の2015年、胆管腫瘍によって55歳の若さで亡くなりました。
桜井氏がハル研究所の面接に行ったとき、面接官として岩田さんが現れたのが2人の出会いだったそう。面接時に印象的だったのはタイピングが速かったことと、屈託のない笑顔で楽しそうにしゃべっていたことだといいます。桜井氏は「目の前にいるのは知らない人であるわけで、なのに楽しそうにしている。それがインパクトありました」と振り返ります。
優秀なプログラマーでもあった岩田さんですが、桜井氏の入社当時は開発部長として経営側に立っていたため、実はほとんど一緒に仕事をしたことがないのだとか。当時は「遠くにいる存在」だったといいます。
岩田さんは何らかのトラブルがあると、そこに率先して飛び込み、改善していったそう。桜井氏自身はゲームの内容について口出しされたことはないといい、「信頼して任されていたのだろうと思います」と話しました。
岩田さんとスマブラ
桜井氏がゲームを作っている中で、岩田さんに直接プログラムしてもらったことが実は2回だけあるそう。そのうちの1つは、ニンテンドー64『大乱闘スマッシュブラザーズ』の原型となった、通称『格闘ゲーム竜王』。当時他のプロジェクトで忙しかった岩田さんが休日を利用してプログラムしたといい、桜井氏は人づてに、このゲームの制作中の岩田さんは非常に楽しげだったと聞いたそうです。
また、岩田さんは『大乱闘スマッシュブラザーズ』のタイトルを決める話し合いの際、「全然“兄弟”ではない人たちなんだけど、こういった言葉が単に争うだけではない、仲間同士のちょっとしたケンカであるようなニュアンスがあってよい!」という意見を出し、タイトルの決定に影響があったと明かしました。
その後、岩田さんは任天堂の取締役経営企画室長に抜擢されてハル研究所を去りますが、当時大詰めを迎えていた『大乱闘スマッシュブラザーズDX』の開発でプログラムにミスがあり、バグが頻発するという事態に。岩田さんは、現場でプログラマーのそばにつき、直接問題を見つけて修正していたそう。桜井氏は、多くの任天堂タイトルのうちの1つに過ぎないのに、経営企画室長である岩田さんに「そこまでしていただくのは申し訳ない」という気持ちだったといい、岩田さんの協力がなければ2001年内にスマッシュブラザーズDXが発売できなかったかもしれないと振り返りました。
岩田さんの人物像
桜井氏は、岩田さんについて「少なくとも私が知っている人の中では最も頭が良いと思います」「単にプログラムができるというだけではなく、勉強家ですし、人はなぜそのように考えるのかなどの心理についてもよく考えていた印象です」「普通の人なら腹を立てたり不快に思ったりするような局面においてもそれを表に出さず、分析提案などができました」と評します。
その後、それまで同族経営だった任天堂で、入社2年目の岩井さんが社長になるという異例の大抜擢がされましたが、桜井氏にとっては納得感があったといいます。
任天堂の社長就任後も2人の交流は続いたそうで、本社の社長室によく呼ばれたり、東京の宿泊先のホテルで一緒に食事をとったりもしたそう。岩田さんは人との対話を重視していたといい、社長として忙しいなか、こうした誘いは秘書を通してではなく、岩田さん本人から送られてきていたと話します。
2014年に岩田さんが胆管腫瘍で手術を受け、復調してからも話をする機会があったそうですが、そのときが最後のやりとりとなってしまったのだとか。2015年の7月に再び会う約束だったそうですがそれは叶わず、代わりに岩田さんの訃報が入ったそう。
最後に桜井氏は「岩田さんは私に対する最大の理解者でありました」「人徳者であり、不断の努力者であり、サービス精神にあふれ、業界を変えた人でした」「もし最初に岩田さんに会えていなければ私がしていることは全く異なったでしょう」と話して動画を締めました。
コメント欄では
聞けば聞くほど不思議な方
プログラミングもできる、経営もこなす、エンターテイメントも楽しんで引き受ける。本当に「ゲーム業界の為に現れた偉人」って感じ
桜井さんいつか岩田社長の事だけ話す雑談回来ないかなと思っていたらまさかの雑談最終回でしてくれて感謝しかないで
聡明でシゴデキなだけでなく、魅力的で暖かな人間性でゲーム業界を大いに支えてくれた岩田さんは俺たちゲーマーにとっても本当に大切で大好きな存在だっただけに今回改めて桜井さんの話を聞きながら涙してしまいました…
といった声が寄せられています。
記事提供元:YouTubeニュース | ユーチュラ
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。