映画にも勉強の種がある！『天空の城ラピュタ』から学ぶ台風などの自然科学知識

名作アニメ映画『天空の城ラピュタ』のシーンの中には、様々な自然科学系の知識を身に付けることができるチャンスがちりばめられている。たまには普段とは少し違った視点で、映画を見てみよう。どんなものからも学びの種を見つけられることこそ、人生を豊かにするのだ。

「勉強は机にかじりついてやるものだ」なんてもはや時代遅れ

頭のお固い教育業界のお歴々は、いつまで経っても「勉強は机の前に座って落ち着いてやれ」だの「紙と鉛筆を持って勉強するなんて当たり前だ」だの「計算するときは必ず筆算しろ」だの「漢字を覚えたければ100回繰り返して書け」だの「試験前は寝ずに勉強しろ」だの、相も変わらず前時代的で根性論的な学習法にこりかたまっている。でもそのやり方が未来永劫「正しい学習の仕方だ」などと、いったい誰が証明できようか。

新しい時代の到来とともに、従来の常識が非常識となっていくことは決して珍しいことではない。私たちは変わりゆく価値観や物事の考え方を柔軟に受け入れていかねば、時代に取り残されてしまうだろう。

勉強の仕方だって変わっていって当然。ハーバード大学のジョン・J・レイティ博士によれば、軽い運動をすると脳の神経細胞が活性化するそうだ。歴史の年号を暗記したければ、机に向かってカリカリやるよりも、散歩をしながら覚えた方がずっと効果的なのだ。「勉強は机にかじりついてやるものだ」なんていうのは、もはや時代遅れもはなはだしいのだ。

娯楽映画にだって学びの要素はたくさんあるぞ

そこで私がイチオシしたい入門アイテムが、『天空の城ラピュタ』というアニメーション映画だ。言わずと知れたスタジオジブリの作品である。毎年一回はテレビ放送され、そのたびにネットがざわつくアレである。「滅びの呪文で賢くなれるの？」と思った皆さん。いやいや、そういうことではありません。映画のシーンから自然科学系の知識を習得できるという話なのだ。

注目して欲しいシーンは以下の4つだ。さぁリモコンの一時停止ボタンを準備しよう。

まずは0:10:45。朝もやのシーン。何の変哲もない朝の風景であるが、ここからも理科の基本知識が学べるのだ。「もや」の正体は実は水滴だ。気温というのは夜明けの直前に最も下がる。一日の最低気温を記録するのはたいてい夜明け直前だ。そのときに空気が冷やされ、水蒸気が水滴となってもやができるのである。霧・雲・冬の白い息はすべて細かい水滴が白く見えるものである。

次のシーンは1:07:50。映画のヒロインであるシータのセリフに着目しよう。「私のいた塔から日の出が見えました。今は最後の草刈の季節だから日の出は真東からちょっと南へ動いています。光は日の出た丘の左端をさしたから……」シータの家は畜産業を営んでいるので、冬備えのために夏から秋にかけて牧草を刈り取って、サイロなどに蓄える作業を行う。よって物語の季節は晩秋であることが分かる。晩秋の日の出は真東よりも南寄りになることもしっかりと覚えておこう。ちなみに夏の太陽は、真東よりも北側から出て、真西よりも北側に沈む。

製作者だってたまには間違うこともある

1:08:15のシーンは象徴的だ。空中海賊の船長ドーラのセリフに「貿易風をつかまえれば……」というものがある。貿易風とは赤道付近に一年中吹いている、東から西へ向かって吹く風のことである。この場合、主人公たちは東へ向かって飛んでいるはずなので、貿易風だと向かい風となってしまうのだ。

もちろん帆船などは向かい風でも前に進むことができるが、ここでは「貿易風をつかまえれば（敵よりも早く目的地に到着できる）」という言葉が省略されている筈なので、向かい風だとつじつまが合わない。おそらくは「偏西風」の誤りであると思われる。

ちなみに偏西風とは、赤道よりも高緯度の地点で吹く、西から東への風のこと。ジェット気流ともいう。余談だが、低い声で渋く「ジェットストリーム」とささやくと、ある年代よりも上の人たちにはウケること間違いない。

そして最後は1:21:00のドーラのセリフ、「そいつは低気圧の中心だ！」。風速17.2m/秒以上の熱帯低気圧を「台風」といい、北半球では反時計回りに強風が吹く。その直後にパズーが「龍の巣！これが!?」と絶句するシーンで、反時計回り方向に渦を巻いている様子がよく分かる。

たかがアニメとバカにすることなかれ。どんなものからも学びの種を見つけられることが、人生を豊かにするのだ。

DATA
スタジオジブリ｜『天空の城ラピュタ』