放置竹林が土砂災害のリスクに…秘策は「メンマ」?ラーメンで挑む竹害解消:ガイアの夜明け
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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9月27日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「やっかいものを活かせ!」。
今、利用価値を失って放置された竹林が、土砂災害のリスクを増加させ、獣害の温床となるなど、“竹害”と呼ばれる現象を引き起こしている。そんな竹をどう活かし、問題解決につなげるのか。“やっかいもの”をSDGsの主役に生まれ変わらせようと動く人々に密着した。
【動画】放置竹林が土砂災害のリスクに…秘策は「メンマ」?ラーメンで挑む竹害解消
4月。千葉・大多喜町では、観光バスで乗りつけた多くの人がタケノコ料理の専門店で舌鼓を打っていた。タケノコの旬の季節は3~5月頃までで、店は連日大盛況。一番人気は「たけのこ御膳」で、客は「おいしい」「本当に柔らかい」と喜ぶ。
大多喜町は首都圏有数のタケノコの産地で、店で出されるタケノコは、その日の朝に収穫したもの。
日本人の暮らしに恵みをもたらす竹は全国に分布するなじみ深い植物だが、多くの問題を抱えていた。
森林が7割を占める福島・会津美里町に住む高橋和子さん、幸太郎さん親子は、「竹やぶはいくらでも上までいっちゃう。それでもう手に負えなくなる」と話す。
竹は手入れを怠ると、すぐに森林の中まではびこり、山を荒らす。すると、タケノコを求めてやってくるイノシシやシカ、クマなどによる獣害が発生するのだ。
さらに竹は根を浅く張るため、近年多発する豪雨では、土砂災害のリスクが高まることも指摘されている。
全国的な問題となっている荒れ果てた竹林…その解決に向けて奮闘する人々がいた。
京都・嵐山にある「竹林の小径」は、美しく整備された竹が観光客の目を楽しませてくれるが、観光ルートから少し離れると、放置竹林が目に飛び込んでくる。
タケノコの成長力は目覚ましく、1日で1メートル以上伸びることもあり、放っておくとすぐに密集してしまう厄介者。
「荒れてるね。密集してきたら、もっと大変なことになる」と話すのは、京都で生まれ育った久保田雅彦さん(51)だ。
久保田さんは、京都府内で育ち過ぎたタケノコ「幼竹」を買い取ってメンマを作り、自身が経営するラーメン店で使い始めた。
鶏豚骨スープの塩ラーメン「塩のキラメキ」に添えられた京都産メンマ。客も「シャキシャキして食べ応えがある」と絶賛する。
久保田さんは、ラーメンチェーンを運営する「キラメキノ未来」(京都市伏見区年商12億円 従業員約260人)の社長を務め、放置竹林の資源化を図る「純国産メンマプロジェクト」に加入している。
メンマの原料は麻竹だが、日本ではほんど生えないため、主に孟宗竹を使う。久保田さんは、「ラーメン屋がすごい量のメンマを使うので、ラーメン屋が立ち上がって国産メンマ作りをすることが放置竹林問題を解決するのにベストな選択」と話す。
今年の春に収穫した幼竹は、「キラメキノ未来」のセントラルキッチンに運ばれる。細かくカットし、ゆでたら2カ月間塩漬けに。使うその日に味付けする。久保田さんは、手間暇かけて作ったメンマを試験的に4店舗で提供。来年は全店舗に広げる予定だ。
日本で使われているメンマは、ほとんどが中国産などの輸入品。円安もあり、輸入メンマの価格は急騰し、3年前の1.5倍ほどになってしまった。久保田さんは流通する輸入メンマを減らし、国産メンマに替えていくことを強く望んでいる。
この日、久保田さんは京都・八幡市を訪れた。竹林の中で迎えてくれたのは、今年の春、久保田さんに幼竹を提供したグループのリーダー・佐藤均さん(82)。佐藤さんたちは地主の許可を得て、自分たちで食べるタケノコを採っているが、その代わりにボランティアで、竹林の整備をしている。
久保田さんは今年の春、こうしたグループ4つに声をかけ、幼竹を集めた。佐藤さんによると、竹林整備の費用は持ち出し。そこで久保田さんは、幼竹1本につき1000円で買い取ることにした。
「200本以上も納めさせてもらって良かった」と佐藤さん。今では、佐藤さんたちの活動の励みにもなっている。
次に久保田さんが向かったのは、上質なタケノコの産地、京都市西京区。京野菜として人気のタケノコや九条ネギを専門に作る上村和也さん、僚さん親子を訪ねた。
久保田さんは上村さんたちに「メンマプロジェクト」への参加を依頼。京都の竹で作ったメンマをブランド化し、関わる人が収益を得られるビジネスモデルを説明する。
上村さん親子にとっても、捨てていた幼竹がビジネスになることは願ってもないチャンス。上村さんが所有する竹林では、毎年10トンのタケノコを出荷しているが、育ち過ぎたものは一気に商品価値が下がってしまうのだ。
久保田さんの働きかけにより、息子の僚さんが周辺の農家にも声をかけ、幼竹を取りまとめてくれることになった。
久保田さんは京都産メンマを増やすため、精力的に動く。
さらに京都の美食の世界でも、京都産メンマプロジェクトは着実に進んでいた……。
福島・郡山市でも放置竹林の問題解消に向け、意外なプロジェクトが進んでいる。
その中心となっているのが、高橋明彦さん(62)だ。高橋さんの専門は橋の設計で、建設コンサルタント会社に勤め、全国に100以上の橋を造ってきた。
そんな高橋さんが今進めているのが、「竹筋コンクリート復活プロジェクト」。地元企業や大学と連携し、鉄筋の代わりに竹を使うという取り組みだ。
高橋さんが竹筋を知ったのは、20年以上前のこと。建て替えのために橋のコンクリートを調査した際、コンクリートを掘っていくうちに、鉄筋の代わりに竹の繊維が詰まっているのを確認したという。
実は日本各地には、竹筋を使った建造物が点在している。岩手・一関市にある「長者滝橋」(竣工1939年 登録有形文化財)は85年前に造られ、今も現役だ。一関市は東日本大震災で震度6弱を記録したが、橋には問題がなかった。
戦時中、日本のあらゆる金属が不足し、鉄不足を補うためにスポットが当たったのが竹筋だった。しかし戦後、鉄の供給が回復するとともに、竹筋の技術は忘れ去られていった。
高橋さんは「SDGsということが問われてきたので、竹でもできるものがあるだろうという発想を持った」と話す。
高橋さんは福島県で生まれ育ち、大学では土木工学を専攻。橋の設計者として名が知られる存在になってからも、ふるさと・福島にこだわって仕事を続けてきた。
「福島の竹害が顕著になっている。竹を使うことを産業化できれば、土砂災害も減っていく。建設・土木関係として、何かいい方向に持っていけないかというのを試行錯誤している状態」。
そこで高橋さんは、地元・郡山にある日本大学工学部・土木工学科 子田康弘教授に協力を求めた。子田教授が見せてくれた竹筋コンクリートの資料(昭和16年5月発行)によると、当時使われていた竹の強度は鉄の約2分の1。今の建築基準では、橋などの構造物に使うことはできない。
そこで高橋さんたちは、竹筋を工場で作るコンクリート製品に使ってみることに。竹筋コンクリートを製造するためには、竹の特性を科学的に把握し、それに適した製造方法が必要になる。
高橋さんと子田教授、まずは竹について基本的な知識を学ぶため、福島・喜多方市へ。
2人に竹の性質から組み方など、材料としての扱い方を教えた竹細工職人・佐々木智子さんは、「残る技術、本当に使われる技術になってほしい」と願う。
そもそも竹は、本当にコンクリート製品に使えるのか。竹を補強材として使う場合、重要なのはその壊れ方にあるようだ。日大工学部で行った実験では、補強材が入っていない場合、コンクリートは力が加わると音を立てて割れてしまった。果たして、竹筋が入ったコンクリートはどうなるのか、同じ荷重をかけてみるが……。
竹筋の製造設備もゼロから作らなければいけない中、高橋さんにさまざまな壁が立ちはだかる。果たして、前代未聞のプロジェクトの行く末は?
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今、利用価値を失って放置された竹林が、土砂災害のリスクを増加させ、獣害の温床となるなど、“竹害”と呼ばれる現象を引き起こしている。そんな竹をどう活かし、問題解決につなげるのか。“やっかいもの”をSDGsの主役に生まれ変わらせようと動く人々に密着した。
【動画】放置竹林が土砂災害のリスクに…秘策は「メンマ」?ラーメンで挑む竹害解消
中国産から純国産化を目指す「メンマプロジェクト」
4月。千葉・大多喜町では、観光バスで乗りつけた多くの人がタケノコ料理の専門店で舌鼓を打っていた。タケノコの旬の季節は3~5月頃までで、店は連日大盛況。一番人気は「たけのこ御膳」で、客は「おいしい」「本当に柔らかい」と喜ぶ。
大多喜町は首都圏有数のタケノコの産地で、店で出されるタケノコは、その日の朝に収穫したもの。
日本人の暮らしに恵みをもたらす竹は全国に分布するなじみ深い植物だが、多くの問題を抱えていた。
森林が7割を占める福島・会津美里町に住む高橋和子さん、幸太郎さん親子は、「竹やぶはいくらでも上までいっちゃう。それでもう手に負えなくなる」と話す。
竹は手入れを怠ると、すぐに森林の中まではびこり、山を荒らす。すると、タケノコを求めてやってくるイノシシやシカ、クマなどによる獣害が発生するのだ。
さらに竹は根を浅く張るため、近年多発する豪雨では、土砂災害のリスクが高まることも指摘されている。
全国的な問題となっている荒れ果てた竹林…その解決に向けて奮闘する人々がいた。
京都・嵐山にある「竹林の小径」は、美しく整備された竹が観光客の目を楽しませてくれるが、観光ルートから少し離れると、放置竹林が目に飛び込んでくる。
タケノコの成長力は目覚ましく、1日で1メートル以上伸びることもあり、放っておくとすぐに密集してしまう厄介者。
「荒れてるね。密集してきたら、もっと大変なことになる」と話すのは、京都で生まれ育った久保田雅彦さん(51)だ。
久保田さんは、京都府内で育ち過ぎたタケノコ「幼竹」を買い取ってメンマを作り、自身が経営するラーメン店で使い始めた。
鶏豚骨スープの塩ラーメン「塩のキラメキ」に添えられた京都産メンマ。客も「シャキシャキして食べ応えがある」と絶賛する。
久保田さんは、ラーメンチェーンを運営する「キラメキノ未来」(京都市伏見区年商12億円 従業員約260人)の社長を務め、放置竹林の資源化を図る「純国産メンマプロジェクト」に加入している。
メンマの原料は麻竹だが、日本ではほんど生えないため、主に孟宗竹を使う。久保田さんは、「ラーメン屋がすごい量のメンマを使うので、ラーメン屋が立ち上がって国産メンマ作りをすることが放置竹林問題を解決するのにベストな選択」と話す。
今年の春に収穫した幼竹は、「キラメキノ未来」のセントラルキッチンに運ばれる。細かくカットし、ゆでたら2カ月間塩漬けに。使うその日に味付けする。久保田さんは、手間暇かけて作ったメンマを試験的に4店舗で提供。来年は全店舗に広げる予定だ。
日本で使われているメンマは、ほとんどが中国産などの輸入品。円安もあり、輸入メンマの価格は急騰し、3年前の1.5倍ほどになってしまった。久保田さんは流通する輸入メンマを減らし、国産メンマに替えていくことを強く望んでいる。
この日、久保田さんは京都・八幡市を訪れた。竹林の中で迎えてくれたのは、今年の春、久保田さんに幼竹を提供したグループのリーダー・佐藤均さん(82)。佐藤さんたちは地主の許可を得て、自分たちで食べるタケノコを採っているが、その代わりにボランティアで、竹林の整備をしている。
久保田さんは今年の春、こうしたグループ4つに声をかけ、幼竹を集めた。佐藤さんによると、竹林整備の費用は持ち出し。そこで久保田さんは、幼竹1本につき1000円で買い取ることにした。
「200本以上も納めさせてもらって良かった」と佐藤さん。今では、佐藤さんたちの活動の励みにもなっている。
次に久保田さんが向かったのは、上質なタケノコの産地、京都市西京区。京野菜として人気のタケノコや九条ネギを専門に作る上村和也さん、僚さん親子を訪ねた。
久保田さんは上村さんたちに「メンマプロジェクト」への参加を依頼。京都の竹で作ったメンマをブランド化し、関わる人が収益を得られるビジネスモデルを説明する。
上村さん親子にとっても、捨てていた幼竹がビジネスになることは願ってもないチャンス。上村さんが所有する竹林では、毎年10トンのタケノコを出荷しているが、育ち過ぎたものは一気に商品価値が下がってしまうのだ。
久保田さんの働きかけにより、息子の僚さんが周辺の農家にも声をかけ、幼竹を取りまとめてくれることになった。
久保田さんは京都産メンマを増やすため、精力的に動く。
さらに京都の美食の世界でも、京都産メンマプロジェクトは着実に進んでいた……。
救世主となるか!? “竹筋コンクリート”
福島・郡山市でも放置竹林の問題解消に向け、意外なプロジェクトが進んでいる。
その中心となっているのが、高橋明彦さん(62)だ。高橋さんの専門は橋の設計で、建設コンサルタント会社に勤め、全国に100以上の橋を造ってきた。
そんな高橋さんが今進めているのが、「竹筋コンクリート復活プロジェクト」。地元企業や大学と連携し、鉄筋の代わりに竹を使うという取り組みだ。
高橋さんが竹筋を知ったのは、20年以上前のこと。建て替えのために橋のコンクリートを調査した際、コンクリートを掘っていくうちに、鉄筋の代わりに竹の繊維が詰まっているのを確認したという。
実は日本各地には、竹筋を使った建造物が点在している。岩手・一関市にある「長者滝橋」(竣工1939年 登録有形文化財)は85年前に造られ、今も現役だ。一関市は東日本大震災で震度6弱を記録したが、橋には問題がなかった。
戦時中、日本のあらゆる金属が不足し、鉄不足を補うためにスポットが当たったのが竹筋だった。しかし戦後、鉄の供給が回復するとともに、竹筋の技術は忘れ去られていった。
高橋さんは「SDGsということが問われてきたので、竹でもできるものがあるだろうという発想を持った」と話す。
高橋さんは福島県で生まれ育ち、大学では土木工学を専攻。橋の設計者として名が知られる存在になってからも、ふるさと・福島にこだわって仕事を続けてきた。
「福島の竹害が顕著になっている。竹を使うことを産業化できれば、土砂災害も減っていく。建設・土木関係として、何かいい方向に持っていけないかというのを試行錯誤している状態」。
そこで高橋さんは、地元・郡山にある日本大学工学部・土木工学科 子田康弘教授に協力を求めた。子田教授が見せてくれた竹筋コンクリートの資料(昭和16年5月発行)によると、当時使われていた竹の強度は鉄の約2分の1。今の建築基準では、橋などの構造物に使うことはできない。
そこで高橋さんたちは、竹筋を工場で作るコンクリート製品に使ってみることに。竹筋コンクリートを製造するためには、竹の特性を科学的に把握し、それに適した製造方法が必要になる。
高橋さんと子田教授、まずは竹について基本的な知識を学ぶため、福島・喜多方市へ。
2人に竹の性質から組み方など、材料としての扱い方を教えた竹細工職人・佐々木智子さんは、「残る技術、本当に使われる技術になってほしい」と願う。
そもそも竹は、本当にコンクリート製品に使えるのか。竹を補強材として使う場合、重要なのはその壊れ方にあるようだ。日大工学部で行った実験では、補強材が入っていない場合、コンクリートは力が加わると音を立てて割れてしまった。果たして、竹筋が入ったコンクリートはどうなるのか、同じ荷重をかけてみるが……。
竹筋の製造設備もゼロから作らなければいけない中、高橋さんにさまざまな壁が立ちはだかる。果たして、前代未聞のプロジェクトの行く末は?
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