“30万円の絵画”が売れる!日本から世界へ「ヘラルボニー」のアートビジネス:ガイアの夜明け
更新日:
イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
注目の旬ニュースを編集部員が発信!「イチオシ」は株式会社オールアバウトが株式会社NTTドコモと共同で開設したレコメンドサイト。毎日トレンド情報をお届けしています。
9月20日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、SDGsウイーク「異彩を放て!世界へ~誰もが輝く社会へ」。
「誰一人取り残さない」ことを誓った世界共通の目標「SDGs」。目標達成の根幹をなすとされるダイバーシティ(多様性)に強い信念で取り組んでいるのが、岩手県に本社を置く「ヘラルボニー」だ。主に知的障害のあるアーティストとライセンス契約を結び、2000点を超えるアートのデータを活用した商品企画・販売を手掛けている。
障害のある人たちの可能性を広げ、ともに未来を切り開こうとする挑戦者たちの姿を追った。
【動画】“30万円の絵画”が売れる!日本から世界へ「ヘラルボニー」のアートビジネス
大手企業と続々協業!「異彩」を放つアート作品
この日、老舗百貨店「阪急うめだ本店」(大阪市)の催事場は、多くのお客でにぎわっていた。売られていたシャツやネクタイは、どれも斬新な柄が目を引く。
ある客は「色味がとてもすてき」と、女性の顔が独特の筆遣いで描かれたスカーフ(2万2000円)をお買い上げ。
隣のスペースで売られている絵画も、個性的な作品ばかり。客が購入したのは、アクリルペイントの色彩豊かな線や点が印象的な作品で、価格は38万5000円。
「引きつけられる。迷わず買った。たまたま障害のある方が描かれたと聞いて、さらにすごいなと思った」と、その魅力を話す。実はこれら全て、障害のある人たちの作品だ。
イベントを主催しているのは「ヘラルボニー」(岩手・盛岡市)という会社で、障害があるアーティストの原画やライセンス契約したデザインを商品化して販売。作家241人と契約して作品自体の販売を手掛ける他、2000点以上の作品をデータとして管理し、アパレルやアメニティーグッズのデザインとして展開している。
会社を運営しているのは、双子の兄弟、兄・松田文登さん(33)と弟の崇弥さん(33)。2018年に創業した「ヘラルボニー」は東京にも拠点があり、時代の波に乗って成長を続けている。
これまでにないアートビジネスについて、崇弥さんは「著作権のデータでIPの管理をして、商品化する。作家さんや親御さんの許諾を取れば経済が動いていくのではないか」と話す。
この日、文登さんが訪ねたのは、大手カメラメーカー「ニコン」(東京・品川区)。9月に発売する新作カメラ「ニコン ヘラルボニー Z fc」のボディーデザインは全て「ヘラルボニー」の契約作家のもので、数年前から共同開発を進めてきた。
今やこうした大企業とのコラボが「ヘラルボニー」の事業の柱に。SDGsの時代、大企業の積極的な取り組みも追い風になっていた。
「ヘラルボニー」は「JAL」とも協業を始め、国際線のビジネスクラスのアメニティーや機内食の紙の帯など、「ヘラルボニー」の作家のデザインが採用されている。
7月上旬。文登さんは、JALの機内で使う紙コップの打ち合わせに。ベースのデザインには、福祉施設「やまなみ工房」(滋賀・甲賀市)に在籍する水上詩楽さんの原画が採用された。「JAL」でプロジェクトリーダーを務める松本有紗さんは、「多様性。一人一人がありのまま輝ける、そのままを肯定できるような社会を目指すということを掲げている」と話す。
文登さんはそんな松本さんたちの思いに応えようと、「やまなみ工房」に「JAL」のチームを招待。早速工房を案内すると、そこには、思い思いに作品に向き合う障害のある人たちの日常が広がっていた…。
「ヘラルボニー」松田兄弟ビジネスの原点
松田兄弟のビジネスの原点は、岩手・花巻市にある「るんびにい美術館」との出会い。ここに飾られている作品は、すべて障害のある作家のもので、17年前から無料で公開している。
そして美術館の2階は、作家たちが創作活動をするアトリエになっていた。
この施設に在籍する小林覚さん(35)は、松田さんたちと古くから交流がある作家で、これは数字をつなげた作品だそう。文登さんは「障害や福祉という言葉が一切関係ないぐらいフラットに感動した。これを社会に届けたいと思った時、作家のアートに対してリスペクトを持ったものづくりをやりたいと強く思った」と、起業の理由を明かす。
小林さんの作品を使って生まれたのが、このネクタイだ。ユニークなタッチをそのまま再現し、松田さんたちの最初の商品になった。「ヘラルボニー」は、原画など作品自体の販売では40パーセント、デザインを活用した商品の場合は5パーセントの使用料を作家に払っている。小林さんの去年の収入は、200万円ほどだった。
「福祉をビジネスにしていくのは、どうしても水と油というか…。本当に営利としてやっていくのは、なかなかハードルが高かった」と文登さん。
一方、覚さんの母・小林眞喜子さんは、「松田さんが、ネクタイをわざわざ持ってきてくれた。それを手にした時、立派ですてきで本当に感動した。そのうちすてきな作品がいっぱい発売されて、覚の収入が発生するようになった。前は障害者年金で覚の生活をやりくりしていたが、今は覚の収入で覚の必要なものは買えるようになった。私たちも若くないので、これからのことを考えるととても助かる」と話す。
岩手県にはもう一つ、松田兄弟が「ヘラルボニー」を立ち上げた原点がある。それは、重い自閉症がある4歳年上の兄・翔太さんの存在だ。
3人は幼い頃から仲良しだったが、成長するにつれ、双子の兄弟は友人たちの心ない言動から障害に対する偏見を感じるように。しかし大人になるにつれ、自然と「兄のような人たちと関わる仕事がしたい」そう考えるようになった。
これは翔太さんが子どもの頃に使っていたノート。そこに何気なく書き記されていたのが「ヘラルボニー」という文字だった。「最終的には兄が幸せに生きていく、それを目指していくことが、全ての障害のある方たち、いろんな人たちの一歩になる」と文登さんは話す。
「誰もが輝く社会へ」…日本発世界への挑戦!
5月下旬、フランス・パリ。「ヘラルボニー」は新たな挑戦を始めていた。世界中からスタートアップ企業などが集まる見本市「VIVA TECHNOLOGY 2024」の一画にブースを設け、自分たちの商品を展示することになったのだ。
このイベントの最大の目玉が、モエヘネシー・ルイヴィトンが主催する「イノベーションアワード」。受賞すると、世界最大の高級ブランドグループから、オフィスの提供や取引先の紹介といった手厚いサポートが受けられる。世界中のスタートアップ企業にとって大きなチャンスで、受賞できるのはエントリーした89カ国1545社中わずか6社だが、「ヘラルボニー」は、見事世界の6社に選ばれた。
受賞から半月後のパリ。崇弥さんと「ヘラルボニー」海外担当の小林恵さんを待っていたのは、フランスに本社を置く世界的な保険会社「アクサ」の人たち。崇弥さんは、日本で始めたビジネスモデルを芸術の国・フランスで力説する。今や事業の柱に成長した企業とのコラボ、これを世界進出の足掛かりにしようとしていたのだ。
7月下旬。東京に戻った崇弥さんは、世界進出に向けた商品作りに取り掛かっていた。人気のスカーフを海外向けに生地から作り直し、2カ月後に開かれる世界的なイベント「パリ・ファッションウィーク」に打って出ようというのだ。
早速、管理する2000件のデータの中から、ヨーロッパでも人気となりそうなデザインを新たに選ぶ。通常、制作するには半年かかるが、「パリ・ファッションウィーク」まで2カ月…果たして、世界にアピールできるスカーフは出来上がるのか。そして今回、崇弥さんがどうしてもタッグを組みたかった相手とは――。
この放送が見たい方は「テレ東BIZ」へ!
記事提供元:テレ東プラス
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。