笹川平和財団、「和平調停センター」を設立 国際紛争解決に向け、対話と和平プロセスを支援
イチオシスト
世界各地で武力紛争が複雑化、長期化している。この状況に対話と調停を通じて和平へのプロセスを支援する拠点として、笹川平和財団(東京)は日本財団(東京)の助成を受けて4月1日に、「和平調停センター(Center for Mediation Support)」を発足した。同日、東京都内で記者会見を行った。
■民間レベルで和平プロセスを支える
世界各地の平和構築のプロセスで日本はこれまで、紛争終結後の復興支援などに携わってきた。今回発足した「和平調停センター」は、紛争終結以前の和平プロセスにも関与していくという。ただし、紛争当事者の間に立つ調停者となることを目的とせず、和平プロセスを支える「調停支援」に取り組んでいくとしている。対象地域は、東南アジア・南アジア・西アジア。紛争が続く地域で、以下のような実践的な支援を行う。
(1)紛争当事者や関係者の間での対話の促進。対話の場づくり
(2)和平プロセスに関わる関係者を対象とした能力強化研修の実施
(3)関係者の招へいや交流を通じた経験・知見の共有
(4)地域の状況に応じた実践的な和平調停支援の展開
会見で、笹川平和財団名誉会長・日本財団名誉会長の笹川陽平氏は、自身が、2013年に日本政府からミャンマー国民和解担当日本政府代表の任命を受け、少数民族と政府との複雑な闘いの調停に取り組んできたことを挙げた。そして、「世界各地でさまざまな形態の紛争が起きており、表向きには各国の首脳が解決に向けて会議をしているが、その陰には、和平調停の専門家たちがきちんと下話をつけているということがよく見受けられる。紛争解決の一番簡単な方法は武力行使をすること。しかし、武力なしで、あるいは武力が行使されていてもそれを調停によってやめさせ、市民がむやみに殺されることを最小限に防ぐために、調停の専門家の存在が必要だ」と述べた。そして、「世界の情報をしっかりと把握すること、人的ネットワークを作ることが重要。(政府としての肩書がある)肩書外交ではできず、民間レベルだからこそできる率直な議論や、立ち入った支援がある」と、今回センターの立ち上げの経緯を説明した。
笹川平和財団理事長の角南篤氏は、「笹川平和財団グループの世界での活動が、長年にわたって評価され、世界のどこに行っても信頼を肌で感じてきた。同財団への期待が紛争地域からも上がっている。センターを立ち上げたことで、紛争地域に巻き込まれている皆さんに、支援に取り組んでいくというきちんとしたメッセージを伝えられるのではないか」と述べた。そして、「今回のセンター立ち上げにより、意欲のある若者たちにも語学や専門分野などを生かしてもらい、紛争調停分野のスキルを引き継いでいきたい」とした。紛争地域での活動のポイントについて、「目立たず、後方でしっかりと和平に向けた調停をやっていけることが、民間レベルの活動の強みだ」と述べた。
■“1つのアジア”としてできることを
和平調停センター長に就任した笹川平和財団の堀場明子氏は、インドネシアを中心とした東南アジア専門で長年、和平調停支援に取り組んできた実績を持つ。「いろいろな言語ができる研究者と、われわれも一緒に現地に行き、混とんとしている世界の平和・安定のために日本として何ができるかを分析し、平和のためのどのような介入ができるのかを検討していきたい」。さらに、「われわれは、今、大混乱に陥っている中東もアジアと考えている。“中東”という考え方そのものが、植民地支配からのロンドンから見て“東”という視点。日本からすると、今のアラブの国々を“西アジア”ととらえている。“1つのアジア”として、アジアがもっと連携して平和のために何かできるのではないかと考えている。世界の奥まったところでも、ニーズがあれば、現地に行って何ができるか考えていきたい」と述べた。
日本はこれまで、政府や民間による長年の国際協力を通じて多くの国との信頼関係を培ってきたこと、特定の宗教的立場を背景に持たないことから、比較的中立の存在として受け止められることも多いという。これらの特徴を生かし、同センターは、多様な立場の国や地域と対話を行っていくことを目指すとしている。
■地域研究のハブにも
同センターはまた、日本の地域研究者の知見を結び付けるハブとして、紛争地域とその周辺地域を研究する専門家のネットワーク形成を目指す。学術的な分析を通じて紛争の構造や背景を理解し、和平調停に生かしていく。さらに国際社会で和平調停に携わる関係者との連携も深め、日本の知見や経験を世界と共有していくという。
日本では、防衛力の強化や防衛費の拡大をめぐる議論が、大きな関心を集めている。同財団は、こうした議論は重要であると同時に、世界各地で紛争が多発し激化する中で、対話や調停によって紛争を早期に止めたり、未然に防いだりする取り組みにも、より多くの関心が向けられるべきだとしている。国際秩序の在り方が揺らぐ中で、紛争の予防や和平プロセスを支える取り組みが、今後ますます重要になるとしている。
3月に外務省内部に「国際和平調停ユニット」が設置されたことに関して、同財団は、連携を取っていくとした上で、「(外務省の国際和平ユニットは)連立政権合意によるもので、たまたま設立のタイミングが似ていた。役割分担については、われわれにしかできないことがたくさんある。それを1つ1つしていくことが、おのずからの役割分担になっているくのかなと思う」とした。
会見では、女性の視点についての質問も出た。堀場氏は、「2000年に国連で決議された(持続可能な開発のための2030)アジェンダで、どれだけ和平プロセスの中に女性が入っていけるかということがポイントになっていた」とした。その上で、ネゴシエーション(交渉)やメディエーション(対話)に、女性の声をどれだけ取り入れていくかという観点は非常に大切だと思っており、続けて取り組んでいきたいと話した。
■現在の紛争地域を優先に
同センターの任務としては、紛争で対立している地域への調停を優先にしていくという。また、地域紛争調停のスキルを伝える中で、関わる各人が持つ語学・政治面の知識やスキルと掛け算し、人材育成につなげていきたいとした。
調停には、武装勢力との対話、それ以前に、どのように武装勢力とコミュニケーションを取り対話するかという難しさもある。積み重ねる信頼関係、根気強さなど、欧米が取り組む地域紛争調停トレーニングとは異なる視点からのアプローチもしていきたいという。同センターは、当面は10人程度の規模からスタート。既に海外の団体からも協力の話が来ているといい、いろいろな活動と連携しながら、規模を拡大していきたいとしている。
記事提供元:オーヴォ(OvO)
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