Wolt撤退、特別報酬の大幅アップ......。この春に起きたフードデリバリー業界の大きな変化【チャリンコ爆走配達日誌】
イチオシスト

Woltの撤退、特別報酬の乱発など、この春にウーバーイーツ界隈で起きたことを紹介します
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第144回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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前回「ウーバーイーツ自転車配達員じゃなくても知っておきたい『自転車青切符』の新ルール」で紹介した道路交通法の自転車に関するルールの改定をはじめ、春は日常生活の幅広い場面で新たな取り組みが始まったり、制度変更によるサービス廃止などが出てくる季節です。
そこで今回はフードデリバリー界隈、特に配達員の身の回りでこの春起こっている変化を紹介したいと思います。
ロケットナウの登場から1年。デリバリーの範囲を広げていく中、ウーバーイーツで春先あたりから起きているのが配達員を縛る特別報酬の乱発です。
昨年の今頃は4日間で100件の配達を行なうと配達料のほかに8000円ほどの特別報酬がもらえました。ですが、今年の3月下旬に私の元に届いたのは130件で7万1500円の特別報酬がもらえるというお知らせ。1件あたりの金額が7倍ほどに跳ね上がっています。
また、これまでは配達距離が長すぎる、配達先付近は住宅しかないエリアなので配達すると次の配達依頼が入りにくくなるといった理由で配達を受けない自由がありましたが、先ほどの130件で7万1500円の特別報酬は195回以上拒否できないという仕様となっています。
私は基本的に来た依頼をすべて受けるタイプなので「195回も拒否できるのか」と思いましたが、専業で稼ぐ人の場合は配達依頼を拒否して効率よく稼がないと生活に影響が出るのでしょう。195回の拒否回数が少ないと感じる人もかなりいるようです。
注文される方にとっては「そんなに拒否されては迷惑だ」と感じる方もいると思います。ですが、距離の長い配達のほうが商品の受け取りや受け渡しの回数が減るので精神的に楽と考える配達員や、配達先の住宅街の近くに自宅があるので帰り道の配達にちょうどいいと感じる配達員もいます。
運営側もこの配達依頼の拒否を前提としたビジネスモデルを構築していると思います。現に運営側と私が執行委員長を務める組合との争いの場で運営側は、「配達依頼を自由に拒否できるから、あなたたちは労働者ではない」といったような主張しています。ただ、思った以上に配達員がロケットナウに流れ、配達員不足や注文から商品到着までの時間が長くなっていると感じているのでしょう。
ちなみに、この特別報酬の金額はランダムに決められているようで、私は7万1500円でしたが、同じ130件でも1万8600円しかもらえない配達員もいたようです。
注文される方にとって大きな話題はウーバーが一部店舗で「店と同じ価格」というサービスを始めたことでしょう。ロケットナウや出前館などではすでに導入されていましたが、業界最大手のウーバーイーツが始めたことでフードデリバリーはより一層気軽に利用できるものとなるでしょう。
個人的に一番大きいと感じたニュースは、2020年から日本でフードデリバリーサービスをスタートしたWoltの撤退。
ウーバーイーツ、ロケットナウ、出前館、menuなどなど、多数の事業者がフードデリバリー事業に参入する状況や経営状況を鑑みて、撤退するのが適切と判断したのでしょう。
撤退に関しては仕方ないと思うのですが、配達員界隈でざわついたのは、配達員が撤退を知ったのが報道とほぼ同じ、事業停止のわずか1週間前だったということ。
フードデリバリーで稼ぐ人の多くは複数の事業者で配達員登録をしています。Wolt撤退のニュースを見ても「だったらウーバーやロケットナウに切り替えるか」ぐらいに考えているかと思いますが、今回の事例が配達員に対する事業撤退告知を1週間前に行なえばOKという前例として定着した場合はどうなるでしょう。
先ほど紹介した「店と同じ価格サービス」をどこよりも早く導入したWolt。もし、撤退の原因が値下げ合戦に耐えきれなかったものだとしたら、同じサービスを導入するウーバーイーツ、ロケットナウ、出前館など、大手の事業者も撤退の可能性はゼロではないでしょう。
世界的に見るとウーバーはフードデリバリーよりもタクシー事業が主力のようなので、日本でタクシー事業の認可が出たら、その瞬間に「1週間後にフードデリバリーのサービスをやめます」なんてことがあるかもしれません。
韓国企業が展開していたフードデリバリーのフードネコは、ドイツ企業のフードパンダに吸収され、その1年後にフードパンダが日本から撤退しました。今は勢いがあるロケットナウも韓国の企業。いいタイミングを見つけて別の国の企業に売却するなど体制が大きく変わって、その後撤退というパターンもあるかもしれません。
とりあえず事業から撤退することになっても、配達員は次の仕事先を見つけなければならないので、直前ではなくせめて1ヵ月、可能であれば3ヵ月ほど前には告知してもらいたいものです。
文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明
記事提供元:週プレNEWS
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