不動産事情通が「住みたい街ランキング」ウラ読み座談会で、あーだこーだ邪推!
イチオシスト

歯止めの利かない首都圏の不動産高騰。その中で「住みたい街ランキング」にも異変アリ!? SUUMOやLIFULLの最新ランキングを酒のツマミに、不動産事情通たちが忖度なしの裏トークを展開!
【都心から脱出するエリートたち】今年も発表された各社の「住みたい街ランキング」(表参照)。しかし、その数字の背後には首都圏に住まう人々の切実な心情が透けて見える? 不動産事情通の3人によるウラ読み座談会がついに開幕!
●峰不二夫
都内にて不動産業を営むネカマ。昨今の不動産価格高騰についていけず、高円寺にて「cafe&bar中間省略」、コンセプトカフェ「余白」を営業して現実逃避をしている
●窓際三等兵
早稲田大学社会科学部卒、42歳中年男性という設定のXアカウント。作家・外山薫の父親の息子
●あくのふどうさん
広域渋谷圏を根城にする悪徳不動産ブローカー。調達金利の加重平均は321bp。セゾンファンデックスの利払いで毎月各口座がのたうち回っています。明海大学不動産学部非常勤講師

(左から)あくのふどうさん、窓際三等兵、峰不二夫
――SUUMO「住みたい街ランキング」では、今年も1位の「横浜」を筆頭に盤石の顔ぶれが上位を占めています。
峰不二夫(以下、峰) 上位の「恵比寿(えびす)」や「東京」「品川」は1LDKで賃料20万円超えが当たり前のエリア。これらは憧れが先行した結果に見えますね。
窓際三等兵(以下、窓際) まさに憧れと実需が混ざった印象。12位に「船橋」が入って「渋谷」や「目黒」に追いつきそうな順位ですが、本当に住みたいかと問われると......。
あくのふどうさん(以下、あくの) 船橋、ファミリーにはめちゃくちゃ人気だけど。
窓際 そうなんです。都心へのアクセスもいいし、生活圏にはららぽーともあって、実需として完成されています。
ただ、ひとり暮らしが憧れる目黒などと同じ土俵で語るには、回答者の属性が混在しすぎている気がします。
あくの ライフステージの違う層もまとめてアンケートを取ると、どうしてもそうなる。
峰 その点、2位「大宮」や11位「浦和」はいわば「都市完結型」の街。駅周辺で買い物・子育て・仕事が完結するポテンシャルが魅力です。
今の相場では都心に固執せず、郊外の拠点駅でQOLを確保するほうが、共働き世帯の生存戦略として合理的だと支持されているんでしょう。

【大宮】駅周辺で生活が完結する、まさに「都市完結型」の聖地。共働き世帯の支持を集め、各ランキングで上位圏内を保つ
あくの 実需でいうと、俺たちの愛する「豊洲(とよす)」が上位圏外(52位)なのは意外。子育て世帯に支持されてるイメージだけど、湾岸信奉者って実はネットの一部なのか?
窓際 豊洲はファミリーで住む前提の街だから、単身層からは選ばれず、一方で実需層も今の豊洲は高すぎて手が出せず、より遠い郊外へ流れている。結果として、どちらからも選ばれなかった、とか?
峰 確かに。
窓際 キラキラしたエリートサラリーマンのパワーカップルの間でも、最近はあえて郊外を選ぶ事例が増えた印象です。
先日も「流山(ながれやま)おおたかの森」(16位)の中古マンションが8000万円で売りに出ていて界隈がざわついてました。
峰 流山で8000万円の値づけは強気だ。でも、需要があるってことですよね。
窓際 以前、埼玉の不動産事情に詳しい「すんで埼玉」さんと話したんですけど、高収入でもあえて浦和や大宮を選択する世帯が増えているとか。
今の相場だと、年収2000万円でも都心では50㎡の部屋にしか住めない。家族4人でせせこましく資産価値を気にして生きるより、埼玉や千葉の拠点駅の〝王〟として悠々自適に生きるのが正解なのかも。
【検索の果てに......」たどり着いた終着駅】――続いて、実際に物件が検索された数で集計されるLIFULL HOME'S版の「買って住みたい街ランキング」は1位が「湯河原(ゆがわら)」、2位が「八王子」、3位が「八街(やちまた)」と郊外志向が鮮明です。
峰 湯河原は移住助成など自治体の努力が光りますが、東京まで在来線で90分超。毎日通勤は正直厳しそう。
あくの 週末を過ごすなら最高だけどね。フルリモート層なら案外暮らせるのか。
峰 八王子は「買って」も「借りて」も2位。近場の「立川」の価格が上がりすぎた分、お得さが際立っています。
あくの 立川より西は価格がガクンと下がる。それでいて、八王子は地元愛も強い。
窓際 私は教育の視点で街を見ることが多いのですが、八王子には文教都市という側面がある。学区によっては意識の高い家庭が集まっていて、公立小中学校のレベルも非常に安定しています。
峰 子育て環境としての質も評価されているわけですね。
窓際 このランキングの分析を手がけるLIFULL HOME'S総研の中山登志朗(としあき)さんも語っていましたが、もはや中流階級には都心まで一本で通える「ちょっと遠い場所」しか選べないのが現実です。
だから3位の八街なんて、まさに究極の現実路線。お父さんたちが頑張って1時間半かけて都心に通勤する姿は、なんだかバブル期を彷彿とさせる。

【八街】「買って住みたい」3位に急浮上。都心の高騰に耐え切れない実需層が、検索の果てにたどり着いた終着駅
峰 まさに今、千葉ニュータウン周辺がプチバブルで、3500万円の一戸建てが再販5500万円で動いている。その波にはじき飛ばされ、ポータルサイトで検索条件を下げ続けた人が最後にたどり着く「実需の終着駅」が八街だった......ということでしょう。
あくの 年収と年齢のフィルターでエリアが自動的に決まる。残酷なランキングだよね。最近の若いコなら「50年ローン」という超長期の禁じ手を使えるけど、40代は35年が限界。この差は大きい。
窓際 20代のイケイケな共働き世帯なら、50年ペアローンの全額融資で1.6億円の物件を平気で買いますが、40代の実需層にそのリスクは取れない。
峰 昨年の「買って住みたい街ランキング」で1位の「勝どき」が今年、34位へ急落したのは、一般層が手を出せない価格にまで突き抜けてしまった証左かも。今や、含み益のあるマンションクラスタが内輪で物件を回しているだけの街とも言えそうです。
窓際 マンションブロガーたちを信じて早くに投資した人だけが「住宅すごろく」というゲームを享受できている。
それ以外の人にとって、勝どきはもはやロンドンやニューヨークのような遠い海外の街に近い。だからこそ、界隈でディスられるとエンタメとして盛り上がる(笑)。
あくの (笑)。でも夕方の月島や勝どきへ行くと圧倒されるよ。「私は含み益1億円あります」という余裕の表情で道行く人が皆、犬の散歩をしている。
窓際 かつての埋め立て地というイメージは消え、住人の階層そのものが変わりましたね。
【1LDKで家賃10万円の最終防衛ライン】――LIFULL HOME'S版の「借りて住みたい」は「葛西」が昨年に続き1位です。
峰 葛西1位はリアルですよね。江戸川を渡れば家賃はガクンと下がるのに、あえて葛西で「東京アドレス」を死守したい意地を感じます。
窓際 「借りて住みたい」上位駅は「八王子」とか「本厚木」とか、どれも1LDKで10万円前後。みんな「上限10万円」のフィルターで必死に検索しているんでしょうね。
あくの でも、今の20代にとって「家賃10万円」ってどう映るんだろう。一部の大手なら20代で年収700万円超えも珍しくない。そうなると、月10万円の家賃をかけ捨てするより、低金利のローンを組んで資産性の高い物件を買うフェーズに移行する層も多そう。
窓際 「初任給40万円」なんて景気のいい見出しは、ごく一部のファンタジー。多くの若者は、上がる家賃に所得がまったく追いつかない。このランキングは、住居費に資産を食い潰されないための「防衛ライン」の羅列に見えます。
峰 このランキングは、彼らが都心近郊で生き残るための、極めて理にかなった生存戦略の縮図ですよね。
あくの そう見ると、今のマーケットの残酷なまでの実態がよく出ている、いいランキングだね。

【葛西】「借りて住みたい」2年連続1位。家賃10万円を死守しつつ東京アドレスを諦めない者たちの防衛ライン
――ちなみに急上昇ランキングというのもあって、そちらは1位の「方南町」や2位の「不動前」など「ずらし駅」が目立ちます。
峰 「ずらし駅」は主要駅の利便性を享受しつつ1駅ずらして家賃を抑える戦略。特に方南町は東京メトロ丸ノ内線の始発駅で、座って通勤・通学できる強みがタイパ重視層に再評価されたんでしょう。
あくの 賃貸仲介の現場でも鉄板の提案だよね。不動前なんかは「本当は隣の目黒がいいんだけど」という妥協が透けて見えて涙ぐましい。
――最後に、プロの視点から今あえて推したい街を教えてください。
あくの 私は「駅」ではないけど、三軒茶屋と下北沢の間に位置する「茶沢通り周辺」かな。最寄り駅から徒歩10分以上かかる分、家賃相場がグッと抑えられるエリア。
駅から10分超の「駅遠」ゆえに安い。でも平坦な道が多いから、自転車ひとつで池尻・三茶・下北がすべて生活圏になる。城南の利便性を使い倒すには最高の穴場。
峰 僕はJR京葉線の「検見川浜(けみがはま)」駅(千葉)を推したい。今、都心近郊では5000万円出しても狭小住宅しか買えませんが、ここなら50坪超えのゆとりある一戸建てが射程圏内です。
東京駅まで快速で35分前後だし、ファミリー層が生活の豊かさを重視するなら非常に賢い選択。キラキラした「湾岸タワマン」の喧騒に疲れた層にこそ、地に足の着いた「沿岸」というライフスタイルを提示したいですね。
窓際 私は「海浜幕張」駅(千葉)ですね。東京の東側勤務なら通勤も十分現実的だし、何より街全体の完成度がすさまじい。
いわば「ジェネリック湾岸」ですが、無機質な都心のビル群とは違い、広大な公園や美しい並木道が完璧に整備されている。資産価値の騰落ばかりを気にする殺伐とした世界とは無縁の、圧倒的な「幸福感」が街全体に漂っています。
取材・文/栗林 篤 イラスト/市橋俊介 写真/PIXTA
記事提供元:週プレNEWS
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