バネ下30kg軽量化の衝撃。ハーレーダビッドソン新型トライク&「リバティエディション」が魅せるアメリカンエンジニアリングの真髄
イチオシスト
東京モーターサイクルショー2026でハーレーダビッドソンが魅せた技術の神髄。ド・ディオン式サスペンションを採用した新型トライクや、アメリカ建国250周年限定モデルの詳細を、トップギア流の視点で徹底解剖する。
東京モーターサイクルショー。ここは最新の電子制御デバイスや、風洞実験室で削り出されたかのようなカーボンファイバーの塊、そして1000ccを超えるスーパースポーツたちが、己の存在意義を賭けて火花を散らす、極めて騒々しくも愛すべき見本市である。我々トップギアの人間は、エンジニアリングの極致を見せつけられるたびに、知的好奇心を満たされると同時に、少しばかりの疲労を覚えるのも事実だ。
しかし、西3ホールの巨大な一角に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。そこには、チタン製のエキゾーストノートとは異なる、重厚で、おおらかで、どこかバーボンウイスキーの香りが漂ってきそうな空間が広がっていた。ハーレーダビッドソンである。
「ハーレーダビッドソンの新たなイノベーション」と銘打たれた今回のブースには、2026年モデルを中心に17台の最新モーターサイクルが鎮座していた。我々イギリス人にとって、アメリカのモーターサイクルといえば「巨大な鉄の塊に、農耕機のように巨大なエンジンを載せてルート66をひたすら真っ直ぐ走るもの」という、いささかステレオタイプな偏見があったことは否定しない。しかし、今年のハーレーは違う。彼らは伝統という名の重いレザーライダースを羽織りながらも、その下には最新鋭のチタンアーマーを着込んでいたのだ。
プレスカンファレンスのステージに登壇したハーレーダビッドソン ジャパン株式会社の玉木一史代表は、自信に満ちた表情で集まった報道陣に向けてこう切り出した。
「2026年のハーレーダビッドソンを象徴する17モデルを、ぜひご覧ください。今年は多数の体験型プログラムもご用意しています。人生の中における“現実の選択肢”として、ハーレーダビッドソンと共にあるライフスタイルを想像できる機会になれば幸いです。ぜひあなたの目と体で、ハーレーダビッドソンの世界を体験してください」
彼の言葉には、単に「新しい機械を作ったから買ってくれ」という無粋な響きはない。
「我々はバイクだけを売る会社ではなく、ライフスタイルをご提案するブランドであり続けたいと考えております。ハーレーダビッドソンはモーターサイクルだけでなく、人の生き方そのものを映し出すブランドであります」
この哲学を最も端的に表しているのが、2026年モデルの「ナイトスター(Nightster)」だろう。このモデルは、伝説のフラットトラックレーサーである「XR750」のDNAを色濃く受け継いでいる。2026年モデルには、スポーツの伝統を強調する「ブラッドオレンジ」の新しいグラフィックが採用された。3つのライドモードや最新の安全性能というモダンなパフォーマンスを、クラシックなヘリテージの皮で包み込んだ一台だ。
驚くべきはその価格である。ダークビリヤードグレーのモデルで1,488,800円(税込)。あのハーレーダビッドソンが、150万円を下回る戦略的なプライスタグを下げてきたのだ。これについて玉木代表は熱く語る。
「この価格の意味は単に手に届きやすくすることではございません。これまで憧れとして語られてきたハーレーを、人生の中で現実の選択として想像できる存在へ近づける。それがナイトスターの役割です」
見事な戦略だ。パブで「いつかはハーレー」と管を巻いていた男たちから、言い訳を奪い去る価格設定である。
しかし、我々トップギアの読者のような、高度なエンジニアリングに目がないエンスージアストにとって、今回最大のニュースは「トライク(3輪)」シリーズの劇的な進化だろう。普通自動車免許でも運転可能なこのシリーズにおいて、過去最大規模とも言える大刷新が行われたのだ。
展開されるのは「ロードグライド 3」「ストリートグライド 3 リミテッド」、そして最高級カスタム仕様の「CVO ストリートグライド 3 リミテッド」の3モデル。特筆すべきは、その下回りに隠された革命である。なんと、ハーレーダビッドソンが全く新しいAアームを採用した「ド・ディオン式」リアサスペンションを開発したのだ。
聞いて驚いてほしい。この新設計シャシーにより、ホイールトラベル(サスペンションの作動量)は従来の2.3インチ(58.4mm)から、2倍以上の5.0インチ(127mm)へと飛躍的に向上。さらに、ばね下重量を約30kgも軽量化することに成功している。アメリカ人がバネ下重量の重要性にこれほど真剣に向き合ったのは、おそらくアポロ計画以来の出来事ではないだろうか。
玉木代表のプレゼンテーションは、さらに深く技術的な背景にも踏み込んでいった。我々が最も気になるであろう、新型トライクシリーズにおけるこの並大抵ではない軽量化が、実際のライディングにおいてどのような劇的な変化をもたらすのか。彼は自信に満ちた声でこう解説した。
「バネ下重量を約30kg軽量化した効果は、まさに劇的です。新たに採用したAアーム式のリアサスペンションとの相乗効果により、路面の凹凸による衝撃や不快な横揺れをいなす能力が飛躍的に高まっています。また、カーブを曲がる際の車両の安定性も大きく向上しました。これにより、ライダーだけでなく同乗者にとっても高いレベルの快適性が実現され、より高い次元で安心感のある操作が可能になっています」
重厚な車体を操る上でネックとなる取り回しについても、抜本的な見直しが図られている。トライクに搭載された新設計のリバースシステムは、これまでのシステムから大きく進化した。
「今回のリバースシステムは、新たにスターターモーターを動力として使用する仕組みに変更しました。これにより、システム自体の構成を見直し、車両全体の大幅な軽量化に寄与しています。さらに、動力源をスターターモーターにすることで、よりスムーズで扱いやすい操作感を実現しました」
心臓部には、標準モデルに「Milwaukee-Eight VVT 117(1923cc)」が、そしてCVOモデルには「Milwaukee-Eight VVT 121(1977cc)」という、イギリスの小さな村の電力を賄えそうなほど巨大なVツインエンジンが搭載されている。コーナリングABSやトラクションコントロールといった最新安全技術も余すことなく盛り込まれ、もはやこれは「3つの車輪を持ったグランドツーリングの極み」と呼ぶべき代物だ。
価格は、「ロードグライド 3」が5,535,200円から、「ストリートグライド 3 リミテッド」が5,739,800円から。そして「CVO ストリートグライド 3 リミテッド」は8,005,800円からとなっている。ポルシェの中古車が買える価格だが、得られる優越感はそれ以上かもしれない。
そして、イギリス人にとっては少しばかり苦い記憶の年だが、アメリカの歴史を語る上で欠かせないモデルも発表された。アメリカ建国250周年(1776年-2026年)を記念した特別な限定コレクション「リバティエディション」である。
1976年の「FXE1200 リバティエディション」にインスパイアされたこのモデルは、重厚なメタリックブラックの専用カラー「ミッドナイトエンバー」を纏う。透けて見える「1」メダリオンを組み合わせた専用のイーグルグラフィックが施され、シートには星条旗を連想させる赤・白・青のアクセントステッチがあしらわれている。
この極めて希少なコレクションは、全世界で約2500台の限定生産。日本への導入は合計わずか90台のみで、すべて抽選販売となる。その内訳は「ヘリテージクラシック(3,561,800円)」が39台、「ストリートグライド(4,166,800円)」が32台、そしてトライクの「ストリートグライド 3 リミテッド(6,300,800円)」が19台だ。応募期間は4月12日まで。もしあなたがアメリカの偉大な歴史をガレージに収めたいなら、今すぐ銀行口座の残高を確認すべきである。
一方、プレゼンテーションの中で再び言及されたナイトスターについて、我々のような疑い深いエンスージアストは「150万円を切る価格を実現するために、肝心な安全装備が省かれているのではないか」と勘繰りたくなるものだ。しかし、玉木代表はそのような懸念を見透かしたように、きっぱりとこう断言した。
「価格を抑えたからといって、ハーレーダビッドソンの名に恥じるような妥協は一切していません。ナイトスターには、走行状況や好みに応じてパフォーマンスを最適化できる『3つのライドモード』をはじめ、最新の安全性能をしっかりと標準装備しています。モダンなパフォーマンスと伝統のDNAを融合させつつ、安全で快適なライディングをお約束します」
ブースでは他にも、免許を持たない者でもVツインの鼓動を感じられる「走行体験シミュレーター」や、簡単な質問で自分に合う1台がわかる「ハーレー相性診断」、ルート66開通100周年記念フォトブースなど、まさに「体験機会の拡大」という今年のテーマを体現するプログラムが用意されていた。先週には東京・新宿にアパレル専門店「ハーレーダビッドソン・スタイル新宿」をオープンさせるなど、ライフスタイルブランドとしての包囲網は完璧だ。
プレゼンテーションの締めくくりとして、彼は「パスポート・トゥ・フリーダム」などのライダー支援プログラムを通じた、ブランドの根本的な狙いを改めて強調し、我々にこう語りかけた。
「2026年の我々のテーマは『体験機会の拡大』です。このプログラムは、ハーレーと共に歩む人生を単なる憧れではなく、現実の選択として想像していただくためのものです。ディーラーに行く前の段階でも、ハーレーを選ぶ理由が自分の中にあるかを確かめられる体験の選択肢を増やす取り組みを、我々はこれからも続けてまいります。ハーレーダビッドソンと共にある人生を選んでくれた皆さんと、日本全国の道でお会いできる日を私は楽しみにしております」
伝統と最新のエンジニアリングが見事に融合した2026年モデル。彼らはただ過去の栄光にすがるのではなく、確かな技術力で未来のライフスタイルを提示してみせた。控えめに言っても、今年のハーレーダビッドソンは、極めて「買い」である。
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