ウズベキスタン人が支える運送網 現場主義が生み出す高い定着率 特定技能人材育成のプラウド・パートナーズ
イチオシスト
「人手不足倒産」が3年連続で過去最多を更新する中、日本の産業界で「ある国」の人材に注目が集まっているのをご存知でしょうか。その国とは中央アジアに位置する「ウズベキスタン共和国」です。
【写真】プラウド・パートナーズ本社エントランス前で、岡村アルベルト氏
面積は日本の約1.2倍、人口は約3700万人。ソ連の解体に伴い1991年に独立した、まだ「若い」国家ですが、国民の平均年齢が若く、堅実な経済成長を続けています。実は親日国としても知られているほか、何より、ウズベキスタンの「仕事への熱意(従業員エンゲージメント)」は世界でも最高水準にあるというデータを持っているのです。
そんなウズベキスタンと日本企業をつなぎ、深刻な人手不足にあえぐ日本国内の物流・建設・飲食業界に「即戦力」と「安心」を届けている企業が、東京に拠点を構える人材紹介業のProud Partners(プラウド・パートナーズ、鈴木竜二社長)です。同社が仕掛ける、日本の産業構造を変えうるユニークな取り組みを取材しました。
▽運送網支える即戦力を育成
「世界が必要とする変化になれ!」を企業理念に、2012年7月にプラウド・パートナーズは設立されました。主な事業は、特定技能人材の紹介や定着支援事業。同社は現在、ウズベキスタン政府と連携し、2025年6月から運送業界に特化した特定技能人材プロジェクトを始めています。これは、ウズベキスタン政府が無償提供する寮や研修所などの施設で、日本語だけでなく、日本の交通ルールを前提とした安全運転を基礎から徹底教育することで、日本国内の運送網を支える即戦力を育成することを目指すものです。
▽「原体験」は帰国余儀なくされた友人
同社で外国籍の人材育成事業を取りまとめている取締役の岡村アルベルト氏。ペルーで生まれ、日本で育った彼の根底には、ある「原体験」があります。
大学時代に日本に留学した経験を持つ母親と、小学校時代を日本で過ごしました。経済成長が続いていた時代でしたが、異国での暮らしは大変な点も多くありました。特に胸を痛めたのが、日本にいたペルーの友人が在留資格の問題で本国への帰国を余儀なくされた出来事です。在留資格更新の書類の不備などが原因でしたが、アルベルト氏は「とても悲しい出来事でした。日本のルールや法律を正しく理解し、正しい情報を持っていれば防げたかもしれない」とつらい思い出を振り返ります。
「外国籍の人々が異国の地でフェアに働ける環境を作りたい」―。そうした強い思いから重要な書類の書き方が分からないことなどが問題の根本にあると「情報の重要性」に注目。外国人向けの在留関連資格の書類作成サービスなどの仕事を始めることになりました。プラウド・パートナーズに合流、10月にしました。鈴木社長とともに「育成をやっていこう」と、日本で通用する外国籍人材の育成に本格的に乗り出しました。
▽なぜいま、ウズベキスタンなのか?
プラウド・パートナーズが現在、最も注力しているのが、ウズベキスタン政府と連携した「運送業界に特化した特定技能人材の育成プロジェクト」です。
国内の労働需給をみると、労働力不足は依然として改善されないままです。同社は、以前は外国籍人材の紹介などを主に手がけていましたが、アルベルト氏は「案件は過剰にあるのに、人手が足りない。それに対応するためには日本で通用する外国籍の人材を育てる方向にシフトしないといけない状況だった。ただ、育成といっても労働者の質の担保が何より必要。そこで海外の政府と連携して何かできないか模索していたところ、ウズベキスタンが海外へのドライバー輩出実績が多い国であることが分かったのです。すぐに駐日ウズベキスタン共和国大使館に連絡し、構想を提案しました。そして2025年5月末に基本合意に至り、秋には正式契約を締結、今年の2月にと説明します。
「働き方改革」により、トラックドライバーの労働時間が制限され、輸送能力が不足し「モノが運べなくなる」と懸念された「2024年問題」。物流業界からはその対応に悲鳴が上がりました。
インターネット経由による商品の購入が爆発的に増加。物流の重要性が増す一方、なかなか解消されないドライバー不足という問題は私たちの生活インフラを脅かすことにもつながり、喫緊の課題です。
日本政府は2019年に外国籍人材を対象に新たな在留資格である「特定技能」を設けました。これまでは12分野で外国籍人材の受け入れが可能でしたが、2024年に「自動車運送業」など4分野が新たに追加されました。国内の運送が抱えるドライバー不足と高齢化。プラウド・パートナーズはここに着目しました。
▽ウズベキスタンプラウドアカデミーが開校
ウズベキスタンで実施した自動車運送業向け特定技能人材の選考会には、500人の定員枠に対し、倍以上となる1278人の応募が殺到しました。同社は日本での勤労意欲の高さなどを面接で確認し、約120人を確保。合格者は全員がトラックでの運送実務経験者で、年代は20~30代の男性です。
合格者たちは、2026年2月16日にウズベキスタンのタシケント州 アングレン市で開校した「ウズベキスタンプラウドアカデミー(UPA)」に第1期生として入校。6〜8カ月間、ウズベキスタン政府が提供する寮を利用しながら、日本語教育と日本の安全基準教育をみっちりと受講し ます。
今夏には、その敷地内にトラック用の日本式運転教習所を建設し、実際の運転技術も学びます。彼らは研修終了後に日本にやって来て、日本の免許を取ります。アルベルト氏は「日本で働くために、日本人と同じ条件で、同じやり方を徹底的に身につけてもらうことが必要です」と日本で働くための「質の高さ」を重要視します。単に「労働力を連れて来る」のではなく、「日本のルールを学び、覚悟を持った人材」が育とうとしています。
国内での受け入れ整備も着々と進んでいます。売上高800億円超を上げる貨物自動車運送のダイセーグループ傘下のイズミ物流(東京)と、来日予定の約300人を共同育成する契約を交わしました。
イズミ物流は「国境を越えて人を育て、未来を運ぶ。国際物流人材の育成を、共に構築することに期待しています」とコメントしています。
▽「産官学」で育てる外食産業の新しいカタチ
私たちの食卓を支える外食産業でも、画期的な取り組みが始まっています。
プラウド・パートナーズは2025年12月、ウズベキスタン政府および現地の名門「カラカルパク国立大学」と提携し、「日本で働くための専門教育」を大学のカリキュラムに組み込むという画期的な合意に至りました 。
これまで、飲食店の現場からは「日本語能力や接客マナーが心配」という声が多く聞かれました。しかし、このプロジェクトでは、来日前に大学で「接客ロールプレイング」や「衛生管理」、そして「実務的な日本語」を徹底的に叩き込みます 。つまり、日本に来たその日から「即戦力」として期待できる人材が育成されるのです。人手不足に悩む日本の飲食店にとって、まさに干天の慈雨と言えるでしょう。
▽定着率の高さが強み
プラウド・パートナーズが最も強みを発揮しているのが、慢性的な人手不足に悩む「建設分野」です。
「外国人の受け入れには興味があるが、トラブルが怖くて踏み出せない」 「現場の職人たちとうまくやっていけるのか」。そんな建設会社の迷いを断ち切るため、同社は「最初の一歩」を応援する取り組みをスタートさせました 。
特筆すべきは、同社が紹介する人材の定着率の高さです。建設業界の平均定着率が34%(1年以内離職率66%)といわれる中、同社経由の人材は定着率82%(1年以内離職率18%)を誇ります。「採用して終わり」ではなく、「採用した後」のメンタルケアやキャリア支援まで伴走する姿勢が、この数字に表れています。
背景にあるのは、同社の徹底的な「現場主義」です。
アルベルト氏は「国内の現場と外国籍人材には、ともに文化や習慣の違いはあるということを理解してもらった上で、現場が何を必要としているかを細かく洗い出し、すりあわせに時間をかけています」と話します。
例えば、足場一つでも、その組み方には関東と関西など地域の違いや流派によっても違いがあります。そうした細かい点まで、プラウド・パートナーズ側は現場の親方らにヒアリングし、現場が求める外国籍人材をマッチングさせているのです。「思っていた現場と違う、という入社後のギャップを防ぐために、事前に多くの現場を見に行きます。現場を分かっている社員が営業をしているのが強みです」と胸を張ります。
さらに、ユニークなノウハウがあります。それは「3人セットでの受け入れ」です。「1人では孤独、2人だと意見が分かれると逃げ場がない。でも3人いれば誰かが仲裁役になり、バランスが保てます」(アルベルト氏)。外国籍人材 には専任の担当者が付き、母国語でLINEなどの相談に乗り、早期離職を防いでいます。
▽「高度経済成長2.0」を外国籍人材の力で実現
「生まれる場所は選べないが、自分が生きる場所は後から選ぶことができる」。この強い思いを胸に、これまで特定技能分野(1号・2号)で延べ約2000社、7800人以上の外国籍人材を支援してきたプラウド・パートナーズ。
同社が目指すのは単なる人材紹介ではありません。アルベルト氏は「移民や外国籍の人材は、日本と自国の文化の違いが分かるからこそ、ビジネスチャンスを見つけ、イノベーションを起こす力を持っています。日本で働き、比較することを学んだ人材が、ゆくゆくは母国で日本企業の海外展開をリードする。そんな循環モデルを作ることで日本企業の海外進出後押しをしたいですね」と訴えます。
人口減少や人手不足で縮小する日本経済。そのピンチをグローバル展開のチャンスへ変える。日本の「高度経済成長2.0」を外国籍人材の力で実現しようとする同社の挑戦は、まだ始まったばかりです。
記事提供元:オーヴォ(OvO)
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