【試乗】2つの顔を持つ1923ccの怪物。ハーレーダビッドソン「ミルウォーキーエイト117」の深淵を覗く
イチオシスト
四輪信者であっても、ハーレーの存在は無視できない。乗用車並みの1923ccを誇る巨大なVツインエンジン「ミルウォーキーエイト」が魅せる、荒々しさと洗練の二面性。最新モデルの試乗でその真髄に迫る。
大型二輪を愛好するライダーのみならず、四輪免許しか所有していないドライバーであっても、「大型バイクといえばハーレーダビッドソン」と連想する諸兄は多いだろう。まさにビッグバイクの代名詞といえるブランドである。
そんなハーレーダビッドソンが2026年モデルへ進化したということで、最新モデルに試乗する機会を得た。数あるラインナップから試乗モデルとして選んだのは、「ロードグライド」と「ヘリテイジクラシック」の2台。いずれもサイドバッグを標準装備し、ロングツーリングへ誘う要素は共通している。
ルックスについては、LEDライトがインストールされたシャークノーズフェアリングやデジタルメーターが未来的なロードグライドと、フロントフェンダーの形状など名前の通りに伝統を感じさせるヘリテイジクラシックとで、対照的に見える。しかし、この2台を選んだのには明確な理由がある。
エンジンの微妙な違いが気になったゆえの選択だ。カタログを眺めると、両モデルとも「ミルウォーキーエイト117」という、ハーレーダビッドソンの主力ユニットであるV型2気筒エンジンを積んでいる。117という数字は排気量をキュービックインチで示したもので、馴染みのある単位に直せば1923ccとなる。四輪車なら2リッター直列4気筒でもおかしくない巨大なエンジンを股下に抱えて走る気分は、ハーレーダビッドソンでしか味わえない刺激的な瞬間だ。
同じ名前で排気量も同一の「ミルウォーキーエイト」エンジンといっても、様々なバリエーションが用意されているのがハーレーダビッドソンの興味深いところだ。基本的に空冷エンジンであり、オイルクーラーを備えているのは共通の仕様といえるが、ロードグライドには水冷ラジエターが確認できる。
今回の試乗では、少々マニアックな目線となるが、このエンジンの微細な違いと、車両のキャラクターとのマッチングを確認することをテーマとした。
まずは、ヘリテイジクラシックにまたがってみる。
燃料タンク上にアナログメーターを配置するデザインは、ハーレーダビッドソンに対する古典的なイメージを具現化している。スタータースイッチを操作し、ミルウォーキーエイトを始動すると、わずかな間をおいて力強い鼓動を伴ったアイドリングが始まる。ルックスから受ける印象そのままのフィーリングが、大排気量Vツインらしいワクワク感を盛り上げる。
アイドリングのままギアを1速に入れ、重めのクラッチレバーを左手でゆっくりつないでいくと、スロットルをひねらずとも“326kg”の巨体を余裕で発進させる。まさに1923ccという大排気量のなせるわざだ。ミルウォーキーエイト・エンジンの中ではベーシックな仕様だというが、幹線道路でアクセルをひねれば、十分以上の加速を見せてくれる。
クラシカルなスタイリングから“クセ強”なキャラを想像していたが、ハーレーらしいワイルド感を存分かつイージーに味わうことができるというのが第一印象だ。
ただし、まったくもってスムースというわけではない。スロットル開度が小さい領域でのコントロール性には若干のシビアさを感じた。右手のスロットル、左手のクラッチ、右足のリアブレーキをうまくリンクさせた操作ができないと、ギクシャクしてしまう場面もあった。
もっとも、これがヘリテイジクラシックの欠点とは感じない。なぜなら、この伝統的なルックスには、少しくらい乗り手を選ぶライディングフィールがマッチしているからだ。「簡単に乗りこなせてはつまらない」とは言いすぎかもしれないが、両手・両足をうまくシンクロさせて操れたときの満足感は、まさにバイクライディングの醍醐味である。
つづいて、ロードグライドに乗り換える。
こちらはエンジン前方の下部に水冷ラジエターが確認できるが、ミルウォーキーエイトが基本的には空冷であることは変わらない。実際、腰下(エンジンブロック)はオイルクーラーによって冷却されている。水冷システムは、熱を持ちやすいシリンダーヘッドの排気バルブ周辺だけをピンポイントで冷やすために採用されているのだ。
エミッション(環境規制)対応やパフォーマンス向上を目的とした水冷ヘッドだが、その狙いをシンプルにいえば「耐ノッキング性能を高めること」にある。異常燃焼であるノッキングを防ぎ、点火時期を最適に保つことで、ミルウォーキーエイトのポテンシャルを極限まで引き出しているのだ。
実際、スペックを比較すると、ヘリテイジクラシックの空冷ミルウォーキーエイトの最大トルクが156Nmであるのに対し、ロードグライドの水冷ミルウォーキーエイトは175Nmへと高まっている。
そして、スペック上の数値以上に、エンジンフィールの違いは顕著だ。巨大なカラーTFT液晶メーターに映し出されるタコメーターの針は、大排気量のVツインとは思えないほどリニアに吹け上がる。ヘリテイジクラシックでは少し気難しさを感じた低速域のスロットルレスポンスも、ロードグライドでは非常にコントローラブルに躾けられており、スロットルワークだけで容易に速度をアジャストできる。
こうしたフィーリングの違いは、吸排気系の設計やエンジンマネジメントの電子制御による恩恵も大きい。洗練され、よりモダンになったミルウォーキーエイトの特性は、シャークノーズフェアリングを持つ未来的なロードグライドのルックスと完璧にマッチしている。
いずれにしても、ハーレーダビッドソンに乗るということは、股下にある「1923ccのV型2気筒エンジン」の存在を常に感じながら走るということだ。これほどまでに自己主張の強い鉄の塊が、モデルごとのキャラクターに合わせて緻密に味付けされていることは、今回の試乗における最大の発見だった。同じ排気量、同じ「ミルウォーキーエイト117」という名を冠していながら、実に多様な顔と多彩な表現力を持っているのである。
ハーレーダビッドソンを選ぶ際は、ルックスの好みだけで決めるべきではない。同じように見えるエンジンの「微妙な味付けの違い」にまで目を向けることで、本当に自分にフィットする一台を見つけ出すことができるはずだ。カタログの数値には表れないフィーリングの違いを味わい尽くすことこそが、最高の愛機と出会うための近道なのだ。
文:山本晋也
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