【試乗】プジョー 408 GT Hybridで往復600km。退屈なSUVを過去のものにする“フランスの奇行”
イチオシスト
退屈なSUVに辟易する諸君へ。フランスの異端児「プジョー408 GT Hybrid」を連れ、新東名経由で往復600kmの長距離テストを敢行した。疲労ゼロの驚異的な快適性と、少し癖のある3気筒ハイブリッドが魅せる痛快な実力を暴いてみよう。
退屈なSUVの波に飲み込まれそうな現代の自動車業界において、フランス人は時折、突拍子もない正解を叩き出して我々を驚かせる。目の前にあるオケナイト・ホワイトに塗られた「408 GT Hybrid」がまさにそれだ。
そもそもこの車を単なる「SUV」と呼ぶのは、ドン・ペリニヨンをただの「炭酸水」と呼ぶようなものだ。プジョー公式のスペック表には「4ドアファストバック(Cセグメント)」と記されている。しかし我々トップギアの目線で言わせてもらえば、実態は「ハッチバックとクーペ、そしてSUVを大鍋で煮込み、極上のフレンチ・スパイスを効かせた魅惑のキメラ」である。
足元には19インチの大径タイヤを履き、フェンダーアーチには黒い樹脂製クラッディングをあしらい、ロードクリアランスも高めに設定されている。ここは完全にSUVの文法だ。しかし視線を上に移せば、Bピラーからテールゲートにかけてスポーツカーのように優雅に滑り落ちるルーフラインを持っている。これこそが「ファストバック」の所以であり、同時に大きく開くテールゲートを備え、ハッチバックとしての優れた実用性もしっかり確保している。
世間には「クロスオーバー」を名乗る、ただ背を高くしただけの退屈な箱(自称SUV)が溢れかえっているが、それらと一緒にしてもらっては困る。UKのトップギア本国版がこの車を「Peak Crossover(クロスオーバーの頂点)」と評したように、既存のジャンルという檻(おり)に決して収まろうとしないアヴァンギャルドな姿勢こそが、このプジョー408最大の魅力なのだ。
「SUVの無骨さは嫌だが、セダンの退屈さも御免だ」というワガママな大人にとって、この「ファストバック・クロスオーバー」はまさに最適解と言えるだろう。
では、果たしてこの前衛的なフランス製彫刻は、見た目通りの実力を備えているのか? 私は都内から愛知県の「さなげアドベンチャーフィールド」までの往復600kmの旅に連れ出し、その真価を問うことにした。
i-Cockpitは「選ばれし者」の特権か
早朝の都内を出発し、運転席に滑り込む。そこで出迎えてくれるのは、プジョーの悪名高き(あるいは名高い)「i-Cockpit」だ。ステアリングホイールはまるで遊園地のゴーカートのように小さく、しかも上部が平らに削り取られている。そして、メーターはそのステアリングの「間」ではなく「上」から覗き込むのだ。
背の高い欧米のジャーナリストたちは「ステアリングの縁がメーターを隠してしまう!」と文句を言うことが多いが、彼らはただ座り方を知らないか、足が長すぎるだけだ。小柄な私にとって、このレイアウトは完璧だった。ステアリングを低めにセットすれば、視線を少し下げるだけで、2枚のスクリーンを重ね合わせた「3Dデジタルヘッドアップインストルメントパネル」が、まるでホログラムのように立体的な情報を提示してくれる。
視線を道路から外す時間は最小限で済み、中央の10インチタッチスクリーンの下にある「i-Toggle」(自由にカスタマイズできるデジタルショートカットキー)のおかげで、エアコンやナビの操作も実にスマートだ。直立気味の正しいドライビングポジションさえ取れれば、このコックピットは極めて理にかなっている。
新東名を滑空するロングツアラー
新東名高速道路の120km/h区間に合流する。ここで際立ったのは、2,790mmという長大なホイールベースが生み出す、矢のような直進安定性だ。
乗り心地は、同郷のシトロエンのように雲の上を走るようなフワフワとしたものではない。しかし、バネとダンパーのチューニングが絶妙で、路面の大きなうねりや窪みを一発で吸収し、車体をフラットに保ち続ける。長距離走行においては、この「しなやかだが芯のある」足回りが最も疲労を軽減してくれるのだ。
3気筒ハイブリッドとの対話術
さて、肝心の心臓部について語ろう。フロントに押し込まれているのは、1.2Lの3気筒ガソリンターボエンジンに、16kWの電動モーターを内蔵した6速デュアルクラッチ(e-DCS6)を組み合わせた、新開発の48Vマイルドハイブリッドシステムだ。システム合計出力は145ps。車重1,500kgのボディに対しては、必要十分な数値に思える。
実際、市街地などの低速域では、このシステムの恩恵は絶大だ。フルハイブリッドではないにもかかわらず、驚くほど長い時間をエンジン停止状態でスルスルと走り抜け、洗練された日常の足として完璧に機能する。
だが、新東名で前方の遅いトラックを追い越そうとアクセルを深く踏み込んだ瞬間、少しばかりの戸惑いが生じた。トランスミッションが一瞬「え? 今から加速するんですか?」と考え込み、不器用なシフトダウンを行い、少々のパワー不足を感じたのだ。
しかし、これは車が悪いのではない。こちらの「指示の出し方」が間違っていただけだ。センターコンソールのドライブモードスイッチを叩き、「Sport」モードに切り替えてみる。すると、システムは突如としてカフェインを摂取したかのように目覚め、機敏なレスポンスと的確なギア選択を行い、3気筒特有のビートを響かせながら鋭い加速を見せてくれた。
そう、このパワートレインには少しばかりの「慣れ」と「対話」が必要なのだ。追い越しをかける時はSportモードを呼び出す。この流儀さえ掴めば、軽量なフロントノーズと小径ステアリングがもたらす、火の玉のように機敏なハンドリングを心ゆくまで堪能できる。
疲労ゼロの600kmと、驚きの燃費
さなげアドベンチャーフィールドでの用事を済ませ、復路のステアリングは同行者に投げ渡した。私は助手席でアルカンタラのシートに深く腰掛け、アンビエントランプに照らされた美しいキャビンを眺めながら、ただただリラックスしていた。行きと帰り、合わせて600kmを走破しても、腰の痛みや疲労感は皆無だった。
そして、都内に戻ってトリップメーターを確認すると、燃費は最高で16.3km/Lを記録していた。カタログ上のWLTCモード(20.4km/L)には届かないが、新東名の高速巡航や、エアコンを効かせた快適な移動であったことを考えれば、十分に称賛に値する数値だ。
544万円(オプション込で約558万円)という価格タグを見れば、世の無数の平凡なSUVを選ぶこともできるだろう。だが、もしあなたが運転の楽しさと、人とは違う洗練されたデザインを求めているのなら、プジョー 408 GT Hybridは絶対に検討リストに入れるべき1台だ。
これは単なる移動手段ではない。退屈な日常を切り裂く、極めてフランス的で、極めて実用的な「クロスオーバーの到達点」である。
写真:上野和秀
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