ドロー&フェードの打ち分けは「スタンス向き」を変えるだけ 距離感を身に着ける練習方法もこっそり明かす【教えて、蟬川先生!】
イチオシスト
2022年に史上初となるアマチュア2勝を挙げ、国内男子ツアー通算5勝を誇る蟬川泰果。“年間王者”を目指す今季は、国内男子ツアーを代表する存在の一人になることは間違いない。そんな蟬川にワンランク上のレベルを目指すアマチュアが参考になるテクニックを取材。今回は『ドローとフェードの打ち分け方』を聞いた。(取材・文/髙木彩音)
■弾道の打ち分けは“スタンス”を変えるだけでいい
状況に応じてドローやフェードの球筋、高さ、スピンコントロールする技術のことを『弾道の打ち分け』という。アマチュアも「ここはドローを打ちたい」、「右に曲げてグリーンを狙いたい」という状況は少なくない。
弾道は大きく分けて、右に打ち出し左に曲がるドローボールと、左に打ち出て右に曲がるフェードボールの2つがある。蝉川が実践しているのは「スタンスを変えるだけです。あとはそれに合わせて(ボールを)右に置く、左に置くだけです」。ドローとフェードを打ち分けるのは、至難の技と思っている方も多いでしょう。しかし、“蟬川流”はいたってシンプルだった。
ストレート系の球筋を基本とする蟬川は、フェードを打つ場合、「スタンスはオープン(目標方向より左に向ける)で、フェースはターゲットに向けます」。ドローを打つ場合は「左足を前に出してクローズ(目標方向より右に向ける)に。そのまま打てばインサイドからクラブが入るので、あまりボールは右に置かなくてもいい」という。打ちたい球筋によってスタンスの向きを変えて、それに合わせていつも通りのイメージでスイングをするというものだ。
フェースの向きに関しては、「いろいろ試した」なかで目標方向に向けることに決めている。試したなかでは「海外の選手はパワーフェードを打ちたいから、(フェースを)かぶす(閉じる)」というのを目の当たりにして、もともとフェードヒッターの蝉川もトライした。
フェースを目標より左に向けて構えて、左に振り抜くとそのまま左に飛ぶイメージが生まれる。だがフェースの向きよりもさらに左に振り抜けば、フェース面と軌道のズレがボールに右回転を起こしてフェードボールになる。加えてロフトが立つ分、低く強いフェードが打てて、飛距離が出せるのだ。しかし、蝉川は「左に行くことが怖くて、インパクトの瞬間で僕はフェースが開いてしまう」と感じ、フェースを閉じて構えることはしていない。
「ベテランプロの方とかは、フェースをかぶせてフェードを打ちますよね。藤田(寛之)さんとかもめっちゃかぶしますし、すごいと思います。僕はトラブルショット以外、基本的にすごく曲げることはしないので、曲げる時はその幅(スタンスの向きなど)を広げてやったり、少し特殊に低く打ちたかったら少しフェースを縦めで打ったりすします」
■ヘッドスピードが遅い人はフェースをかぶせるのは効果大
蟬川流のシンプルな打ち分けだが、ヘッドスピードが速くない人がスタンスの向きを変えてフェードを打とうとすると、右回転が強くなって飛距離が落ちるケースもあるという。極端に飛んでいないと思ったら、「フェースをかぶせて構える」のは効果的という。
「スタンスをオープンにして少しフェースをかぶせて構えると、“飛ぶフェード”が打ちやすいです。フェードが打てない人は、左に行くミスもあるとは思うんですけど、どっちかというと右プッシュが多いと思う。フェースをかぶせて構えれば、飛ばないフェードにはなりにくい」。スタンスの向きを変えて右に曲がるボールが打てても飛距離が出ていないと思ったら、フェースを閉じて構えるのはおすすめだ。
ただ、フェースを左に向けて左に振るのは超高度なテクニックでもある。「(かぶすことは)ありかなとは思うんですけど、実際本番で打つ時に“左に行く”恐怖感が出ちゃう人は、基本的にはスタンスだけでいいと思います」とフェードへのアドバイスを送った。
蝉川論は“スタンスの向き”だけ。スタンスを変えた状態でスイングまで変えてしまうと、“やりすぎ”になりやすい。例えば、クローズスタンスにして、さらにインサイドからクラブを下ろす動きをすると、“あおり打ち”の動きになりやすい。そうするとフェースが開きやすくなったり、球が高く上がりすぎたり、スピン量が増えて飛ばなくなる。ほどよくインサイドからクラブを入れるためにも、スタンスの向きだけを変えて、いつも通りのスイングイメージのままで打つことが一番簡単で、成功率が高いということだ。
■日頃の練習から“曲げる球”を打つことで操作性アップにつながる
弾道の打ち分けは、日頃の練習から行っていたほうが「(曲がり幅の)操作性が上がる。すごく覚えやすいかなと思う」と話す。技術面を高めたり、再現性を上げるうえではもってこいの練習になる。曲げる練習が、曲げない練習につながるのだ。
でも、「絶対に根本を忘れないでほしい」ことがある。3番ウッドなどロフトが立っているクラブは、つかまりにくくドローは打ちにくい。ロフトの立ったクラブでドローの練習をやりすぎると、ロフトの寝たクラブではつかまりすぎたり、スイングに悩み始めたりすることがありがちだ。
だからこそ、ロフトが寝たショートアイアンで練習を始めることがおすすめ。ロフトが少ないクラブは「マックス(最大で)どれぐらい曲げられるかっていうのは覚えといたほうがいいと思います」と、あくまでも曲がり幅の確認程度がいい。
ちなみに、弾道の打ち分けではないが、蟬川が距離の打ち分けを身に着けた練習方法がある。「ウェッジでどれぐらい開いてフルショットすれば飛ぶのか」という練習だ。「そこから(フェースの)開く量を少なくすればこれぐらい飛ぶ、キャリーこれぐらい行く、とか。そのタテ距離をどれぐらい飛ぶのかをフェースを開いてフルスイングでやってみるといいです」と教えてくれた。
こうして練習でコントロール性が上がれば、曲がり幅や“タテ距離”などを把握できるようになる。それが安定性の高いショットにつながり、スコアに結ばれるということだ。
■蟬川泰果
せみかわ・たいが/2001年1月11日生まれ、兵庫県出身。2022年に史上初のアマ2勝を遂げる。同年にプロ転向後の4年間で安定した成績を残している。平均ストロークは常にトップ10をキープ。フル参戦1年目の2023年は『69.885』(3位)、24年は『70.693』(9位)、そして25年は『70.047』(1位)と、国内男子界でも屈指のスタッツを誇る。勝負強さに加え、数字が示す通り高度な技術力を備えた選手だ。
<ゴルフ情報ALBA Net>
記事提供元:ゴルフ情報ALBA Net
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
