【#佐藤優のシン世界地図探索148】「脳内戦艦サナエ」、衆院選挙に大勝利して「高市幕府」を開く!!
イチオシスト

高市首相は、衆院選で自民党として戦後最大の勝利をもたらした(写真:時事)
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!
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――今回の衆院選挙では自民党と維新が120議席増の352議席、野党が109議席激減して109議席と、自民党の大勝利となりました。
佐藤 今回の選挙は日本憲政史上初の"大統領選挙"だったんです。党の公約や方針ではなく、高市早苗という個人が選ばれたといえるからです。結果、高市首相が大統領に選出され、白紙委任状が与えられました。
なぜ、これが起きたかというと説明は簡単です。国際情勢が非常に悪化しているから、強力な大統領、指導者の下で全部、お任せでやってもらいたいんですよ。「全部委ねるから、お願いします」とね。そうすれば全て安心ですから。
――トランプが当選した時の米大統領選挙に似ていませんか?
佐藤 ええ。ただし、米大統領選挙ではさまざまな論戦が展開されましたが、今回の選挙は「何となく」全体が流されて勢いづいた感じですね。
それから選挙制度の問題が際立ちました。小選挙区の絶対得票率を見ると、自民党に入れたのはわずか26.9%です。にもかかわらず、議席の86.2%を獲りました。一方で中道改革連合は11.8%ですが、2.4%しか議席に反映されていません。
――それはおかしいです。
佐藤 おかしいと思う人はいるかもしれませんが、小選挙区のルールはそういうものです。そして、自民党はより右翼化し、参政党化しました。だから今回の戦いでは、自民党が参政党になり、「脳内戦艦サナエ」が決戦で大勝利して、高市幕府が成立したということです。
――それはどんな幕府なんですか?
佐藤 徳川家と国家が一体になっているような「家産国家」です。
――幕府ならば御庭番が必要ですが。
佐藤 それから、将軍に最も近い側用人もですね。御庭番と側用人が中心となり、官僚を家来とした「家産国家」です。要するに、高市さんの利益がそのまま国家の利益となる形ですね。
――その側用人には、どんな人物が適しているのですか?
佐藤 役割としては総理との連絡係で、いろいろな情報に触れる人です。それが、首相秘書官なのか、首相補佐官、他の官邸幹部になるのか現時点ではわかりませんが、柳沢吉保 のような人が台頭してくるのが理想ですね。
昔、俳優の石坂浩二氏が柳沢吉保の役を演じた『元禄太平記』というNHK大河ドラマがありました。高市幕府はその世界ですよ。
――柳沢吉保は第5代将軍徳川綱吉の寵愛を受け、大老格となった人物ですね。
佐藤 赤穂浪士の討ち入りでは、幕閣に義士として助命すべきとの意見もありました。しかし将軍綱吉は「全員死罪、切腹」を命じたわけです。その厳しい処分の背景には、吉保の進言がありました。
――となれば、赤穂藩の領民にとって吉保は悪の総本山。
佐藤 しかし、徳川幕府の秩序を維持するためには最良の選択でした。こうした物語は、権力が集中する場所で起きます。だから、高市将軍の近くに側用人がいて、国民の見えないところですべて決めていくことになります。
――すると、神風は吹いたのですか?
佐藤 神風が吹いたというより、全国民に狐が憑(つ)いたというか、天狗が憑いた感じですね。
――祈りよりもお祓いが必要になってきたということですか。天狗の仕業ならば、これは摩訶不思議と。
佐藤 だから、天狗が強くなったわけです。高市幕府をそうみると、問題の所在がよくわかります。
――天狗のおでましとなると、神も仏もないじゃないですか。
佐藤 だから、一時的にこういう現象にもなる。
――なんで聡明な日本国民の皆様は理解できないのですか?
佐藤 いや、国民が聡明だからこそこういう選択をしたのです。こういう時代、ガチャガチャ議論するよりも、勢いのある高市さんに賭けるという選択はそれなりに聡明です。
――勢い!! 高市幕府のその先は楽園ですか、地獄ですか?
佐藤 人それぞれの受け止め方によるでしょう。最初に言ったように、今回は「この人たちに委ねる」という白紙委任状を与えたわけです。そして、その路線は強権的な形で「つべこべ言うな」と言って、高市将軍が教えた通りにやることになります。自分の生活は自分で守れ、ということですね。
――そんな。「お前らは自分で頑張れ、こっちはこっちでやるからよ」と言われても......。
佐藤 「生活が大変です」と言ったところで、「お前ら、白紙委任状を将軍に渡したよな。いいだろ? あとは働いて、働いて、働いて、働いて、働いて、自分を守れ。社会など存在しない。他人に頼るな」となるだけです。
――それは東映のヤクザ映画に例えると、広島の小さな裏通りの爺さんと婆さんがやっている古びたお好み焼屋に突然幕府のヤクザが来て、「ここの土地と店のモンは全部、もろてくぞ、こら!! こっちは白紙委任状があるからよ、何でもできるんだよ。はよ、身一つで出て行け。命は助けたる」という世界じゃないですか?
佐藤 そういうことです。
――ダメじゃないですか。
佐藤 それから、基本的に円安になりますから、今、この時点で米ドル、米国債券を持っている人はウハウハです。
――現金と不動産を持っている方々も?
佐藤 ウハウハですね。一方で、額に汗して働くしかない人は、生活が苦しくなっていきます。電力料金、小麦など輸入に頼っているものはどんどん値上がりしますから。そして、格差がガッと開いていく流れになります。
――どんどんひどい状況が進んでいく。
佐藤 その人の置かれた立場によります。資産のある人にとっては非常にいいんですよ。座っているだけで、どんどんお金が増えていくんですから。金地金、ドル、債券を持っていればいいだけです。さらに株価も上がっていきます。持っている者にとっては非常にいい幕府
です。
――でも、そのウハウハしている人たちは、自民党に入れた23%の人だけですよね?
佐藤 23%もいませんよ。金融資産1億円以上の人は、日本の人口の何%だと思いますか?
――ChatGPTによると3%です。
佐藤 いまの運用益はおよそ5%です。1億円以上資産を保有している人たちが、年間500万円だけで食っていけると思いますか?
――無理でしょうね。
佐藤 本当にウハウハしている人は、資産が5億円以上ある人だけです。
――日本のたった0.2%。
佐藤 その0.2%の人にとっては、いい幕府です。年間の運用益が2500万円だから、資産がどんどん増えていきます。
――格差社会が大格差社会になるじゃないですか?
佐藤 民主的な選挙で全部任せることになったんですから、それでいいんじゃないですか? 国民の選択が何よりも重要です。
――江戸幕府時代、武士は人口の5~7%で、一万石以上の大名とその家族は0.01%。すると、現代の高市幕府には、江戸幕府より多い0.2%の大名が日本国内にいると。
佐藤 いいじゃないですか、さすが高市幕府ですね。
――それもこれも、国民の選択で生まれた。関ヶ原の合戦という戦争の結果ではないですからね。だから、いいじゃないかと。
佐藤 そう。逆にね、ギリギリの生活で大変な人は日々の生活防衛で一杯一杯です。政治どころじゃないから、長続きするかもしれませんよ。
――無限地獄に......。首相官邸の中でどんどんいろんなことが決められて、我々はみるみるうちに貧しくなっていく。
佐藤 そういう難しいことを考えるよりも、働いて稼ぐことが優先される時代になります。ただし、総人口の0.2%を占める5億円以上の資産を持っている人々は、ますます豊かになっていきます。
――その先はどうなるんですか?
佐藤 それは、次回、NHK大河ドラマを見ながら学んでみましょう。
――NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』ではなく、『元禄太平記』に日本の未来が見えるのですか?
佐藤 はい、そうです。
次回へ続く。次回の配信は2月27日(金)を予定しています。
取材・文/小峯隆生
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