「整備計画路線」への格上げなるか 東九州など全国6路線の新幹線基本計画路線の沿線自治体が東京で総決起大会【コラム】
イチオシスト

1973年の政府告示で国レベルでの建設方針が固まったものの、その後50年以上も具体的な動きがないのが新幹線の基本計画路線です。対象路線の多くは、沿線自治体や地元経済界が建設促進期成会などの団体を立ち上げ、国に整備(建設)路線への格上げを働きかけます。
国への請願行動は路線単位、地域単位でしたが、初めて6路線の期成会などが共同行動する「新幹線基本計画路線全国総決起大会」が2026年1月22日に東京都内で開かれ、全国の沿線関係者ら約500人が参加しました。
整備新幹線をめぐっては本サイトでも報告の通り、事業費高騰や工期延長、ルート再検討とさまざまな問題が発生します。そうした渦中に基本計画路線が埋没することに危機感を持った関係者が、全国一丸の行動に出たというのが総決起大会の本質です。
本コラムは問題の原点に立ち返り、新幹線の基本計画路線とは何かを再考。今後の方向性などを探ります。
(本コラムは、各路線の必要性などに過度に言及する意図はありません。その点を十分にご理解願います)
基本計画路線と整備新幹線
原点は1970年に公布された全国新幹線鉄道整備法(全幹法)です。1964年の東海道新幹線開業から6年目。時代は高度成長期の真っただ中で、1972年の山陽新幹線新大阪~岡山開業を2年後に控え、全国に高速鉄道の待望論が沸き起こっていました。
しかし、国鉄は東海道新幹線開業の1964年度から単年度赤字に転落。沿線からの高速鉄道建設の要望と、国鉄経営再建の板挟みになった国が編み出したのが、建設する新幹線を法律で規定する考え方です。
1973年に国が整備すべき路線とされたのが、北海道(青森市~札幌市)、東北(盛岡市~青森市)、北陸(東京都~大阪市)、九州(鹿児島ルート。福岡市~鹿児島市)、同(西九州ルート。福岡市~長崎市)の5新幹線。全線または一部が開業済みというのは、再確認するまでもないでしょう。
整備すべきとされた5新幹線は「整備新幹線」と総称されます。また、全幹法公布以前に計画された、山陽新幹線(新大阪~博多)や東北新幹線(東京~盛岡)は整備新幹線に含まれません。
全国11路線の基本計画路線
整備5路線に続くのが、今回取り上げる基本計画路線で、全国11路線あります(中央新幹線〈リニア中央新幹線〉も基本計画路線でしたが、着工済みのため除外します)。
1 北海道新幹線 札幌市~旭川市
2 北海道南回り新幹線 長万部町~室蘭市~苫小牧市~千歳市~札幌市
3 羽越新幹線 富山市~新潟市~秋田市~青森市
4 奥羽新幹線 福島市~山形市~秋田市
5 北陸・中京新幹線 敦賀市~名古屋市
6 山陰新幹線 大阪市~鳥取市~松江市~下関市
7 中国横断新幹線 岡山市~松江市
8 四国新幹線 大阪市~徳島市~高松市~松山市~大分市
9 四国横断新幹線 岡山市~高知市
10 東九州新幹線 福岡市~大分市~宮崎市~鹿児島市
11 九州横断新幹線 大分市~熊本市
整備新幹線と基本計画路線は、起点と終点、主な経由地が都市名で表記されます(経由地の記載がない路線もあります)。
全国6団体が主催
決起大会を主催したのは次の6団体です。
羽越新幹線建設促進同盟会、奥羽新幹線建設促進同盟会、山陰新幹線建設促進期成同盟会、中国横断新幹線整備促進協議会、四国新幹線整備促進期成会、東九州新幹線鉄道建設促進期成会
市町レベルの5団体も共催しました。
山陰縦貫超高速鉄道整備推進市町村会議、中国横断新幹線(伯備新幹線)整備推進会議、香川県市町長四国新幹線整備促進期成会、宮崎県鉄道整備促進期成同盟会、大分県東九州新幹線整備推進期成会
国への請願が長く路線単位だったのは、他路線に先駆けて整備計画路線に格上げしてもらうというライバル意識があったから。しかし、半世紀以上続く塩漬け状態に危機感を持った各団体は初めて地域の壁を乗り越えました。
大会決議を満場一致で採択

大会の発起人は大分県の佐藤樹一郎知事。国の行政(通産省など)出身で、大分市長を経て2023年知事選で初当選しました。知事選では、最重要公約の一つに「東九州新幹線の整備計画路線への格上げと早期実現」を掲げました。
佐藤知事は「これまでのような路線単位での行動では、(新幹線整備が)地方の問題ととらえられてしまう」と発言。2025月9月県議会で決起大会の必要性を強調した上で、関係各県に呼び掛け大会を開催しました。
冒頭あいさつで、「基本計画路線の整備を国家プロジェクトと位置付け、政府・国会への働きかけで議論を加速させたい」と決意表明しました。
各期成会などのあいさつに続き、整備計画路線への格上げや予算増額、自治体の負担軽減などを盛り込んだ決議を満場一致で採択しました。


財源は新幹線貸付料と出国税!?
基本計画路線への格上げで、最大の課題は建設財源の確保です。総決起大会で有力財源とされたのが、JRが国に支払う整備新幹線貸付料引き上げと、政府が構想する国際観光旅客税(出国税)増税分の財源化です。
しかし、2025年末の本コラムでご報告の通り、貸付料引き上げにはJR東日本やJR西日本が難色。政府は出国税増税を、いわゆるオーバーツーリズム対策に充てる方針で、新幹線の財源確保は一筋縄でいきません。
新幹線の基本計画路線をめぐっては、現状でも「整備は不要」、「実現は不可能」の論調が一定程度あります。しかし、人口減少が進み地方の衰退が懸念される中、現状打開のカギを高速鉄道に求める考え方にも一定程度理解できる点があります。
新幹線プロジェクトが都市vs地方圏のような分断や対立をもたらすのは、問題の本質からは大きく逸脱します。
筆者の個人的発想ですが、例えばフル規格新幹線が難しいなら、在来線改良で最高時速を150~180キロ程度に引き上げる中速新幹線(中速鉄道)による所要時間短縮も現実的な選択肢の一つなのかもしれません。

記事:上里夏生
記事提供元:旅とおでかけ 鉄道チャンネル
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
