世界的に脚光を浴びる早川千絵監督の長編第2作「ルノワール」が待望のBlu-rayで登場!
イチオシスト

長編デビュー作「PLAN75」が国内外で絶賛を浴びた早川千絵監督。小学5年生の少女フキが大人たちと触れ合う、ひと夏の出来事を描いた第2作「ルノワール」のBlu-rayが、2月4日に発売された(レンタルDVD同時リリース)。オーディションで選ばれたヒロイン・鈴木唯の瑞々しい演技が、鮮烈な印象を残す作品だ。
少女フキが、大人たちと触れ合うひと夏の出来事を描く

作品の舞台は、1987年の東京郊外。末期がんに侵されて闘病中の父親(リリー・フランキー)と仕事に追われる母親(石田ひかり)と3人で暮らすフキ(鈴木唯)は、感受性と想像力豊かな小学5年生。彼女は夫を事故で失った理子(河合優実)や、母親のカウンセラー・御前崎(中島歩)、伝言ダイヤルで知り合った濱野(坂東龍汰)といった大人たちと出会い、孤独や死の意味を実感していく。
「PLAN75」は孤独な老人と死がテーマになっていたが、本作でも≪死≫は大きなキーワード。フキは父親に死の影が忍び寄っていることを察知して、その不安を振り払う思いからか、超能力や催眠術などに興味を持っていく。そんな彼女に、催眠術にかかったふりをして夫が事故死した原因が自分にあることを独白する理子。彼女の話からフキは、人が死ぬことの輪郭をおぼろげながらに知る。また仕事が多忙で母親が家にいない孤独感を、伝言ダイヤルで紛らわそうとするフキに、一度会おうと誘ってくるのが自称・心理学を勉強している大学生の濱野。実は濱野は、屈折した欲望を抱えているのだが、この映画はそれぞれ事情を抱えた理子や濱野にポイントを置かず、大人たちを観察しつづけるフキの好奇心を繊細に写し取っている。
大人を観察するヒロインを演じた、新人・鈴木唯の感受性豊かな演技!

本作の魅力の一つに何と言ってもフキを演じる鈴木唯で、劇中で喜怒哀楽の変化はさほどないのだが、その出会う相手を注意深く観察しようと見つめる目に惹きつけられる。感情を表に出すのではなく、自分に中にどんどん取り込んでいこうとする少女の感受性を、鈴木唯は全身で表現している。彼女はこの作品でキネマ旬報ベスト・テン新人女優賞を受賞したが、少女が持つ自由な感性をストレートに出した鮮烈な演技は、注目に値する。
リリー・フランキーと石田ひかりが、主人公の両親を見事に表現

そのフキに最も観察されるのが両親だ。リリー・フランキーは病気になって心身ともに弱っていく男のやりきれない思いを、絶妙のバランスで演じているし、石田ひかりは仕事でも家庭でも問題山積みの状況から逃れるため、誰に対しても怒りをぶつける母親を、ストレスの塊のように演じている。そんな両親を見つめながら自分のペースを崩さず、大人たちの在り様を受け止めていくフキの姿が素晴らしい。どんなネガティブな状況に直面しても留まることなく前へ進んでいく彼女の生命力は、どんよりした思いを抱えて悩む大人たちとは対照的で、作品に光を与えている。
≪メイキング≫でわかる、鈴木唯の自由な素の魅力!

今回のブルーレイには〈メイキング〉、〈ジャパン・プレミア〉、〈予告集〉が特典映像として収録されている。〈メイキング〉にはクランクインからアップまでの撮影風景が出演者へのインタビューと共に収録されているが、中でも興味深いのが鈴木唯の表情が豊かなことだ。この映画は日本だけでなくフランス、シンガポール、フィリピン、インドネシアの共同製作で、メインスタッフにも外国人が加わっている。そのスタッフたちに、『どんな仕事をしているの?』とか、『外国語でこれは、どういうの?』と質問し、メイキングスタッフの前でおどけて見せる彼女の、素直で自由な振る舞いが写し撮られている。劇中のフキに表情の変化はあまりないが、実際の鈴木唯は常に感情が動いている。このメイキングを見ただけでも、彼女の魅力がわかるだろう。また早川監督は様々な場面で彼女に、目線をどこに向けるか指示を出している。その演出風景を見るといろんなものを観察することが、フキという少女の基本になっていることが見て取れる。
第78回カンヌ国際映画祭でも注目を集めた作品と出演者

またこのメイキングには、第78回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されたときの、監督や出演者の模様も収録されている。上映会場で拍手で迎えられた風景も印象的だが、〈ジャパン・プレミア〉での舞台挨拶には、リリー・フランキーはカンヌに行ったとき、コンペティション部門の審査委員長ジュリエット・ビノシュと一行が偶然出会い、鈴木唯がビノシュに『どうやって、演技をするんですか?』と物おじせずに質問しに行ったエピソードが披露されている。その行動力を含めた鈴木唯の魅力はカンヌでも注目を浴び、彼女はこの映画祭の「注目すべき10人の才能」の一人にも選出された。
タイトルの「ルノワール」は、フキが病院で見つけ、父親の病室に置かれる≪ルノワール≫の絵画に由来しているが、その絵画は最後にフキの部屋の壁に飾られる。すでに亡くなった画家の絵を飾りながら、今日を生きる彼女の姿に、死や孤独への想いを乗り越えるのではなく、自分の中に取り入れながら成長していく少女の実感がそこにある。〈ジャパン・プレミア〉でリリー・フランキーは、この映画には『フキを演じた唯ちゃんの、何かになりかけている生々しさ』が写しこまれていると言っていた。まさにこれはそういう映画になっていて、フキ=鈴木唯のライブな存在感が観る者を捉えて離さない作品だ。
文=金澤誠 制作=キネマ旬報社 制作部(山田)

「ルノワール」
●2月4日(水)Blu-ray発売(レンタルDVD同時リリース)
▶Blu-rayの詳細情報はこちら
●Blu-ray(1枚組) 価格: 6,600円(税込)
★特典映像★
・メイキング
・ジャパンプレミア
・予告集
●2025年/日本/本編122分
●監督・脚本:早川千絵
●出演:
鈴木唯
石田ひかり 中島歩 河合優実 坂東龍汰 / リリー・フランキー
Hana Hope 高梨琴乃 西原亜希 谷川昭一朗 宮下今日子 中村恩恵
●発売元・販売元:ハピネット・メディアマーケティング
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記事提供元:キネマ旬報WEB
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