"絶対王者"ホンダN-BOXを倒せるクルマはあるのか?
イチオシスト

ホンダ・N‐BOX
なぜホンダの軽スーパーハイトワゴン・N-BOXだけが群雄割拠のニッポン市場で勝ち続けるのか。本当に死角はないのか。そして、王者に牙をむく"ガチライバル"は!?
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国内の自動車市場で、またしても"N-BOX無双"が炸裂した。
自販連(日本自動車販売協会連合会)と全軽自協(全国軽自動車協会連合会)が発表した2025年の国内新車販売ランキングで、ホンダの軽スーパーハイトワゴンN-BOXが総合トップを獲得。これで4年連続の総合首位、軽自動車に限れば11年連続ナンバーワンという、もはや問答無用の独走状態に入っている。
現行の3代目モデルは2023年10月に登場。先進安全装備の充実に加え、軽とは思えない広々とした室内空間を武器に支持を拡大してきた。2011年の初代発売からシリーズ累計販売台数は294万台を突破。群雄割拠の軽スーパーハイト市場において、なぜN-BOXだけが"勝ち続けられる"のか。

スズキ・スペーシア
実際にN-BOXを購入し、徹底的に分析した自動車ジャーナリストの桃田健史氏は、その核心をこう語る。
「スズキとダイハツという"軽2強"に対する、ホンダの挑戦心そのものがN-BOXです。利便性や居住性は前提条件。決定的な差は"走りの質"にあります。サスペンション、エンジン、CVT制御まで、ホンダらしい気持ち良さが細部にまで行き届いている。とくにノンターボの完成度は、軽自動車の枠を完全に超えています」
強さの理由は、走りだけではない。
「どのグレードも需要が安定し、リセールバリューが非常に高い。結果、N-BOXからN-BOXへ買い替えるユーザーが次々と生まれ、その循環自体が販売を押し上げています。"選ばれ続ける構造"ができあがっているのです」

ダイハツ・タント
では、この盤石すぎる状況に死角はないのか。桃田氏は、あえてこう指摘する。
「皮肉ですが、"死角が見えないこと"そのものがホンダの死角かもしれません。ここまでの独走は、ホンダ自身も完全には想定していなかったはずです。永遠のライバルはスズキ・スペーシアとダイハツ・タントですが、今後より重要になるのは軽自動車におけるEVシフトでしょう。現時点で、N-BOXのEV版『N-BOX e:』の開発計画はありません」
確かに裏付けのない噂話は飛び交っているが、N-BOXのEV化の公式アナウンスは一切ない。背景には、N-BOXユーザーの使われ方があるという。
「N-BOXユーザーは想定以上に遠乗りする傾向がある。航続距離の制約がある軽EVは、現状では使い方と噛み合いにくい。EV化の波をどう受け止めるかは将来の課題になり得ますが、少なくとも今すぐ牙城が崩れる要因ではありません」

BYD・ラッコ
もっとも、市場が静止しているわけではない。
中国BYDは、日本向け軽スーパーハイトワゴンEV『ラッコ』を今夏投入予定。航続距離は、スタンダード版は200km超、ロングレンジ版で300㎞超。価格は未発表だが、BYDのエントリーモデルのドルフィンは300万円を切る価格帯。それを踏まえれば、手頃さは失わないはず。そうなると、いよいよ軽スーパーハイトのEV競争が本格化の幕が開ける可能性も。
1月の東京オートサロンで披露された際には、ブース前が人で埋め尽くされるほどの注目を集めた。海外勢の"軽ガラパゴス市場"への本格参入により、新たな局面に入りつつある。初めて、"王者の背中"を意識させる存在が現れたとも言えるかもしれない。
一方、新生活を控えた3月の決算セールを前に、N-BOXを狙うユーザーの動きも活発化している。販売店関係者は「出血覚悟でやります」と力を込めるが、購入検討者からは「他車と比べたい」という声も上がる。専門誌の編集者らは、コスパ最強のスペーシアとタント、新型となり質感が格段に上がったルークスの名前などが出るものの、現場の実感はこうだ。
「結局、最初からN-BOX指名のお客様が圧倒的です」

日産・ルークス
ちなみに昨年のN-BOXは20万1354台、スペーシアは16万5589台、タントは12万4619台、モデル末期だったルークスは7万1498台だ。
長年にわたりニッポン市場に君臨してきたN-BOX。その強さは、商品力、走り、信頼性、ブランド、リセールという要素が奇跡的に噛み合い、さらにホンダが磨きに磨き上げ"完全態"に近い。
軽EV時代という新たな波は確実に迫っている。ただし、N-BOXの天下はしばらく続きそうだ。
取材・文・撮影/週プレ自動車班 宮下豊史 山本佳吾
記事提供元:週プレNEWS
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