日本では毎年数千人が“完全に消える”──。蒸発者と夜逃げ屋を追った「蒸発」
イチオシスト
日本では毎年約8万人が失踪し、そのうち数千人が完全に消える──。日本の蒸発という現象に迫ったドキュメンタリー「蒸発」が、3月14日(土)よりユーロスペースほか全国で順次公開。ポスタービジュアルと予告編が到着した。

蒸発する理由は⼈間関係のトラブル、借⾦苦、ヤクザからの脅迫などさまざまで、“夜逃げ屋”の助けを借りる者もいる。別の場所で新たな生活を始める“蒸発者”には、喪失感・挫折感と希望が交差する。本作は知られざる夜逃げ屋の仕事、失踪者と残された人々の葛藤および和解への道のりなどを捉えていく。監督はドイツ人映画作家のアンドレアス・ハートマンと、ベルリンと東京を拠点とする映像作家の森あらた。
作品は40以上の国際映画祭に出品され、第39回ミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭では最優秀作品賞を受賞。ドイツでは50館以上のアートハウスで上映された。なお出演者たちのプライバシー保護のため、一部の顔や音声はAI技術で加工している。
〈コメント〉
アンドレアス・ハートマン監督
10年ほど前、日本滞在中に「蒸発」という現象、そして人生をやり直す手助けをする「夜逃げ屋」の存在を知りました。自らの意思で姿を消すという選択の裏にある、深い喪失感と可能性に強く惹かれました。
外国人である私の視点と、長年日本を離れて暮らしてきた共同監督・森あらた氏の視点が重なり合うことで、日本社会の中ではしばしば見えにくい「隠された世界」への扉が開かれました。本作は、日本特有の社会現象を記録するにとどまらず、人間の心理に迫る普遍的な試みでもあります。私たちはあえてセンセーショナルな表現を避け、人々の声に静かに耳を傾ける姿勢で制作に臨みました。
この作品が、社会的規範、家族や職業といった日本社会の構造について、判断や非難を加えることなく、注意深く、そして敬意をもって考えるきっかけとなることを願っています。
森あらた監督
人生の半分を欧州で暮らしてきた私にとって、生まれ育った日本は半ば遠い国でした。しかし本作を通じ、この国の新たな側面、そして日本人としての自分自身を再発見することができました。
「蒸発」は広く知られながらも、日本社会の暗黙のタブーです。制作を通して驚かされたのは、この言葉にまつわる個人的な物語を、一見普通の人々が誰もが一つは抱えているという事実でした。本作では、複雑で周縁的でありながら同時にどこにでも存在する、目に見えないブラックホールのような世界を描いています。そこで私たちが気づいたのは、蒸発者が新たな地で探しているのは、自由や安全だけでなく「自分自身」だということです。
世界各地で上映されてきた本作が、ついに日本で配給されることを光栄に思います。この記録が、皆さんの心に秘めた物語とどこかで重なることを願っています。
「蒸発」
監督:アンドレアス・ハートマン、森あらた
撮影:アンドレアス・ハートマン 編集:カイ・アイアーマン(BFS)
音楽:ヤナ・イルマート、竹原美歌 音響:ニルス・フォーゲル、リヌス・ニックル
制作:Ossa Film 共同制作:Mori Film、バイエルン放送(BR)
プロデューサー:アンドレアス・ハートマン 共同プロデューサー:森あらた
助成:ドイツ連邦政府文化メディア庁(BKM)、Film- und Medienstiftung NRW
配給:アギィ
ドイツ・日本/2024年/カラー/DCP/86分
©2024 OSSA FILM, BR, MORI FILM
公式サイト:https://aggie-films.jp/jht
記事提供元:キネマ旬報WEB
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