「まだM-1は終わらない」 "Mおじ"武智が予言する敗者復活戦と"第3章"の狼煙
イチオシスト

©吉本興業
漫才頂上決戦「M-1グランプリ2025」決勝がいよいよ12月21日(日)に開催される。果たして今年はどんな戦いが繰り広げられるのかと決勝の行方も気になるが、週プレNEWSでは今年も最後の1枠を狙う敗者復活戦に注目する。
決勝当日の午後3時から生中継で放送される敗者復活戦は準決勝で敗退した21組をA、B、Cの3ブロックに分け、会場700人の中からランダムに選ばれた200人の観客が審査し、各ブロックの勝者を決める。その勝ち上がった3組を野田クリスタル(マヂカルラブリー)、ユースケ(ダイアン)、久保田かずのぶ(とろサーモン)、井口浩之(ウエストランド)、渡辺隆(錦鯉)の5人の芸人審査員が審査し、投票の多かった1組が決勝へと進む。
最後の切符を掴むのは果たして誰なのか。昨年に引き続き、M-1への強すぎる愛から"Mおじ"の愛称で知られ、自身も2017年に敗者復活戦で勝ち上がった「スーパーマラドーナ」武智さんに予想してもらった。
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【それでも決勝に行けなかったという事実】まずM-1準決勝について振り返りたいんですが、あの日は会場全体が総じて重たかったですね。聞くところによると男性のお客さんが多かったらしくて。男性は女性に比べて笑いに厳しいというか、一筋縄では笑わないという感じがあるんで、出だしから重くなっていたかなという感じはしました。
ライブってだんだん温まってくるもんですけど、今回の準決勝はお客さんがずっと冷静にネタを見てましたね。なので早い出順だから不利、温まった後の出順が有利というのはなかったと思います。なので運の要素がない。重たい空気を跳ね返して、爆笑を取った9組が決勝にちゃんと上がった印象です。
「カベポスター」なんかはやれることはやったし、もらえる笑いは全部もらったと思うんです。その上で決勝に行けてないということは、さらに決勝に行った9組がすごかった。ただ彼ららしいネタやし本当に面白かったですね。「カベポスター」とは同じ大阪でやってて、一緒に漫才する機会もあったりするんですけど、面白くないネタを見たことがない。普通、どのコンビにもネタに当たり外れがあったりするんですが、「カベポスター」にはそれがない。面白くないネタを見たことがない珍しいコンビですね。
あと今回も関西で活動しているコンビの、大阪での受け入れられ方と東京での受け入れられ方には差があるなと感じました。大阪のNGKの準々決勝でやった時より、関西のコンビはみんな一段笑いの量が落ちてましたね。決勝に進出した「豪快キャプテン」は2023年、2024年と過去2回準決勝に行っているのがでかかったなと思います。2023年の準決勝の時なんてほぼ笑いゼロやったんで。3年がかりでやっと決勝に行ったというイメージです。
逆に「たくろう」は唯一、関西勢の中で東京の準決勝のお客さんをぶち抜いたと思います。えぐいぐらいにウケてましたし「これだけウケているんだから、準決勝で落とせるものなら落としてみろ」という感じでした。僕の中では「真空ジェシカ」、「エヴァース」、そして「たくろう」がウケの量では抜けていたと感じました。
■敗者復活戦通過予想◎豆鉄砲(ワタナベエンターテインメント)

東健太郎(左)、ホセ(右)
敗者復活戦の本命に挙げたいのが「豆鉄砲」です。準決勝で落とす要素がないぐらい出来がよかったですし、ネタもよかった。その豆鉄砲でも決勝に残れないくらい今回レベルが高かったということの証明なのかなという感じもします。
「豆鉄砲」のネタは僕らが普段見落としている当たり前の話を、砕いてゆっくり話すことで、こんなに面白くなるんやっていう驚きがあります。新しいことをやっているんですけれど、なんだか古(いにしえ)からあったようなお笑いをしてくれる。突飛なことを何も言ってないし、もっと言えばボケてもいなんですよね。たとえば「真空ジェシカ」は明らかに大喜利のボケをしてるじゃないですか。でも豆鉄砲は当たり前のことを、言葉の並び替え方や言い方、間とか表情とかで面白くしているんですよね。いや、すごい奴らが出てきたなと思いますね。正直あれで決勝上がらんかという感じですが、ボケのひとりが語り続けるというシステムの点では決勝に進出した「ドンデコルテ」もいましたし、審査員どっちを取るかで悩んだのかもしれないです。
◯20世紀(吉本興業)

木本悠斗(左)しげ(右)
敗者復活戦の対抗は「20世紀」かなと思います。準決勝でもウケてましたし、こちらも決勝行くんちゃうかってほんまに思ってました。今回の敗者復活戦は会場が昨年の新宿住友ビル三角広場から「EX THEATER ROPPONGI」という屋内の劇場に変わるんですが、ここも「20世紀」には追い風かなと思います。しゃべくり漫才はマイクの前から動かないから別にどの会場でもそんなに違いはないですけど、「20世紀」みたいな動く系の漫才コントは絶対劇場の方が有利です。あと「20世紀」はツッコミのしげがパワーでも笑かしてくる。ほかのみんなはネタで笑かしてくるけど、20世紀はネタ+パワーで笑かしてくるのが魅力ですね。
▲ネコニスズ(タイタン)

舘野忠臣(左)ヤマゲン(右)
敗者復活戦の大穴は「ネコニスズ」にします。今年は決勝にどうしても行きたいという気持ちが前面に表れてて、内容もウケてました。決勝進出までかなり惜しかったんじゃないかなと思ってます。「ネコニスズ」は40歳を超えたボケの舘野が「赤ちゃん」という無茶な要求を受け入れてから始まる明らかなキャラクター漫才です。最近はテレビでもよく見ますし、本当に包み隠さず「僕らこういうもんです」と名刺を渡してきている。もし決勝に出た時、審査員の方々がどういう点の付け方をするのか見てみたいですね。もしかしたらめっちゃハマって優勝もあるかもしれへんし、逆に一切認めない人もいるかもしれへんし。どういう判断を下すんだろうって。
△黒帯(吉本興業)

大西進(左)てらうち(右)
最後はダークホースとして「黒帯」も挙げておきます。関西では人気もあって、実力に定評もあるコンビで、全国のお客さんはあんまり知らない人も多いかもしれへんですけど、金属バット寄りと言いますか、ちょっとアングラなネタをやることが多いコンビなんです。ただ意外と器用で、いろいろ合わせられる技術もある。ラストイヤーでの敗者復活戦だけに、これまでで最大のネタを出してくると思います。経験値はありますし、しっかり当ててくると思うんで、本気を出した時の「黒帯」は怖いですね。
☆生姜猫(吉本興業)

川﨑(左)ケージュ(中)カンサイ(右)
あと注目してほしいのがトリオの「生姜猫」ですね。まだ3年目なんですが、大阪の準々決勝ではトップぐらいにウケを取ってました。M-1って未だにトリオが決勝に行ったことないんですけど、「生姜猫」はその可能性がありそうだなと思ってます。いやほんと、若き才能あふれるトリオが出てきたなという感じなので、ぜひ注目してください。
M-1決勝の審査員が先日、発表されて、オードリーの若林くんと「NON STYLE」の石田が外れて、「フットボールアワー」の後藤さんと「ミルクボーイ」の駒場が新しく審査員になりました。昨年のM-1決勝の審査員さんの点数やコメントを見た時に、若林くんとアンタッチャブルの柴田さんの審査が冷静だし俯瞰で見ていて、僕好みだったんですよ。「ほんますげえな」と感心しながら見ていたので、若林くんがいなくなるのは寂しいですね。
ただ過去のMー1で史上最高得点を出している「ミルクボーイ」の駒場は審査員をやる資格は十分にありますし、後藤さんもコンビで2003年優勝、2006年は2位とM-1には大きく貢献しています。しかも後藤さんは最近THE Wの司会、ダブルインパクトの審査員、そして今回のM-1の審査員と賞レースにシフトチェンジしてきてる感じがします。日本で最高峰のお笑い賞レースであるM-1で、後藤さんが漫才のどういうところを見ているのか、何点をつけるのか。審査もすごく楽しみだなと思います。
最後に今年のM-1は第3章の始まりだと思ってます。2001年から2010年は9年連続で決勝に出ていた「笑い飯」さんが優勝を果たしたことで第1章を終わらせました。そして2015年から2024年の第2章は「令和ロマン」が2連覇という偉業を達成して終わらせた。なので今年の大会からはM-1は第3章に入ると思うんです。
今年のM-1って令和ロマンが2連覇したことで、漫画でいう最終回を読み終わったような喪失感がじんわりとある気がしています。なので決勝に出る10組にはここからもう1回新しいM-1が始まったという狼煙(のろし)を思いっきり上げてほしい。まだまだM-1は終わらん、終わらんぞっていうところを見せてほしいです。
●スーパーマラドーナ武智
NSC大阪校22期生2003年12月に田中一彦と「スーパーマラドーナ」を結成。M-1グランプリにはコンビで過去4度決勝に進出。「M-1グランプリ」への熱狂的愛から「Mおじ」と呼ばれる。YouTubeチャンネル「スーパーマラドーナ劇場」(https://www.youtube.com/@super-maradona)ではM-1やTHE SECONDなどの予想も行っている。
『M-1グランプリ2025』
ABCテレビ・テレビ朝日系
■敗者復活戦 2025年12月21日(日)午後3時00分~午後6時30分(15:00~18:30)
■決勝戦 2025年12月21日(日)午後6時30分~午後10時10分(18:30~22:10)
https://www.m-1gp.com/
取材・文・撮影/徳重龍徳
記事提供元:週プレNEWS
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