盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎「通い慣れてる劇場でも、目が見えないと入り口を見つけて入るのが難しいんです」
イチオシスト

盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎さん
『R-1ぐらんぷり』第16代王者にして、盲目のピン芸人・濱田祐太郎。彼のコラムが週刊プレイボーイで好評連載中! その名も「盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の『死角からの一撃』」。
第7回は、濱田さんが普段の劇場出番の日をどのように過ごしているかについて。
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皆さんこんにちは、濱田祐太郎です。今回は、大阪の劇場でネタをすることの多い僕が普段、出番の日をどんなふうに過ごしているのかを紹介します。
まずは目の見えない僕がどうやって劇場まで行っているかですが、これは普通に電車に乗って行ってます。ベテラン芸人さんの中には自家用車で劇場まで行く人もいるみたいですが、僕は運転免許を持っていないので、それはできません。
まあ、頭のいいイノシシがいれば、車の代わりに乗って劇場まで行けるんですけどね。ただ、イノシシはおなかが減ったら勝手にブドウ畑に向かっちゃう可能性があるから、大阪の劇場に行きたいのに岡山とか長野に連れていかれちゃうかもしれませんね。
電車に乗って劇場に向かっている間は、その日のネタのツカミをぼんやり考えていることが多いです。だいたいは「目が見えたら見てみたいもの」+「時事ネタ」という組み合わせから考え始めます。
今年で言えば「コンビそろって丸刈りにしたチョコレートプラネットさんの姿を見てみたい」とか「今市隆二さんがタクシー運転手とトラブってた場面を見たかった」とか「米を買ったことがないって言ってた江藤拓元大臣はどんな表情だったんだろう?」とか。
そして劇場の近くでマネジャーと合流して、劇場に連れていってもらいます。劇場の近くまでは通い慣れているのでひとりでも行けるんですけど、目が見えないと建物の入り口を見つけて入るっていうのがけっこう難しいんですよ。なので、劇場に入るときにはマネジャーに誘導してもらいます。
劇場の入り口前で白目をむいたばばあが「私を縛ってー! 思いっきり縛ってー!」と大声で叫んでいてくれたら、その声を頼りにひとりでも劇場に入れるかもしれませんね。まあ、そんなばばあが入り口付近にいたら、お客さんが劇場に入りづらいでしょうけど。
劇場に入ったら楽屋で衣装のスーツに着替えて出番を待ちます。出番の時間が近づいてきたら、スタッフの方が迎えに来てくれて、楽屋から舞台袖に移動します。
劇場の中を移動するときはスタッフの方がサポートしてくれます。楽屋から舞台袖へ、舞台袖から舞台上のセンターマイクの前へ、ネタが終わったらセンターマイクの前からマットヘルスへ、そして事が終わったらマットヘルスから楽屋へ、と誘導してもらいながら移動します。
あっ、途中でよけいなものが入っちゃってましたね。それは抜いておいてください。どれがよけいなものかは皆さんに任せます。
劇場は通い慣れているので近くまでひとりでも行けるんですけど、例えばプライベートだとひとりで外出することはほとんどありません。
行きたいなあと思うお店があっても、見えないと初めて行く場所は歩いて行くのが難しいんです。なのでそういうときは駅で知り合いと待ち合わせて、一緒にその場所に行きます。
ただ、仲の良い人だとしても、お互いの行きたい場所が一致していないとなかなか頼みづらいんです。気兼ねなく一緒にマットヘルスに行ける知り合いがいたらいいんですけどね。まあ本音を言うと、そういうお店はテンション高く友達と行くよりも、こっそりひとりで行きたいタイプなんですけど。
とまあ、こんな感じで僕は普段の劇場ライフを過ごしてます。......あれ? 途中からマットヘルスライフになってましたね。
●濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう)
1989年生まれ、兵庫県神戸市出身。2013年より芸人として活動を開始し、『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ)で優勝。関西の劇場を中心に舞台に立つほか、テレビやラジオなどでも活躍。公式X【@7LnFxg25Wdnv8K5】
撮影/梅田幸太
記事提供元:週プレNEWS
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