【足つき・取りまわしチェック】ミドルアドベンチャー3車比較! トライアンフ・Tiger Sport 660/ロイヤルエンフィールド・New Himalayan/KTM 390 ADVENTURE Rどれを選ぶ?

イチオシスト

「旅の相棒」として1台のバイクを選ぶとき、アドベンチャータイプを思い浮かべる人は多いだろう。
バイクのアドベンチャーモデルとは、長距離ツーリングの快適性とオフロード走行の走破性をあわせ持つ、いわば“万能型”のバイクカテゴリー。適度な大きさのウインドスクリーンやゆったりとしたライディングポジション、大容量タンクなどを備え、舗装路を長く走る場面でも疲れにくい設計が施されているのが特徴だ。
同時に、ロングストロークのサスペンションや19〜21インチのフロントホイールといった装備を採用することで、未舗装路や凸凹道でも安心して走れるタフさも兼ね備える。多くのモデルがアンダーガードなどの装備を備え、林道や軽いオフロード走行も視野に入れた作りになっている。
さらに、パニアケースやトップケースを搭載しやすい構造のおかげで積載性が高く、旅行やキャンプツーリングにも向くなど、使い勝手の幅が非常に広いのも魅力といえる。
しかし、大排気量エンジンにビッグボディを持つモデルが中心であるため「旅は楽しそうだけど、ちょっと大きいかな?」という印象は拭えない。

そんなアドベンチャータイプを「もっと気軽に楽しめたらいいのに……」と悩むライダーにオススメしたいバイクが、近年注目されているミドルクラス。今回は、より手軽に旅を楽しめる400~660㏄クラスの3台をピックアップ。トライアンフ・Tiger Sport 660、ロイヤルエンフィールド・New Himalayan、KTM 390 ADVENTURE Rを徹底的に乗り込んで、取りまわしや足つき性をチェックし、街乗りから高速道路まで、さまざまなシチュエーションで徹底比較した。

前半パートとなる本記事では足着きや取りまわしなど各部の比較を、近日公開予定の後半パートでは試乗インプレッションをお伝えする。
まずは取りまわしや足つきで気になる3台のスペックをチェック!



| Tiger Sport 660 | New Himalayan | KTM 390 ADVENTURE R | |
| シート高 (mm) | 835 | 825/845(調整可) | 870 |
| 燃料タンク容量(L) | 17.2 | 17 | 14 |
| 車両重量 (kg) | 207 | 195 | 176 |



スペックではわからないバイクの取りまわしの違い

スペックだけ見れば車重が唯一200㎏を超えているTiger Sport 660は、3台中で最大排気量なうえ、3気筒エンジンを搭載しているため数値的には重い印象。ところが押し引きは軽く、意外な取りまわしのよさを見せた。ハンドルに力を入れやすいことも原因のひとつだろう。段差越えや方向転換で重さを感じる場面もあったが、車格やスペックを考慮すると許容範囲か。

対してNew Himalayanは3台のうち2番目に軽い車体だが、押し引きでやや重く感じる。サイドスタンドの傾きが深く、そこから車体を起こすアクションに力が必要という意見も多かった。

KTM 390 ADVENTURE Rは最軽量ということもあって押し引きのしやすさは抜群。ハンドル切れ角が大きく、細身の車体のおかげで左右の切り返しも軽いと高評価。ただ、ハンドル位置が高いため、傾くと車体の重さが一気に増す印象だった。
取りまわしは重心のが高さ/低さでも印象は変わってくるため、カタログスペックの重量がすべてではない。後半の記事で紹介する試乗比較では、この重心位置や車重によってマシンのキャラクターが大きく異なっていた。
詳細は後半パートの試乗編にて紹介。乞うご期待。
ライディングポジション
【Tiger Sport 660】


ハンドルが広めで、程よい距離感がある。上体が立ち気味&視線が高いアドベンチャーバイクらしいポジション。…と、ここまでは3台とも似た傾向だが、Tiger Sport 660はオン寄りのスポーツツアラー的な性格が強く、ステップがやや後退しているなどロードバイクに近い印象を受ける。ロングツーリングやワインディングでも気持ちよく走れるポジションで、スポーティさと快適性を両立している。
【New Himalayan】


ハンドルはアップライトでフラットバーに近い設計。ステップは自然な位置にあるため長距離ツーリングでも疲労が少なそうだ。オンロードスポーツ色が強いTiger Sport 660とオフロードスポーツ色の強いKTM 390 ADVENTURE Rのちょうど中間のようなポジション。3台の中でもっともアドベンチャーマシンらしいという意見もあった。
【KTM 390 ADVENTURE R】


タンクの後端が細くなっているのでスタンディングでポジション移動がしやすい。視点が高く操縦しやすく、3車中もっともオフロードテイストが強い。かといってオンロードバイクに慣れているライダーでも乗りにくさを感じさせない自然なポジションとなっている。ステップはNew Himalayanと同じくラバーを取り外すことで、泥すべりに強いフットペグタイプに変更できる。
スペック上のシート高と、実際の足着きの違いは???
取りまわしと同様、足つき性もシート高を見ただけではわからないことが多い。
シートが高くても、シート幅が狭ければ足を下に下ろしやすく足つきはよくなるからだ。またサスペンションの沈み込みが多い場合、カタログのシート高よりも当然ながら低くなる。
【身長163cm/体重60kg】
Tiger Sport 660:両方のつま先まで接地する。停車中や走り出しは少し気を遣う。
New Himalayan:ヒザがやや外に逃げるポジションだが、真下に足を下ろしやすい。
KTM 390 ADVENTURE R:両足を接地できず不安定。走り出しや信号停車などでややストレスを感じる。

(シート高:835mm)

(シート高:825/845mm)
※撮影時825mm

(シート高:870mm)

(シート高:835mm)

(シート高:825/845mm)
※撮影時825mm

(シート高:870mm)
【身長173cm/体重65kg】
Tiger Sport 660:足裏の半分くらいまで接地。足つきはヒマラヤと同じくらい。
New Himalayan: まっすぐ下ろすと若干ステップに干渉気味。タイガーと同等の足つき性。
KTM 390 ADVENTURE R:母指球が両方つく。見た目より足つきは〇。悪路では注意が必要か。

(シート高:835mm)

(シート高:825/845mm)
※撮影時825mm

(シート高:870mm)

(シート高:835mm)

(シート高:825/845mm)
※撮影時825mm

(シート高:870mm)
足をまっすぐおろせるのはTiger Sport 660とKTM 390 ADVENTURE R。New Himalayanは足がやや開き気味になりステップに干渉しやすいという意見もあった。
タンデムシートの乗り心地






タンデマーの快適性は以下の項目が重要になる。
・ライダーとの目線の高さ→タンデマーの視界がライダーの頭にさえぎられないか
・グラブバーの位置→つかみやすく、体を支えやすい場所にあるか
・シートとステップの間隔→ヒザの曲がりが窮屈にならないか



これらの条件を高い水準でクリアしている車両がTiger Sport 660。タンデムシートの座面が高くステップ位置も自然、つかみやすい形状のグラブバーも備えている。
次点でNew Himalayan。タンデムシートが低いため視界は確保されないが乗り降りはラク。ステップやグラブバーの位置も悪くない。
KTM 390 ADVENTURE Rは車体そのものの高さもあって乗り降りに気を遣う上に、グラブバーがないため体を支えにくい。1人乗りアドベンチャーマシンとしての完成度は高いが、2人乗りを多用するにはグラブバーやキャリアを付けるなどの工夫がほしいところだ。



荷物の積載




【Tiger Sport 660】
ベルトを固定するために、グラブバーとタンデムステップのステーを使うことになる。タンデムシートが前傾しているため荷物も前かがみになってしまうところが難点。すべり止めマットを敷くなどして対策するといいだろう。


【New Himalayan】
グラブバーとシートレールを使ってベルトを固定。タンデムシートがほとんど前傾していないため荷物の安定性が高い。さまざまな形状の荷物の積載に対応できるだろう。


【KTM 390 ADVENTURE R】
ベルトをかけるためのフックポイントがほとんどない。シートを取り外して裏側からベルトを通す必要がある。タンデムシートへの積載は想定していないかのような造りだ。純正オプションでトップケースやサイドバッグキャリアをラインナップしているので、それらを検討した方がよさそうだ。


取りまわし、足つき、荷物の積載ではどれがよい?
インプレッション前半の今回は、取りまわしや足着き、荷物の積載といった日常での使い勝手をチェックした。
オフロード特性を高めたKTM 390 ADVENTURE Rは足つきや積載の面で不利な結果が多かったが、その分ライディングへの期待度は高い。日常の使い勝手だけならTiger Sport 660とNew Himalayanが適しており、ハードなロングツーリングを想定するならNew Himalayanだろう。
アドベンチャーバイクは同排気量のマシンよりもツーリング特性が高いことが特長で、それが扱いやすさにつながっている。しかも今回比較した3車は、ビギナーでも気軽に乗れるミドルクラスとなっているため、アドベンチャー入門にも最適。長く乗れる「旅の相棒」になってくれるハズだ。
それでは近日公開予定の、試乗比較もお楽しみに!!


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
