【プロ野球&MLB】今季生まれた「8人の異次元記録」をプレイバック!!
イチオシスト

ナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦での「6回10奪三振&3本塁打」など新たな伝説を作った大谷
今季も数多くの偉業が生まれたプロ野球&MLB。日米が誇る8人のスターが見せた、記録にも記憶にも残る伝説的プレーを野球評論家のお股ニキ氏が振り返る。
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【大谷翔平、二刀流の到達点! 「10奪三振&3HR」「9打席連続出塁」】もはやオフの恒例行事がごとく、今季もシーズンMVPを獲得した大谷翔平(ドジャース)。数々の偉業を達成した中で、特に異次元だった試合はどれか?
「ブリュワーズとのナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦。投手で6回途中10奪三振、打者で3本塁打は『二刀流の到達点』と言うべき大偉業でした」
こう答えてくれたのは、現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBにも精通する『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏だ。
「9月は防御率0.00。投げるたびに調子を上げていたことに加え、中12日と休養十分で臨んだ試合だったので、何かやってくれる予感はあった。朝から生で見て本当に良かったと思えた試合でした」
もうひとつ、ワールドシリーズ(WS)第3戦、延長18回の死闘で記録した「9打席連続出塁」も忘れられない。
「試合の決着をつけたのは劇的サヨナラ弾の同僚フレディ・フリーマンですが、この日の主役は紛れもなく大谷。4打数4安打2本塁打3打点5四球(うち申告敬遠4)での『9打席連続出塁』はもはや〝野球を破壊した〟レベル。ひとりの選手の存在が野球のルールをゆがめる可能性がある事実に、ただただ感嘆します」
【山本由伸、伝説投球! 「中0日連投」「24年ぶりWS3勝」】
「中0日連投」「WS3勝」で世界中の野球ファンを驚かせた山本
球団初のWS連覇の立役者といえば、シリーズMVP受賞の山本由伸(ドジャース)だ。第2戦で完投勝利。第6戦でも6回1失点で2勝目を挙げると、その翌日にまさかのリリーフ登板。中0日の熱投で胴上げ投手となった。
WS3勝はサイ・ヤング賞5度受賞のランディ・ジョンソン(当時ダイヤモンドバックス)以来24年ぶり。快投の要因として、「夏場以降フォームが変わった」と本誌で何度も指摘してきたのがお股ニキ氏だ。
「ここ数年のすり足気味の投球動作から、日本で無双を誇った『2022年型』の足を上げるフォームに修正。ただ、本人としては元に戻したのではなく、すり足を経て、ゆっくり動いてから素早く動くことでエネルギー伝達効率を最大化するベストバランスを見つけた、ということなのでしょう。
このフォームに変えた後は球速も球威も向上し、相乗効果で変化球の威力もアップ。9月以降の安定した投球につながりました」
WSで連投ができたのは、こうした変更点も含めて投げ方が良い証拠だ、とお股ニキ氏は話を続ける。
「ケガを恐れなければ連投自体はできますが、投げ方が良くないと壊れるか、疲れが抜けずに高出力を出しづらくなるもの。
同業の一流投手たちが山本の連投に驚きを隠さなかったのは、連投なのに出力が落ちなかったから。今の山本は、ランディ・ジョンソンらサイ・ヤング賞に複数回輝いた投手たちの域に達しています」
【両打ちローリー、ジャッジ抑え二冠! 「捕手初の60本塁打」】ナ・リーグMVPが大谷の「満票受賞」だったのに対し、ア・リーグMVP争いは激戦。捕手史上初の60本塁打で打点王との二冠に輝いたカル・ローリー(マリナーズ)に競り勝ち、今季首位打者のアーロン・ジャッジ(ヤンキース)が受賞した。このふたりのデッドヒートもまた異次元の争いだった。
「ジャッジはこの打低時代に打率.331。さらに、10試合欠場した上で53本塁打。打者として純粋に見れば、やはりジャッジがナンバーワンと言えます。
ただ、そんな異次元のジャッジに肉薄したのが今季のローリーのすごさ。実際に試合を見ると、ローリーの飛ばす力は桁違い。スイッチヒッターで、左右どちらも打力に差がないことも特筆すべき点です」
加えて、守備の負担が大きい捕手でありながら、ここまでの打撃成績を残したことが異次元だという。
「今の捕手はフレーミングやブロッキングといった技術が求められるのはもちろん、相手打線の大量のデータも扱わなければならない。
さらに、自チームの投手陣の特徴や球種も覚え、ピッチクロックやピッチコムにも対応しなければならない。本来の打棒に加え、野球をよく知る〝野球脳の高さ〟が打つほうでの好成績につながった、と言えます」
【〝最強〟スキーンズ&スクーバル! サイ・ヤング賞受賞】
新人だった昨季に続き、2年連続で球宴の先発を務めたスキーンズ。防御率1.97でサイ・ヤング賞を受賞した
MLBで「打の覇権」を争うのが大谷とジャッジなら、「投の覇権」を争うのは、今季ナ・リーグのサイ・ヤング賞に輝いたポール・スキーンズ(パイレーツ)と、ア・リーグで2年連続サイ・ヤング賞受賞のタリック・スクーバル(タイガース)だ。
「スクーバルは3年前に利き腕である左肘の手術を受け、そこから自分に合った投げ方のチェンジアップを身につけて飛躍しました。今年5月にメジャー初完封を果たした試合では、最後の94球目に自己最速となる165キロを計測。あの投球はまさに異次元でした」
一方のスキーンズは、お股ニキ氏が新人時代からその実力を高く評価してきた投手だ。
「この2年で新人王、2年連続オールスター先発、そして、チームは最下位にもかかわらずサイ・ヤング賞受賞と、歩みそのものが異次元です」
ルーキーから2年連続で防御率1点台。同じリーグの山本がサイ・ヤング賞を狙う上では最大のライバルとなる。
「順当にいけば、来季サイ・ヤング賞はスキーンズと山本の一騎打ち。そこに大谷も割って入るか。佐々木朗希(ドジャース)にも頑張ってほしいし、高次元の争いが期待できます」
【佐藤輝明、覚醒! 「甲子園で40本塁打102打点」で二冠】
左打者に不利な浜風が吹く甲子園を本拠地として戦いながら40本塁打&102打点を記録した佐藤輝
日本球界に目を移せば、阪神の佐藤輝明が40本塁打102打点で二冠王に輝いた。
「歴史的な投高打低時代に、左打者に不利な浜風が吹く甲子園を本拠地として戦いながらの40発は見事! 打球が飛ばない統一球時代の2011年に48本塁打を放った中村剛也(西武)に匹敵する傑出度です。最終戦で40発100打点に到達しましたが、まさにファンの期待に応えるスターの証明と言えます」
そんな佐藤にシーズン途中でインタビューし、「40本塁打を期待したい」とエールを送っていたのがお股ニキ氏だ。
「今季は軽く振っても飛ぶ『8割の力感』を身につけ、反対方向にも飛ばせるようになりました。また、『かかと重心』の打ち方は日本シリーズで山川穂高(ソフトバンク)も参考にしたほど。今季は守備も改善されましたし、そもそもアスリート能力も高い。いよいよ、MLB挑戦も見えてきました」
【石井大智、前人未到の金字塔! 「50試合連続無失点」】
今季は53試合登板で失点1、防御率0.17と無双し、50試合連続無失点の世界新記録を成し遂げた石井
阪神優勝を支えたもうひとりの「異次元」といえば、リリーバーの石井大智だ。4月4日に甲斐拓也(巨人)にタイムリーを許して以降、1点も失うことはなく、53試合登板で防御率0.17。藤川球児監督が現役時代に達成した38試合連続無失点のリーグ記録を超え、50試合連続無失点の世界新記録を成し遂げた。
「防御率0.17までいくと、1試合抑えても数字がほぼ変わらない。むしろ、そこにすごみを感じました。79試合登板で防御率0.41の無双ぶりを見せた2011年の浅尾拓也(中日)以上の投球内容でした」
ただ、奪三振数は昨季に比べて大きく減少(58→42)。石井本人も「去年のほうが状態はいい」とも語っていた。
「頭を使った投球もできるのが石井の強み。打者がスイングしにくい所に狙って投げられるし、球に強度があるから当たっても打球が飛ばない。今季はフォークの質が良くなり、狙って併殺打に仕留められる変化球もあるから、安定した投球ができます。
ただ、藤川の全盛期に比べるとまだ及ばない。石井本人も超えたとは思っていないでしょう。来季は球質でも『藤川超え』を目指してほしいです」
【松山晋也、〝圧投〟! 「セ記録46セーブ」「セ新27回連続奪三振」】
今季から抑えを任された松山。シーズン途中に右肘の故障で約1ヵ月離脱するも最多セーブのタイトルを獲得した
リリーバーではもうひとり、育成ドラフト出身者で史上初めて最多セーブのタイトルを獲得した松山晋也(中日)に注目。ライデル・マルティネス(巨人)と並び、今季46セーブを記録したが、これは岩瀬仁紀(中日、2005年)、藤川(阪神、2007年)に並ぶセ・リーグ記録だ。
「シーズン途中、右肘の故障で約1ヵ月離脱したにもかかわらず、最多セーブを記録したのは見事。しかも、優勝争いをしたチームで投げていた岩瀬、藤川とは異なり、シーズン63勝で4位に沈んだ球団での記録達成は意義深い。離脱がなければ50セーブは超えていたでしょう」
今季はさらに、「27イニング連続奪三振」というセ・リーグ新記録も達成した。
「球の強度、フォークの威力は素晴らしいものがありました。まだ力任せの部分があるのは伸びしろ。来年のWBCでは勝ちパターンの一角を任される可能性も高そうです」
文/オグマナオト 写真/時事通信社
記事提供元:週プレNEWS
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